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霊能者の話【稲川淳二オマージュ】

このお話を聞かせてくれたのは霊能力者の方です。今は亡くなられていますが、その昔はマスコミにも時折顔を出し、その世界でも有名でした。心霊が今ほど騒がれる時代ではなかった頃の話です。

彼はもともと体が丈夫な方ではなく、ある時、どうしても体調が悪くて病院に行ったところ「すぐに入院しなさい」と言われました。入院してからも体調は思わしくなく、いよいよ今日か明日かという状態になり、昏睡状態が始まりました。奥さんは驚き、部屋に付きっきりで看病をしていましたが、見舞い客はほとんど来ませんでした。

夜、疲れ果てた奥さんが隣で横になっていると、ふと「ンー……ウーン……ウーン……」と旦那さんが真っ青な顔で呻きながら痙攣を起こし始めました。奥さんは旦那さんがこの世を離れる時が来たのかと不安に駆られました。汗を拭いてあげながら《どうか助けてください》と祈り続け、看護婦さんを呼びました。

しかし、看護婦さんが来る気配はなく、奥さんは病室のドアを見ました。ドアの上の天窓から色白で面長の女性がじっとこちらを見ていました。看護婦さんではないようでしたが、誰かが見ているのは確かでした。

奥さんは旦那さんの汗を拭きながら《助かってください、どうかお願いします》と祈り続けました。再び天窓を見ると、その女性は心配そうに見つめていました。奥さんはその瞬間、不思議と安心感を覚えました。

すると、旦那さんの呻き声が徐々に治まり始めたのです。奥さんがもう一度窓を見ると、その女性は消えていました。彼女は一体誰だったのか?

奥さんは慌ててドアを開けましたが、廊下には誰もいませんでした。やがて看護婦さんが駆けつけましたが、その瞬間、旦那さんの顔色がどんどん良くなり、呻き声も止みました。結果的に旦那さんは退院し、普通の生活に戻ることができました。

奥さんは喜びましたが、天窓から覗いていた女性のことが頭から離れませんでした。旦那さんにそのことを話すと、彼は驚きつつもこう言いました。「それはね、私の先妻だよ。心配して様子を見に来てくれたんだね」と。

今の奥さんは後妻で、旦那さんは以前に先妻を亡くしていたのです。「私は幸せ者だよ。今の家内にも幸せにしてもらっているし、亡き家内にも救われたんだから」と旦那さんは話しました。
そんなことが本当にあるんですね。


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今後とご贔屓のほどお願い申し上げます。