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喫茶店の入り方

故郷には喫茶店なんかありませんでした。あったかもしれませんが、大学入学を機に京都へ引っ越してくるまで、地元で喫茶店に行ったことは一度もありません。中学生の頃、学校を休んで病院へ行った帰りに長浜で母親とティラミスを食べたのは覚えていますが、ひょっとしたらあれが喫茶店だったかもしれません。なんにせよ、オレは京都に来るまで、喫茶店への入店の仕方を知りませんでした。

ある程度大人になるまで知らないことって、そのことが恥ずかしいから知らないままでいいやって開き直ってしまうことがあるんです。オレはそうやってひたすら経験を拒み続けたような気がします。そうやってして「そんなものに興味は持たないオレ」でい続けたのですが、会社員として働くようになり、いかにオレの常識が非常識であるかを知り、恥をしのんで様々な初体験を終えたおかげで、ギリギリなんとか、仕事ができているように思います。

それでも、いくつも恋して順序も覚えてキスも上手くなりましたが、初めてオシャレな喫茶店に入る時は内心ドキドキ震えています。先日、オレがドキドキを押し殺し平静を装いながら入ったのが河原町七条上ルにある開化堂カフェでした。近くにある茶筒の老舗「開化堂」が手がけるカフェで、レトロな外観だけは知っていましたが、入ってみるとこちらがそんな一大決心を経て入店したとは思いもよらないスタイリッシュな店員さんがおり、前の客の応対をしていました。そのやりとりを見ながら「そういう感じで注文するんやな」と一つずつ確認し、自分の番になったらオレはなんでも知ってる男の態でコーヒーと和菓子のセットを注文しました。汗をかいていたと思います。ドキドキしていたと思います。

窓際の席に座ると窓の外に河原町通りが見えます。これまで何度もオレは、いまオレがいる店内をあの河原町通りから眺めていました。お店の中はどんなんなんやろ?しかしオレみたいなもんがあそこに入るなんてことは・・・何かと言い訳を見つけては経験を拒んでいたあの頃の悪い癖をオレは少しずつ克服しているような気がします。知らないことには伝えられません。知ったかぶりは恥ずかしいことです。オレはこうやってしてアウトプットをすることが好きです。アウトプットするためにはインプットしないといけません。そこを端折ると途端にアウトプットは薄くなりますし、それは恥ずかしいことでもあります。

中に入ってみたら、他のお客さんは割と京都のガイドブックを持っていたり、確実に観光の人やなっていう人が多かったので、そのことにオレは少しホッとしました。この人たちも知らない土地で少なからずドキドキしながら入店してきたのかもしれないなと思うと可愛らしく見えました。オレと一緒に少しずつ、京都を経験していこうね、面白い町ですからね。

和菓子は梅園の「あんがさね」、愛おしい喫茶時間でした。次に入る時も震えるのかしら。

#令和3年12月15日
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