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脊椎圧迫骨折の病態・評価

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回はフォロワー様からの質問にあった脊椎圧迫骨折の保存治療について話していきたいと思います。

ツイッターをして初めての質問だったので気合い入れて書きます。

熱中して書くため、丁寧語ではなくなりますがよろしくお願いします。


脊椎圧迫骨折の病態

文字通り、椎体に過度な軸圧がかかることにより

圧潰してしまう骨折である。

この骨折はほとんどの場合は骨粗鬆症が起因している。

骨粗鬆症に伴う脊椎骨折のうち、疼痛を伴うのは

全体の約1/3にすぎず、疼痛の無いままに

脊柱の後弯変形が進行していく1)。

レントゲン、MRI、CTなど画像所見やまた叩打痛テストが有効である。

座位や立位では痛みはないが、臥位で痛みを認めやすい2)。

これは荷重下になると骨折部がかみ合って安定するからである。

疼痛が出るタイミングに損傷時とのラグがある場合があるが

これは脊髄神経の前枝(椎体や椎間板に分布)は骨膜についており

骨膜の損傷がしなければ疼痛として発現しないためである。


疼痛の種類

この圧迫骨折には骨膜の損傷以外に疼痛の原因がある場合がある。

それぞれ

①椎体圧壊の影響による椎間関節障害
②脊柱起立筋群や筋膜への過度な伸張ストレス
③損傷による癒着・瘢痕化

がある。

①椎体圧壊の影響による椎間関節障害

椎体の圧縮により椎間関節の運動軸が不一致となり

関節運動の制限が生じる。

またリハビリ中は体幹コルセットなどで固定している場合が多いため、

骨折部の椎間関節の動きは低下している。

そのため、椎間関節は非生理学的な運動となり

二次的に椎間関節由来の痛みが発生する。

②脊柱起立筋群や筋膜への過度な伸張ストレス
椎体圧壊により脊柱前弯が減少すると

椎間関節や椎間板、そして周囲の骨、軟骨あるいは靭帯の他に

脊柱起立筋群やそれを包んでいる筋膜に過大な負荷がかかる。

このような状態下での動的な機械的刺激は、

退行性変化を呈している組織に分布している神経終末に

異常刺激を加えて疼痛が発生する。

また筋や筋膜に由来する疼痛は、

疲労性疼痛と阻血性疼痛がある。

脊柱の腰背筋は、脊柱アライメントの変化により

絶えず筋活動が起こっており、短時間の軽負荷運動(立位や歩行など)でも

筋はさらなる筋活動を強いられ、容易に疲労性腰痛が惹起される。

③損傷による周囲組織の癒着・瘢痕化

椎体は圧潰し、骨折しているため癒着・瘢痕化する。

それによって筋や筋膜などのいわゆる滑走障害がおこる。


疼痛の判別法

骨折そのものの痛みは叩打痛テストにより判別できる。

叩打痛の有無は骨癒合の指標となるため、重要な検査となる。

では叩打痛テストの実施含め、

疼痛の特徴を理解し判別を行い

アプローチする必要があるが

圧迫骨折の患者は体幹をコルセットで固定している。

例えば椎間関節障害は体幹伸展時の疼痛増強が多いとされているが

体幹の屈曲伸展が禁忌とされているこの症例では

前屈後屈動作による判別が困難である。

よって体幹の動きを伴わない評価法を中心に紹介する。

●椎間関節障害

特徴
・後屈動作での疼痛増強
・椎間関節の圧痛
・片側または両側の腰痛
・レントゲンなどの画像上の椎骨同士の不具合

特徴がたくさんあるが前述したとおり後屈動作は困難であり

レントゲン上の異常は圧迫骨折をしている時点で確認できる。

そのため椎間関節の圧痛初見の有無で判断するのが無難といえる。

椎間関節の触診の方法は

L4/L5間の椎間関節を例に出すと

第4腰椎棘突起の下部から一横指ほど

外側を圧迫し、第5腰椎乳様突起を確認する。

そのやや内側に椎間関節が触れられる3)。

骨折部の椎間関節に圧痛があれば、椎間関節障害と判断できるだろう。


筋・筋膜性腰痛

特徴
・脊柱起立筋外側に圧痛が多い
・寛解期に入っても腰痛がある
・画像上写らない

この脊柱起立筋外側にあたる筋は腸肋筋である。

画像1

 上図はVisibleBody様のヒューマンアナトミーアトラスから抜粋

解剖では

起始  腰腸肋筋:仙骨・腸骨稜・胸腰筋膜の浅葉
    胸腸肋筋:第7-12肋骨
停止  腰腸肋筋:第6-12肋骨、胸腰筋膜の深葉、上位腰椎の横突起
    胸腸肋筋:第1-6肋骨      4)より引用

と複雑に見えるが

第2腰椎から側方9㎝付近で筋腹をすぐに触ることができる5)ため

触診が非常に容易である。

この筋や筋膜のリラクゼーション・リリースを行った後に

痛みの軽減がみられれば筋・筋膜性腰痛と判断できる。

またこの筋や筋膜性の疼痛は慢性的な疼痛の代表格である。

つまり受傷して間もないころにベッド上安静にした患者

にこの疼痛は考えられない。

ベッド上安静の期間は離床していないため

筋や筋膜に過度な伸張ストレスがかからないからである。

受傷してから入院までの期間や陳旧性かどうかなど

時間的要素で判断する必要もあるだろう。

癒着・瘢痕性腰痛

特徴
・骨折部付近の皮膚可動性の低下がある。
・受傷後3-4週間から出現する

癒着や瘢痕は受傷後3-4週間後に形成されるといわれている。

この疼痛は周辺組織の滑走障害によって起こるが

椎骨周辺の組織や筋は多くあるため

疼痛を発している組織を同定する触診技術が重要となる。

そして滑走操作(手技は疼痛部位に触れていれば自由と考えている)を行い、

痛みの改善があれば滑走障害と断定できる。

アプローチが②の疼痛と似通った点があるかもしれないが

滑走障害による疼痛は離床しているかどうかに限らず

疼痛が発生するため、

発症時期と患者のADL状況と照らし合わせて考えれば

判別がつくと考えている。

まとめ


今回は以上です。

実際に書いてみてわかったのですが

圧迫骨折に関する文献や報告が非常に少なかったです。

英語の論文を読めれば別でしたが

残念ながら読めませんので日々精進していこうと思っております。

そして書き終えておいてなんですが

私はこの記事に納得できていない点が多々あります。

そのためこの記事に関してはアップデートしていく予定ですので

よろしくお願いします。

またこの記事を書いていただく機会をくださった

だいち 様に感謝いたします。

ここまで読んでいただきありがとうございました。。

参考・引用文献
1)菊池 臣一 :腰痛 第2版 株式会社 医学書院 2014
2)赤羽根 良和 : 腰椎の機能障害と運動療法ガイドブック 
          株式会社運動と医学の出版社 2017
3)林 典雄 : 運動療法のための機能解剖学的触診技術 改訂 第2版     メジカルビュー社 2012
4)監訳者 坂井 建雄・金原 俊 :プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 株式会社 医学書院 
5) Vink P, et al.: Specifi city of surface EMG on the intrinsic lumbar 
back muscles. Hum Movement Sci 8: 67–78, 1989

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