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コンクリートの向こう:誰かが見ていた【怪談・怖い話】

俺が小学生だった頃の話だ。三階の廊下の奥に、どこにも通じていないドアがあった。そこを開けると外に出られるが、行き先は何もない空間。よく小学一年生たちが鬼ごっこに夢中になり、このドアを開けてしまうことがあった。結果、三階から落ちて即死する事故が頻発したんだ。俺の記憶では、一年間で十人近くの生徒がこの事故で亡くなったと思う。さすがに学校側もこれを重く見て、対策を講じることになった。

その結果、問題のドアはコンクリートで埋められた。外から見ると、三階のドアから地面まで血の跡が残り、まるで赤い滝のように見える。近所でもこの問題は大きく取り沙汰されていた。どれだけ拭いても、血の跡は染みついて消えなかったんだ。その後、落ちた生徒たちの供養のために、事故現場に石碑が建てられ、鎮魂式が行われることになった。

その鎮魂式は、全校生徒が参加して行われた。俺はその時、特に異変を感じなかったが、式が終わった後に数人の生徒が話していたんだ。「三階のドアが少し開いて、誰かがこっちを見て笑っていた」と。コンクリートで埋められたはずのドアが、なぜか少し開いていたという。あの時見た笑っている誰かは、いったい何だったのか。

その話を聞いて以来、俺はそのドアに近づくことを避けるようになった。だが、不思議なことに、その後もドアが開くという噂は絶えなかった。まるで何かがそこにいるかのように、ドアは時折、僅かに動くことがあったという。

結局、俺たちはそのドアの向こうに何があるのか、真実を知ることはできなかった。ただ、あの笑う影が、事故で亡くなった生徒たちの怨念なのか、それとも別の何かなのか、それは今もわからないままだ。

学校を卒業してからも、三階のドアのことは忘れられない。何かに取り憑かれたように、その記憶が頭から離れないのだ。あの笑う影が見ていたのは、俺たち生徒だけではなく、もしかしたら学校そのものを見守っていたのかもしれない。

その後も、学校では奇妙な現象が続いたという話を聞いた。例えば、誰もいないはずの廊下で足音が聞こえたり、深夜に教室の明かりが点いたり消えたりすることがあったらしい。多くの生徒や教師が、その場所を避けるようになったのも無理はない。

ある日、校舎の改築工事が行われることになった。三階のドアも完全に取り壊され、新しい壁に置き換えられることが決まった。しかし、工事が進むにつれて、作業員たちが奇妙な声を聞いたり、不意に工具が壊れるという不可解な出来事が続いた。

最終的に、三階のドアが完全に姿を消し、跡形もなくなった。しかし、俺たちの心には、そのドアにまつわる恐怖の記憶が深く刻まれている。今でも、その学校に通う生徒たちは、夜遅くに廊下を歩くのを恐れているという話だ。

もしあなたがその学校に足を踏み入れることがあれば、ぜひ三階の廊下を訪れてみてほしい。そこには、今でも何かが存在しているのかもしれない。気をつけて、そしてドアの向こうに何があるのか、決して見ないように…。


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