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北海道(雪国)こそ公共交通を充実させよう~クルマはかえって非効率?~



0.はじめに

周知の通り北海道はクルマ社会です。なぜそうなったか。原因はいくつかあります。

1.面積が広すぎて細かい所まで鉄道が行き渡らない
→ただし全盛期の鉄道網はかなり広かった
2.人口密度が低く、採算が取れない
→人口500万超に対して札幌圏に200万以上住んでいる。よって他の地域での収益性が悪い(札幌圏ですら赤字)
3.道路が広く、クルマで走りやすい
→駅と駅しか移動できない鉄道より、目的地に直行できるクルマが好まれやすい環境になっている。
等々。

こういう理由ですっかりクルマ社会が当たり前になってしまいましたが、実は雪国でクルマ依存することには結構問題があります。そこで今回は雪国における、クルマの問題と公共交通の活用法を考えていきます。


1.雪国におけるクルマのデメリット

(1)渋滞・事故・遭難のリスク

冬の交通リスクが高いのは雪国だけではないですが、雪が降る地域は道が狭く見通しが悪くなり、渋滞や事故のリスクが高まります。郊外だと吹雪による遭難の危険性もあります。
もちろん、鉄道やバスでも同様の問題は起きます。ただしクルマよりは事故のリスクは低い。遅延や運休も起きますが、そもそもそんな状況ではクルマ移動も機能しないレベルだと思われます。
よって、遅延や運休が嫌だからとみんなが好き勝手クルマに乗ればかえって渋滞が発生し、無用な混乱を引き起こす恐れがあります。

(2)除雪費用が膨張し、財政を圧迫

クルマ社会であろうとなかろうと、雪国では公道の除雪が必要です。しかしその費用はクルマ社会のほうが圧倒的に高くなります。
それはクルマと歩行者を比較するとよくわかります。

冬にクルマを動かすためには何が必要か。
まず、車道を除雪してもらわなければなりません。そうしないとわだちにタイヤがはまって渋滞します。満足に走れない。
次に除雪車が家の前に置いていった雪を処理しないといけない。やらないと出れません。放置しておくと凍って大変なことになります。
そしてクルマ本体。
まずエンジンをかけて暖気運転する必要がありますね。そうしないと前が見えません。そしてクルマについた雪を降ろし、どこかに捨てなければならない、ガソリンも消耗します。

ここまでやって、「やっと」クルマが出せる「だけ」です。その後事故や吹雪が起きれば渋滞が発生します。苦労が水の泡です。
一方歩行者の場合、道が除雪されてさえいれば歩けます。されていなくても歩くことはできる(苦行ですが)。これが、道がないと「全く進めない」クルマとの大きな違いです。
現状の除雪は車道だけで精一杯です。そのため歩道は雪だらけですが、クルマ社会でなくなれば歩道の除雪に時間を回せます。歩道は車道と違い、がっつり除雪しなくてもいい。ある程度道が確保できれば、後は歩行者が歩くことで踏み固めることができますからね。つまり除雪コストが安上がりなんです。クルマのための広大なスペースを除雪するからこそ、除雪の範囲、人件費、手間が膨張拡大してしまう。
これが、雪国でのクルマ生活による膨大なコストです。


2.雪国における公共交通のあり方

(1)鉄道とバスの活用方法

ではどうすればよいのでしょうか。
公共交通を拡大するのがベストですが、先述したように北海道は人口密度が低いため限界があります。隅々まで鉄道を走らせることはできません。そこで、鉄道がカバーできない範囲はバスを走らせて何とかやっていたわけです。しかし道路を整備しすぎたせいでみんなクルマに乗り、鉄道もバスも衰退したのが現在の状況です。

