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怨霊が棲むマンション【稲川淳二オマージュ】

霊が住み着くところって色々ありますよね。
マンションだとかアパートだとか病院だとか会館だとか劇場だとか。まぁ民家はもちろんなんですが、特に廃屋なんかは多いですよね。どこにでも居るわけです。あるんですよね、自分では気づかないんですが。すぐそばにいる。

例えば私のいとこ。彼女はファッションデザイナーで、自分のマンションを持っているんですが、帰るのは月に一二度。というのも親友でヨーロッパに行っている人に留守番を頼まれており、そっちにばかり入り浸っているからです。そっちのほうが居心地がいいもんだから。

そんなある時、たまには自分のマンションに帰ることにしました。夜寝たんですが、なんだか落ち着かない。
「自分のマンションなのになんだか落ち着かないなぁ」と思っていました。朝方なんだかザワザワしている。
「なんだろう?隣がうるさいわけです。でも隣にどんな人間が住んでいるのか分からない。」そう思っていると、チャイムが鳴りました。
「はい」と出ると警察官がいました。

「あの、夜分申し訳ないんですが、お隣さんが…」と言うもんだから「お隣さんですか、私実はほとんど家に帰っていなくて会ったこともないんですよ」と言うと、警察官が「あぁそうですか」と返して、「何かあったんですか」と聞くと、「いやー実はですね、一人暮らしの女性がいましてね、その人が実は死体で見つかったんですよ。自殺のようなんですがね」というので驚きました。

自分の部屋の隣、全く会ったことはないんですが、そこの住人が自殺をしていたんです。嫌だなぁと思いました。そしてまた頼まれている友だちのマンションで留守番をしているんです。そっちのほうが快適だから。

それからひと月ほど経ち、また自分のマンションに帰ってきました。夜寝ていると、やはりなんだか落ち着かない。昼頃になり、また外が騒がしくなってきた。「なんだろう?」と思っていたら、またチャイムが鳴りました。

「はい」と出ると、また警察官が立っていました。
「すみません隣の部屋なんですが、実はまた女性の自殺がありましてね」「あーあー、あの事ですね」と言うと警察官が「え?」。「この前の自殺のことですよね?」といとこが言うと、「いえ、そのことじゃないんです」と。

聞いてみると、なんと初めの自殺の後にまた別の女性が入居し、その人も自殺してしまったと言うんです。流石にいとこは気持ち悪くなりました。
「お会いしたことはないので分からないです」と言うと、警察官は帰っていきました。変なところだなと思いました。そこは分譲マンションなのだが、何故か隣の部屋だけ賃貸となっている。

それでまた友だちのマンションに行きました。そしてまた一ヶ月たった。再び自分のマンションに帰りました。夜寝ていたのですが、なんだか妙に気分が悪い。色々考えるせいもあるんだろうが、気持ちがなんだか落ち着かず、眠れないなと思っていました。そうこうしているうちに夜があけてしまった。

「あぁ眠れなかった…なんだか落ち着かないな」と思っていたら、急に隣でガタガタと音がし始めました。
「え、なんだろう?」と思っていると、パトカーの音が聞こえてきて、人が集まってくる音が聞こえました。「また何かあったのかな」と思っていると、再びチャイムが鳴りました。

すると警察官が立っていて、
「隣の部屋で自殺があって…」
「それひと月前の…?」
「いや、昨日亡くなっているんです。隣の方とは…?」
「実は一度も…」と言うと、また警察官は帰っていきました。で
もいとこが気になって聞きに行くと、なんと隣の部屋、三ヶ月の間に縁もゆかりもない女性が三人自殺している。若い人ばかり。

こうなったらもう偶然ではなく、絶対に何かありますよね。
もちろんこんなこと、不動産屋さんは教えてくれないでしょう。だが絶対にそこには何かがある。私のいとこはそこを売ってしまいました。でもそのマンション、まだあるんです。霊が住み着いているんですよ、そこに何かの霊が。怨霊が居るんです。

そして私の先輩になるんですが、ある日、私に新聞を送ってくれました。明治時代の新聞なんですが、そこにいる作家が幽霊について書いている。
あぁそれで送ってくれたんだと思いました。面白い内容だった。

お兄さんが事業に失敗し、急遽引越しをすることとなった。だがそのお兄さんの奥さんが産気づいて実家に帰っており、今日明日には生まれるだろうという状態だった。そこでその弟が引越の手伝いをすることとなりました。
引越しの手伝いをして、言い方は悪いがそこは色街というような場所だった。そういう風情がある。

お兄さんたちはしばらくそこに住むこととなり、二人は近くにある食堂にご飯を食べに行きました。そこで電話を借りて、奥さんに電話をかけると、もうそろそろだということだったんで、お兄さんのほうが「おいお前悪いんだけど留守番してくれないか。俺病院の方に行くわ」と言い、病院に行ってしまった。

で、新聞に記事を書いた作家はそこに泊まることになりました。でも引越しの途中だからまだ部屋に色々なものが散らかっている。その中で寝ていました。部屋の中は静まり返っている。

すると夜中、ギィギィ…ギィギィ……階段の軋む音がして、それが二階から降りてくる。流石にゾクッとして、人が誰もいない家なのに、誰かが降りてくる。それが廊下をギィギィ…ギィギィ……とやってきて、自分の部屋の前で止まった。そしてふすまがゆっくり開いた。

残念ながら記事はここで切れていた。昔から幽霊屋敷ってのはあったようですよね……

(了)


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今後とご贔屓のほどお願い申し上げます。