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iliocapsularisとは何か

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は

iliocapsularis

について話していきたいと思います。

これは股関節の勉強をしている人であれば

必ずきいたことのある筋肉だと思います。

最近注目されてきてはいますが

いったいどのような筋肉なのでしょうか。

私なりに解説させていただきたいと思いますので

よろしくお願いします。

それでは始めます。


iliocapslarisとは

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Iliocapslarisの起始停止

Iliocapsularisとは

大腿直筋の深層、腸骨筋の深層外側に位置する筋です。

一部は下前腸骨棘の下縁から起始するが

大部分は前内側の関節包・靭帯に起始し、

小転子のやや遠位に停止します1)。

股関節前面を外上方から内下方に走行する筋であり、

筋長は12~13㎝、横幅は1.8~2.5㎝、筋厚は0.4~1㎝

とされています。

股関節の前面内側部で腸骨大腿靭帯の内側部の走行と一致するように

関節包・靭帯と連結しています。

1843年にフランス語の解剖学テキストに

「ilio-capsulo-trochanteric muscle」

と記載が確認されていますが

今でも掲載されていない文献が多く、

正式な日本語名はいまだにありません。


推察されている機能

この筋は

①股関節前面の関節包・靭帯を緊張させ、股関節の安定化に寄与する。
②関節包や靭帯を前方に牽引することにより寛骨臼と大腿骨間での滑膜の挟みこむ(インピンジメント)を防ぐ作用がある

と推測されています。

筋電図による調査では

股関節屈曲(90°屈曲位)・外転・外旋方向の運動で

筋活動が増加することを報告しています2)。

しかし機能はいまだに明らかになっていないのが現状です。

Babstら3)は、

骨性の被覆が小さい群と大きい群のFAI患者に分けて

Iliocapsularisのサイズを両群で比較しました。

すると骨性の被覆が小さい群のほうが

iliocapsularisのサイズが大きかったことと報告しています。

このようなことから

寛骨臼形成不全のような骨による関節安定化が乏しい状態に

関節包・靭帯との協調が可能なIliocapsularisが代償的に

筋張力を高めた結果、筋肥大が生じた

と推測できます。

つまり変形性股関節症の患者様に対して

触診にてこの筋の大きさの評価が

股関節の受動的安定化機構の評価につながるかもしれません。


歩行中の筋活動

Lawrensonら4)は、

Iliocapsularisが足趾離地の周辺で最も筋活動が高まる

歩幅を小さくした場合、

立脚初期の筋活動が通常に比べて下がるものの

立脚中期の活動は大きく増加する

と報告しました。

この論文の著者の考察では

通常の歩行では

立脚終期でSSC(伸張反射を利用したエネルギーを蓄積する機能)

を用いて下肢振出しを行っているが

歩幅を小さくすることでこの機能が不十分となるため

Iliocapsularisを収縮させることで

股関節前面の関節包・靭帯に張力を与え

蓄積されるエネルギーを増やしていると

推察しています。

しかし筋活動パターンは個人差がかなり大きく、

歩行時の機能については

疑問が残ります。



今回はこれで以上です。

注目されている筋ではありますが

まだ機能が明らかにされていません。

しかし私たちの業界は

発展途上であり

日々最新の知識を取り入れていかなければなりません。

私もこういった知識の発信を行っていきたいと

思いますので

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございました。


参考・引用文献

1)建内 宏重 : 股関節 協調と分散から捉える 株式会社ヒューマンプレス 2021 p86-96
2)Babst D, et al : The iliocaplaris muscle . Clin Orthop Relat Res. 469 : 1728-1734, 2011
3)Lawrenson P , et al : Iliocapsularis : Technical application of fine-wire electromyography , and direction specific action during maximum voluntary isometric contraction. Gait Posture 54 : 300-303, 2017
4)Lawrenson P, et al : The effect of altered stride length on iliocapsularis and pericapuslar muscles of the anterior hip : An electromyography investigation during asymptomatic gait . Gait Pusture 71 : 26-31, 2019

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