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【書籍紹介】『まちづくりと景観』(岩波新書) 田村明 著

田村明『まちづくりと景観』を読みました。
タイトル通り、景観を中心にまちづくりを考える本です。

ヨーロッパを旅して帰ってきた日本人の多くが、自国の景観を見てこう感じるそうです。
「これはひどい」
と。
高さや色が統一されていないビル、けばけばしい商業広告やネオン、醜悪な高速道路・バイパス、非人道的な建築物の代表である歩道橋、羊羹を切ったような無個性な校舎…。その他枚挙にいとまがないですが、日本にはこうした建築物が所狭しと設置されています。まあ皆さん見慣れた光景かもしれませんが、もう少し何とかならんのか、というわけですね。
著者はこの点について、法律や条例のあり方だけでなく、市民の景観に対する意識を高めることも大切だと説きます。まあ結局最後に決めるのは市民ですからね。
特に、自分の土地建物だからといって無制限の利用権を認めるべきではなく、まち全体の景観に影響を及ぼす以上、一定の範囲で利用を制限すべきではないか、と考えています。これはその通りだと思います。
また、景観というと視覚的なものばかりに目がいきがちですが、著者は音や市民意識、地下の見えない建築物もまた、景観だと主張します。これは傾聴に値する提言ですね。中島義道氏も主張していますが、日本は騒音大国でもあり、音の問題も景観として捉える必要があると思います。

昨今は太陽光パネルや風力発電の設置により、景観はどんどん悪化しています。阿蘇山も釧路湿原も、もはや風光明媚とは言い難い醜悪な姿になってしまいました。無骨なタワマンも雨後の筍のごとく建設されていきます。そこにあるのは拝金主義的思考。「景観はカネにならない」といわんばかりに、利権と効率性ばかりを追い求める日本。
果たしてこのままで良いのだろうか?と疑問を持った方は本書を繙いてみてください。得られるものがあると思います。

紹介は以上です。
ご精読、ありがとうございました。

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