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【小説】目が覚めたら夢の中 第35話:移行

移行

「これでいいかしら。アメリア。」
「その姿と声で、女性口調で話されると、何と返していいかがわからなくなるけれど。」
アメリアがやれやれと言ったように首を振る。合わせて背中のプラチナブロンドの髪が揺れる。着ているのは下着のみだ。

アメリアの身体と目の前に寝かされている人形の身体を見比べる。
人形のまぶたを開いて、瞳の色も先ほど確認しているが、アメリアと同じ赤い瞳だった。
「問題ないのではないかしら。」
アメリアも自分の身体と人形の身体を見比べながら答えた。

カミュスヤーナにお願いされた人形の身体の修正が先ほど完了した。
私の記憶は戻ったが、身体も完全に元に戻ったのかがわからなかったので、アメリアを前もって呼び出してもらい、身体を見比べながら修正をしたのだ。

修正方法はカミュスヤーナに前もって説明を受けたのと、手順書も記載して残してもらっていたので、作業はとどこおりなく終了した。
アメリアにかけられた魅了みりょうの術が、私がカミュスヤーナの身体を借りることで解けないかと心配していたが、解けることもなく、そのため、ちょっかいを受けることもなく済んでいる。

「貴方の意識をこちらに移さないといけないけれど、貴方一人で行える?」
一応カミュスヤーナから意識を移す方法は聞いたけれど、できれば行いたくないのが心情だ。
「こちらには意識がない空っぽの状態だから、意識を移すつもりで手をつないで一緒に寝ればそのうち移るわ。」
「そう。」
そうか。意識がない方に移すのは簡単なのか。

カミュスヤーナから聞いた方法は、アメリアから意識(魂)を奪う方法だった。しかも口移しで。なんでも意識以外のものを奪うのは、掌を介して行うことが可能だが、意識(魂)など、生命の根幹に近いもの、血とか魔力とかは口移しで行う必要があるらしい。掌を介して行えなくもないが果てしなく時間がかかるのだそうだ。
カミュスヤーナは寝ていてわからないとはいえ、口移しで意識を奪うのはしたくなかったので、ほっと胸をなでおろす。

私は人形の身体を抱え上げ、工房に設置されている寝台に寝かせた。
アメリアもその隣に身体を横たえる。いつも着ているラベンダー色のイブニングドレスは、たたんで机の上に置いてある。
着たまま意識を移してしまうと、意識が抜けた私の身体からイブニングドレスを脱がすのに手間がかかるためだ。目が覚めたら、彼女はすぐにイブニングドレスを着なくてはならない。私は二人の上から薄い掛布をかけた。

「では、アメリア。新しい身体の手を握って寝て頂戴ちょうだい。私はカミュスヤーナ様に身体をお返しするから。」
「わかったわ。おやすみなさい。」
アメリアが目を閉じる。すぐに規則正しい寝息に変わった。
寝台が占領されてしまったので、私は部屋の空いているスペースに布を引いて横になった。すぐに眠気に襲われる。

相変わらずカミュスヤーナ様休めてないのではないかしら。
夢の中で会ったら、説教してあげなくちゃ。私はそう思い目を閉じた。

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