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【連載】第3次本州紀行~苫小牧→八戸→仙台→苫小牧~ 第8話「邂逅」 ※ホテル禁止

(7)仙台港にて「邂逅」

港周辺の地図を見ていると男性から話しかけられ、
「ここ、歩いて行けますかねぇ…?」
と、ドコモショップを指差して聞いてきたので、咄嗟に地図上の距離を指で測り、
「一応、歩いていくことはできますね。」
と答えておいた。男性はなるほど、という様子だった。シルバーフェリー船内と同様、船・港でのささやかな会話であった。
ひとり旅に話し相手はいないため、こうした会話も貴重な経験となる。話しかける方も、団体よりソロのほうが話しかけやすいのだろう。わたしがひとり旅を好む理由もここにある。もっとも、「おひとりさま」を煙たがる「方々」もいるようだが…。
さて、出航は19:00。ネット予約はしているが、端末で発券はできず、必ず乗船手続きを要する。少し面倒だが、手続きを済ませておこう。

人生には時々、不思議なできごとが起こるが、それはいつも唐突にやってくる。まるで人知の及ばない、大いなる意志が働いているかのように。
待合室で、前の職場に勤めていた人に似ている方を見つけた。目が合って、
「あれ…?もしかして…?」
と思ったが、気恥ずかしさから声はかけなかった。すると、向こうの方から声をかけてきた。どうやら人違いではなかったらしい。久々の再会だ。
どうやら家族と旅行をしていたようで、たまたま私と旅程が重なったらしい。不思議なめぐり逢わせもあるものだな…と思わず感慨にふける。
人生、どこで何があるかわからない。かつて共に時を過ごした仲間と、意図せず、偶然出会う。そんなことも、これからまだまだ起こりうるのかもしれない。そうさ。いつかきっと…。

18:15乗船開始。乗客はそこそこ乗っている。行きの船よりは多いが、混雑というほどでもない。乗るのは太平洋フェリー「いしかり」・苫小牧西港行だ。長距離フェリーのため、シルバープリンセスよりさらに広く、設備も充実している。到着が翌日10:00ということで、乗船時間は15時間。これで酔わなければ、おそらく国内の大抵のフェリーには乗れそうである(まあ、もっとも、冬の日本海は無理だと思うがwww)。
船内のショップではテーマ曲のCDも販売しているようだ。この時点ではテーマ曲を聴いたことがなかったが、到着前に船内で流れた曲を聴くと、なかなか叙情的なメロディだった。


部屋は2段ベッドタイプだった。ツーリストだのコンフォートだの、ロイヤルだのAだのSだの横文字ばかりで予約時点では仕様がよくわからなかったが、少しずつイメージできるようになってきた。

ひとり旅は気楽で良い。子連れや夫婦だと個室が空いていなければ断念することもあろうが、私にはその心配がないのだ。むしろ雑魚寝・共同寝台部屋は庶民的な雰囲気があって良い。正直寝てるだけなら部屋に特段のこだわりはない。
映画『少林サッカー』でも似たようなことを言っていたが、この大地(まあ今は海の上だけどww)こそ私の寝床。華美なスペックは必要ない。というか、紀行文を書く場合、かえって邪魔かもしれない。
旅行系Youtuberなど、見た目のためかデラックスルームなど上質な部屋で旅する人もいる。それを否定はしない。存分に愉しめばよいと思う。
しかし、私の猪突猛進的な旅と、それを文章化した紀行文には似つかわしくない。汗臭さ、泥臭さ、がむしゃらさ。それがあって初めて私の紀行文に生命が宿るのだ。

さあ、旅の終わりも近い。
帰ろう。わがふるさとへ。
(続く)

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