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【短編小説】結婚したら恋愛をしてはいけないのでしょうか?
やっぱり、結婚した後に、人を好きになってはいけないのだろう。
でも、人を好きになるのって、コントロールできるものなのだろうか?
コントロールできないから、不倫する人がいるんじゃないのかな。
ちなみに、不倫は、既婚者が配偶者以外の人と関係を持つことで、浮気は、交際相手や配偶者などがいるのに、他の人に気を引かれたり、好意を持って接触することを言うんだって。
つまり、結婚している私は、他の人を好きになったらそれは浮気で、関係を持ったら不倫ってことなのかな?
身近には、浮気や不倫をしたと言う話は聞かない。ただ、私はそんな恋話をするほど、仲のいい友達がいないので、案外、周りの人達もそういうことをしているのかもしれない。私が知らないだけで。離婚した人もいないけど。同じ職場の人のご両親とかは、離婚してたりしてるな。私の両親は離婚してないけど、過去、浮気や不倫があったかは知らないし、聞けない。
私は、結婚前、交際相手に浮気をされ別れたこともある。そういえば、私自身は、今までに浮気したことはなかったな。きっと、私が他人への関心が薄いせいかもしれない。先ほど言ったように友達も少ないし。仕事上の付き合いは、仕事上の付き合いでしかないし。数少ない交際相手でさえ、全て相手から声をかけてきている。私が好きになった人は、気持ちも伝えられずに、別れた人ばかりだ。
そんな、よく分からないことを考えながら、私は目の前でスマホをいじりながら、ホットコーヒーを飲んでいる彼のことを、視線が定まらない状態で見つめていた。
私の視線に気づいたのか、彼はスマホから目を上げ、私を見て口を開いた。
「何?」
「・・いや、人を好きになるって、何なんだろうなと思って。」
私の言葉に、彼はキョトンとして、その後視線を泳がせた。
「また、唐突なことを。」
「そう?ユキはどう思う?」
「改めて聞かれると何て言っていいか。。」
「やっぱり、結婚したら、他の人を好きになってはダメだよね?」
「・・結婚相手以外の人に、恋愛感情を持つのはダメだろうね。」
何となく答えづらそうにしている彼に、私は質問を続ける。
「でもさ。人を好きになるのなんて、自分でどうにかできることじゃないでしょ?好きになったらどうすればいいのかな?」
「取れる行動は2つしかない。」
「何?」
「1つは、その好きという気持ちを押し殺す。つまり、好きにはなったけど、そんなことないと心の中で否定するとかそういうこと。諦めるでもいいけど。」
彼の言葉に、私はふんふんと軽く頷いた。
「なるほど。もう一つは?」
「離婚して、新たに発生した好きという気持ちに正直になること。」
「恋愛感情を持つ人は、誰か一人にしろということ?」
「まぁ、そうなるね。」
「浮気や不倫はダメってこと?」
あれだけ、やっている人がいるのに?と続けると、彼は嫌そうにその顔を歪めた。
「自分がされた時のこと、考えてみろよ。嫌だろ?」
「・・確かに、嫌だね。ユキは浮気したことはないの?」
「・・それに応える必要性を感じない。」
「したことあるんじゃない。」
私がそう言うと、彼は視線を逸らした。
「過去のことだから、過去のこと。今はするつもりないし。」
「本当に?偉そうなこと言ってたくせに。」
「さっき言ったことも、今の自分にとっては本当。」
「考えを改めたってことかしら?」
「一番は、自分がされたくないなと思ったから。僕も大人になったんだ。」
「私の顔を見て、言ってみて?」
彼は、逸らした視線を私の顔に戻した。私がその視線を受けとめても、その視線を再度逸らすことはない。
「僕は、恋愛感情を持つ人は、誰か一人にするべきだと思う。」
私に向かって、彼ははっきりと断言した。
好きという気持ちはコントロールできるものではないけど、結婚相手の事を考えたら、それを恋愛に発展させずに、好意で抑えろってことか。好意を持ったら浮気になるから、いい人くらいの気持ち。無理なら、結婚相手と別れろと。でも、そうは思っていても、どうにもならないこともあるんじゃないのかな?
「・・ユキは好きな人いるの?」
「今更それを聞くの?」
彼は、私を見つめて、ハァと大きくため息をついた。
「僕が好きなのはチトセだけだけど。だから、結婚したんじゃないか。」
「私もユキのことが好き。」
彼は私の言葉に顔を赤くさせる。
「そう言ってもらいたかったから、尋ねたの。」
「そんなことを尋ねるのって、誰か他に好きな人でもできたんじゃ。」
「仮定だよ。あくまでも仮定。好きな人がいるのに、他にも好きな人ができるという感覚がいまいち分からないなと思って。ねぇ?」
そう彼に応えながら、私は手元にあったアイスティーを口に含んだ。
「・・多分、他の人を好きになった時には、今まで好きだった人から気持ちが離れているんだと思う。」
「つまり、浮気や不倫をする人は、その時の交際相手や結婚相手が好きだって気持ちが薄れているってこと?」
「たぶんそう。人を好きでい続けるにも、それなりに力がいるんだよ。」
経験者は語る。って言ったら、彼は大きく息を吐いた。
「そういうチトセだって、浮気したことあるんじゃないの?」
「無いな。」
「即答。」
「・・言っちゃ悪いけど、誰か好きな人がいる状態で、他の人を好きになるほど、私には恋愛に対する体力?みたいなものが無い。」
「・・なるほど。」
「面倒だって思っちゃう。」
「よく、僕と結婚したね。」
「結婚する時、これでユキだけを好きでいればいいから、楽になれるなと思った。」
「考えてみると、重い。。」
「そうだよ。結婚後に恋愛したいなと思うなら、結婚相手と恋愛すればいいんだよ。きっと。」
「皆が皆、そう思うなら、不倫はなくなるかもね。」
彼はそう言って、声に出して笑った。
終
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