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エッセイ『嫌いは強い』

 「嫌い」という感情は何も生み出しません。「あの人のこと、嫌いだな」と思ってしまったが最後、その人の言動からは何も学ぼうとする気がなくなってしまいます。「嫌い」は強いんです。十人集まる飲み会で九人大好きでも一人嫌いな人がいたら、その飲み会に行く気はなくなります。一人めちゃくちゃ好きな人がいても九人のことが嫌いならやっぱり行かないと思います。「好き」より「嫌い」のほうが強いと思います。
 好きに理由はいりませんが、嫌いはあまりよい感情ではないため、「なんとなく嫌い」であることが許せず、嫌いである理由を探します。探すことにより、細かいところまで次から次へと嫌いになっていきます。これがエスカレートすると「チッ!あの野郎、時間通りに来やがって」とか、一見長所であることさえも非難しがちになります。負の感情が一人歩きして、精神衛生上よくありません。
 
 しかし、そんな「嫌い」という感情が時にとてつもないエネルギーを生み出すことがあります。私は以前から、なんとなく「この人のことが嫌いだ」と思っている著名人がいて、ただ、その著名人のことを嫌いな人は周りに誰一人としておらず、むしろ、その著名人のことを「才能がある素晴らしいアーティストだ」と褒め讃える人ばかりだから、「なんだよ才能を鼻にかけやがって」「絶対あいつ、人によって態度変える嫌な奴やと思うわ」などと私が思っていることは口が裂けても言えない環境にあったところ、今日、何がきっかけか忘れましたが、ある人と話をしていたところ、「実は私、(その著名人)のことがすごく苦手なんです・・」と告白してくださり、「めっちゃくちゃわかります!そうですよね!ずっとそう思ってたけど周りは好きな人ばっかりやから言えなかったんです!」と言い合いお互いめちゃくちゃスッキリしました。
 時として「嫌い」という感情が生み出す連帯もあるのです。であるから厄介なのですが。

蠱惑暇(こわくいとま)

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