結局は市民が公共交通の重要性を認識し、なるべく乗るようにするくらいしか対策できないのかもしれません。
回数券・定期券を充実させる、地元旅館と提携して割引クーポンを作る、駅からの観光周遊ルートを作成する、地元スーパーと連携して利便性の高いシャトル場所を運行するなど、利用促進策を打つことが必要でしょう。
市民側としては、先述したように冬のクルマには個人的にも行政的にも膨大なコストがかかることをしっかり認識しておくことがまず第一歩です。

それができず、クルマを捨てきれないのなら、せめてそのクルマを有効活用することを検討していくべきだと思います。

     (2)クルマの有効活用

現状のクルマはどのように使われているか。
通勤・通学・通院、送り迎え、買い物。用途は多様ですが、すべて個人的目的のため「だけ」に使われています。これが非常にもったいない。
たとえば、地域住民で協力して、「全員」が必要なものを誰か1人に頼んで買ってきてもらう。こうすれば、仮に住民が50人いて全員クルマで買い物をしていた場合、50台必要だったクルマが1台で済みます。排気ガスの削減につながるわけです。クルマは手放さずに必要なときだけ使う、というスタンスですね。

こちらの本に限界集落での取り組みが書かれています。その中で、公共交通を維持するために、地域住民が乗る乗らないに関係なく、バスの定期券をみんなで買う試みが紹介されていました。
これを参考に、たとえば地元農家が作っている野菜を地域みんなで一括して買い、地産地消しながら排気ガスを減らすなどの取り組みもおもしろいでしょう。
こうやって協力関係が広がれば、
「地方だからクルマがないと生活できない」
ということがただの共同幻想だということがわかり、公共交通の利用意識を高められる希望が生まれます。

もちろん、こうした取り組みは住民同士の信頼関係が必要です。また、村社会的な同調圧力で無理強いするのも好ましくありません。あくまで自主的な協力に委ねるしかないですが、成功すればクルマのコストはかなり削れるはずです。そうなれば財政にも余裕が出てくるはず。

あと、これはリスクもありますがヒッチハイク。街中で見つけた人をついでに乗せていくという方法です。自分の通る道の途中であればたいした負担にはなりません。話し相手ができれば退屈な時間も楽しく変わります。
しかもバスの路線図から外れた地域の住民を輸送でき、今問題の運転手不足問題に抗する手段にもなりえます。
まあ現時点ではなかなか難しいと思います。
交通網の発達で「匿名」の人が増えた今、安易にこれをやると誘拐・監禁のリスクもある。ただ、逆に言えばこれができ、かつトラブルも起きないならそれだけ社会が健全ということになります。
実践するというより、ひとつの指標として活用してみるのがおもしろいかもしれません。

これと関連して「回送車」の有効活用。ただバス停や駅に戻るだけというのはもったいない。個人がネットで注文したマンガや軽量の雑貨、新聞数冊を載せて運ぶなど、何かしら活用法を見出だしていきたいところ。負担にならない程度の軽いサービスで良いと思います。そもそも、マンガやゲームソフトみたいな軽いものをわざわざトラックで一軒一軒回って配達するのは効率が悪すぎる。不在票の問題もありますし。しかもトラック運転手は長時間労働・低賃金とくれば、果たしてそんな(消費者都合の)豊かさ、便利さは本当に必要なのか?ということにもつながります。


3.おわりに

このブログではクルマ社会の問題点を、口が酸っぱくなるほど取り上げています。
ただ、そうは言っても一旦できあがったシステムを簡単に解体するのは厳しいのも事実。ならせめて、現状の非効率なクルマ使用を改善できないか?と思って書いたのがこの記事です。
北海道に限った話ではないのですが、地方だからと言い訳に
「クルマがないと無理」
と思考停止せず、何か工夫できることがないか探してみることが肝要ではないかと思います。
現状のクルマ社会が破綻するのは目に見えているので、早めに手を打っておくのが賢明でしょう。
神戸市は自動車交通の到来を予見して、早くから立体交差の取り組みをしていたとか何とか、先見の明があったみたいです。
昨今は目先の利益追求ばかりが目立ちますが、先を見据えたまちづくりをしていきたいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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