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最近家に来ないあの人

 サンタクロースがいるとかいないとか、別にどっちでもいいとか思ってるわけではないんですけどそういう話題に対してはどっちでもええやんと思ってしまいます。わざわざ話題にしないでほしい。いると思ってる人にわざわざ吹っかける必要はないと思うし、いないと思ってる人に対していると主張し続ける人になんにもメリットが無いように思う。

 それよりも私はサンタクロースみたいな存在がサンタクロースしか存在しないことのほうが問題だと思っておりまして長男が就学するまでには不定期で「何かしら土産物を持ってくるおっさん」を作り上げ、そいつのことを「ミスターX」と名付けておりました。いくつか写真を残しているはずと思っていたら一枚しか残していなかったのですが、例えばこんな手紙を残して土産物を枕元に置いておいたのです。

「元気にしてるかな?おかあちゃんにわがままばかりいってたらだめだよ。いつもいい子にしていると信じてこのプリンをあげよう。コーヒーはおかあちゃんにあげるんだよ。やさしさはよわさじゃないからね。ミスターエックス」


 職場でお土産をいただいたら、こうやってミスターXとして私がそれを長男にプレゼントしていたわけなんですが、こんな風にしてサンタクロース以外にも似たようなことするおっさんがいる方が自然じゃないですかね。ま、お正月に年一回だけ会ってお年玉をくれる親戚のおっちゃんなんかは似たような存在でありますけれども。

 サンタクロースがいるかいないかなんていう話よりもなろうと思えばオレたちいつでも我が子のサンタクロースにくらいはなれるやろうという話でして。

 とかなんとか言いつつやがて次男が生まれその次男も今は小学1年生。長男は5年生です。長男がいくつくらいの頃だったかに、もうこのミスターX遊びは私のほうで止めてしまったわけでして偉そうなこと言うわりに根気の無い、そういうところが私のよくないところで誰からも信頼されない情けないところなのだと思うわけなんですが。

 少し前に妻が長男と話していたところ、何がきっかけがわかりませんが唐突に長男が「そういえばさあ、あの人、最近家に来うへんな」と言ってくるので「あの人って誰?あせあん?」と聞き返す。「あせあん」というのは私の大学時代からの友人でめちゃくちゃよく言えば『JIN〜仁〜』の南方仁みたいなおっさんで確かにあせあんにも昔からよく遊んでもらってるんですけど長男が言うには「違う違う、あせあんはオレも知ってるよ。そうじゃなくて、たまにいろいろお土産持ってきてくれる人おったやん?」と言ってきたのは、なんとミスターXその人のことなのでありました。ミスターXは姿形を見せたことすら無いにも拘らず、ちゃんと「たまにいろいろお土産持ってきてくれる人」として長男の記憶に刻まれていたのです。

 サンタクロース以外にも、そういう存在がいてもいいですよね。


#令和4年2月11日  #コラム #エッセイ #日記
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