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赤い霧の残像【怪談・怖い話】

私が12歳になる前、ユカリおばさんから聞いた驚くべき体験談がある。

ユカリおばさんが若かった頃、親友のミホコさんが50歳前後の若さで亡くなった。二人は同じ町内に住む仲良しで、入院中のミホコさんを見舞うのがユカリおばさんの日課だった。

しかし、ミホコさんは最期を迎えてしまう。通夜の帰り道、眠りについたユカリおばさんは金縛りに遭った。強制的に視線が動かされ、喪服が掛けられた衣紋掛けを見る羽目になる。そして、衣紋掛けの上にミホコさんの顔のない首がうつむき加減に乗っていた。青白い無表情の首は、まるでユカリおばさんの喪服を着ているかのようだった。

ユカリおばさんは恐怖に慄きながらも、「帰るところがわからなくなったのかい?」と声をかけた。すると首は小さくコクリと頷き、すうっと消えた。その後、亡霊は現れなかったという。

私はこの恐ろしい体験談に、魔法使いの血が騒ぐのを感じた。亡霊の正体、妖しい謎の多さ、そして何より、対峙する勇気に心を奪われた。人生最大の謎に魅入られた子供の心は、神秘的な世界に飛び込んでいった。

ユカリおばさんの別荘で一人遊びをしていた私は、偶然古びた日記を見つけた。

そこには、ユカリおばさんの友人ミホコさんの死に至る過程が綴られていた。

ミホコさんは病魔に冒され、余命わずかとの宣告を受けていた。だが、最期の望みとして骨壺を町内に建てたいと願った。しかし、宗教上の理由から、町内会はこれを拒否。憤ったミホコさんは、「死んでも骨を眩ばせてやる」と口走ったという。

そして、亡くなった後も実際に町内を彷徨う亡霊となり、ユカリおばさんに出現したのだ。日記にはさらに衝撃の事実が書かれていた。

ミホコさんの亡骸から採取された組織を調べたところ、未知のウイルスの存在が確認された。このウイルスは感染者に幻覚や精神異常をもたらし、宗教的狂信に陥らせる恐ろしい病原体だったのだ。

私は、このウイルスの影響を疑わざるを得なかった。ミホコさんの狂気は単なる宗教的願望ではなく、このウイルスによってもたらされた異常な幻想だったのかもしれない。深さを増す怪奇現象の謎に魅了された私の血は、探求の手を止められなくなっていた。


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