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■若い町内会長【怪談・怖い話】

友人から聞いたヒトコワな話

十年前、立花さんは新婚生活をスタートさせるため、地方都市に念願のマイホームを建てた。夫の通勤時間は長くなったが、広い庭と静かな環境を求めての選択だった。新しい家は閑静な住宅街にあり、引っ越しの挨拶回りでは高齢者が多いことに気付いたが、隣の町内会長は若く親切な男性で、安心して新生活を始めることができた。

しかし、もう一方の隣人であるおばあちゃんが問題を引き起こした。彼女は自宅の塀に収まりきらない植木鉢を立花さんの家の塀にまで置き始め、猫がそれを倒すトラブルが頻発した。立花さんが注意しても、おばあちゃんは取り合わなかったが、町内会長が解決してくれたことで問題は一時的に収まった。

だが、今度は家の前に犬の糞が放置されるようになった。毎朝のこの不快な事態に悩まされたが、再び町内会長が助けに来てくれ、問題は解決された。その頃から、町内会長が頻繁に立花さんの家を訪れるようになった。洗濯物を干している時や買い物の帰りなど、いつも突然現れて話しかけてきた。最初は親切だと思っていたが、次第にその頻度と親しさに違和感を覚えるようになった。

ある日、町内会長は息子を二時間預かって欲しいと頼んできた。彼の助けに感謝していた立花さんは渋々了承した。町内会長の息子は15歳で、障害を抱えており、一人では待てない様子だった。彼を居間に通し、テレビをつけてあげたが、息子は口を半開きにしたまま虚空を見つめていた。彼の長身と無表情が、居心地の悪さを感じさせた。

その後、町内会長が戻り、息子を引き取りに来たが、「お子さんはまだなんですよね?女の子だったらいいですね。将来うちの息子と……なんて、ハハハハ」と冗談を言われ、薄ら寒さを覚えた。それでも、トラブルを解決してもらった手前、断ることもできずにいた。

その後、再び町内会長が息子を預かってくれと頼んできた。内心うんざりしていたが、1時間だけということで渋々OKした。家事をしていると、彼の姿が見えなくなっており、探すと脱衣場で立花さんの下着を持っているのを発見した。叫びそうになる気持ちを抑え、「何してるのっ!」と怒鳴りつけると、彼は「あばばば、あばアバズレ!」と信じられない言葉を吐いた。

動転しながらも彼を居間に戻し、町内会長に連絡すると、すぐに駆けつけてきたが、「な~んだ、そんな事ですか。だってアバズレでしょ?知ってますよ、私を欲しがってるのを」と言い放ち、立花さんの首と胸を力強く握りしめ、「俺の街のものはみんな俺のものだ。守ってやるからおとなしくしろ」と囁いた。その恐怖で立花さんはガクガクと震え、その場に座り込んでしまった。

夫に電話すると、すぐに帰宅し、警察を呼んだ。しかし、警察が来て町内会長の家に行くと、彼は「息子が暴れて止めようとしたら奥さんにぶつかっただけで、傷つける意図はなかった」と説明した。立花さんは愕然とし、夫も警察に伝えたが、警察は「奥さんには外傷がないし、相手方も反省しているので、また後日話を伺う」という形で帰ってしまった。夫は「明日会社の弁護士に相談する」と言ってくれ、しばらく家に引きこもることにした。

翌日、インターフォンが鳴り、恐怖で固まってしまったが、無視することにした。しかし、何度も鳴らされ、静まり返った室内に「バキャー、バリバリ」という音が響き、ガラス戸が割れ、町内会長と息子が居間に入ってきた。彼は息子の首に手綱のようなものを巻き、無理やり立たせていた。「やっぱりいるじゃないですか」と言い、「昨日はすみませんでした。やっぱりあの事で怒っていたんですよね?」と話し始めた。息子の首を締め上げる度に、彼の口から苦しそうな声が漏れていた。気が狂いそうになり、その場で固まった。

彼は「今日はそのお礼をしようと思って」と言い、手綱をさらに高く持ち上げた。息子は苦しそうに痙攣し、気を失った。「やっぱり子供の前だとあれですしね。女の子がいいですよね?」と彼が言うと、「ぎゃああああああああ」と叫んだ。彼の言葉を最後に顔面に衝撃が走り、気を失った。

目が覚めると、立花さんは病院のベッドの上にいた。夫は涙を流しながら「ごめんなー」と謝っていた。後日、夫から説明を受けた。あの日、殴られた直後に警察が来て、町内会長は暴行の現行犯で捕まったそうだ。通報してくれたのは隣のおばあちゃんだった。

後でわかったことだが、植木鉢や糞はおばあちゃんの仕業ではなく、彼がやっていたものであった。おばあちゃんは彼ともめた際に犬を殺されたことがあり(証拠はなく事件にもならなかったが、おばあちゃんには確信があった)、恐ろしくて何も言えなかったのだそうだ。立花さんたちが彼とよく話していたため、関わりたくなかったのであんな態度だったようだ。

その後、彼の家に捜査が入り、大量の動物の骨や他の事件に関与する証拠が見つかり、彼は懲役8年の刑を受けた。彼は立花さんのことを亡くなった前妻の生まれ変わりと証言しており、立花さんは事件の後遺症でPTSDになった。買ったばかりの家はすぐに売り払い、実家の近くへ引っ越した。夫も仕事を辞め、地元で再就職してくれた。新たな生活の中で、立花さんは少しずつ心の傷を癒やしていった。


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