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不成仏僧侶の怨念【怪談・怖い話】

長野県に住む村山さんから聞いた話。

村山さんがまだ小学校四年生の頃、霊体験が立て続けに起こったという。
その始まりは、叔父さんの突然の死だった。

村山さんの叔父さんは林業を営んでいたが、ある日、仲間が切った大木が顔に直撃して命を落とした。
奇妙なことに、村山さんはその前日に、その光景を夢で見ていた。
大騒ぎする仲間たち、叔父さんの血だらけの顔が膨れ上がる様子、そして救急車に運ばれる光景。まるで空中から全てを見下ろすような視点で、村山さんはその場にいたのだ。

目覚めたとき、恐怖と混乱の中で泣き叫び、これが単なる夢であれば良いと願った。しかし、それは現実となり、叔父さんは本当に亡くなってしまった。
それからというもの、村山さんの周りでは不思議な出来事が次々と起こり始めた。首吊り自殺の予知夢を見た場所で遺体が発見されたり、夜中に冷たい手が額に触れたりと、異常な体験が続いた。しかし、その中でも最も恐ろしい出来事は、腹に外傷を負わされた夜のことだった。

その夜、村山さんが布団で寝ていると、「ドーン!……シャリーン」という音と共に、腹に激痛が走り目を覚ました。
上半身を起こして辺りを見回すと、頭上に草履を履いた足が見え、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
その足が顔を踏みつけたかと思うと、「ドーン」と杖で腹を突かれた。杖のてっぺんには金色の輪がいくつかついていて、「シャリーン」と音を立てた。
激痛に耐えきれず体を動かせない村山さんは、視線を足下に向けた。
そこには笠を被り、黒い袈裟をまとった僧侶がいた。

さらに驚いたことに、足下には見たこともない田園風景が広がっていた。
布団に寝たままの足下には僧侶の列が続き、その先には新幹線の高架か高速道路が見えた。一方で頭上には村山さんの部屋が広がっている。
この異常な光景に恐怖を感じながらも、何よりも痛みに耐えられず泣き叫んだ。

その声を最後に、記憶は途切れた。

朝目覚めると、腹に激痛が走り、パジャマをまくって見るとピンポン玉くらいのアザがいくつもできていた。
激しい目眩と腹の痛みで階下に這って行き、親に見せたところ、母親の声はまるでテープを早送りしたように全く聞き取れなかった。

その日は学校を休み、病院に連れて行かれたが、検査の結果、肋骨にヒビが入っていた。医師や母親の声も早回しで聞こえ、何も理解できなかった村山さんはただ黙っていたが、母親は風呂で打ったと説明していた。

その奇妙な現象は夜には収まったものの、心には深い恐怖とストレスが残り、一人で眠ることができなくなった。

しかし、それを最後に村山さんの不思議な体験は二度と起こらなかったという。


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