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【連載】第6次本州紀行~苫小牧→名古屋→大阪→敦賀→苫小牧~ 船上編第3話「旅囚」 ※ホテル禁止

(2)2日目「旅囚」

翌朝は5:00に起床。まだ早い。
仙台入港は10:00の予定だが、今回は30分早く着くらしい。
混雑確定の朝食をパスし、手持ちの食事で補給する。
9:00頃になると船内は下船準備で忙しくなる。一時下船の客も結構いそうだ。
まあ、3時間近く停泊するので、降りるのも良いかもしれないが、私は乗ったままでいよう。また乗るときどうせ混むし。
9:30、着港。清掃スタッフが続々と乗り込んで来る。私は部屋とデッキを往復する。しばらくはパブリックスペースも人がはけて使いやすくなりそうだ。

出航の12:50近くになると騒がしくなる。結局昼食もパスしないとだめそうだ。人混みアレルギーの私は連休のフェリーでレストランに行けない、ということがわかった。
まあいい。なんとかなるさ。まだ食糧も残っている。

14:20頃姉妹船の「いしかり」とすれ違う。しかし、時速40kmで互いに走っている上、距離も結構離れているのであっさり終わってしまう。遅い船だったらゆっくり見送りができたのになあ、と思うと、テクノロジーの進歩によって失われた風情をしみじみと感じる。互いに汽笛を鳴らしてすれ違った後、「いしかり」は徐々に遠ざかり、やがて見えなくなった。

客が多いので、寝台に戻る。さすがにやることがないので退屈だ。一応カラオケルームがあるので、予約してもよかったかもしれない、と思うが、退屈なのは他の人も同じだろう。となると、多分終日満室だった可能性もあるな…とも思ってしまう。結局、確実に静かな空間は寝室しかない。
せめてランニングマシンでもあれば良かったなあ、と感じる。
何せ40時間近い船旅だ。身体を動かさないとなまってしまう。
部屋にずっといてはまるで独房の囚人ではないか…と思ったが、しかし精神は自由だ。空想は無限に広がり、羽ばたく。しかし、退屈を味わう詩的感性が不足している。どうやらまだ私は船旅の真髄を極めてはいないようだ。40時間の船越に耐えうる精神は、一朝一夕で会得できる代物ではあるまい。

宮脇俊三『ローカルバスの終点へ』を寝室でひたすら読むが、さすがに退屈で辛いので、時おり外に出てリフレッシュする。だが、風が強く、なかなか厳しい。パブリックスペースの喧騒、デッキの強風、寝台の窮屈…三方塞がりである。これは参った。
ならば部屋で待とう。夜が明けるのを、一人静かに。明けない夜はないのだから。

宮脇俊三『ローカルバスの終点へ』

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