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完全リアルタイムではないけど好きなアルバム リードボーカルが交代したMötley Crüe「Mötley Crüe」(1994)

画像引用:Mötley Crüe-Hooligan's Holiday https://www.youtube.com/watch?v=6FU0z52y6R4

モトリー・クルーといえば80年代の華やかなLAメタルorヘアメタルを代表するハードロックグループの一つと言えますが、今回紹介するアルバムはLAメタル等のブームも過ぎ去り、グループとしてもピークを過ぎたかもしれない1994年に発表されたセルフタイトルのアルバムです。

時代の流れか、それともたまたまだったのかは分かりませんが、80年代あるいは70年代から第一線で活動してきたハードロック・ヘヴィメタル系のグループはこの90年代という時代にきて、リードボーカルの交代劇がやたらと目立ちます。例えば、イギリス勢ではジューダス・プリースト(ロブ・ハルフォード→ティム・リッパー・オーウェンズ)、アイアン・メイデン(ブルース・ディッキンソン→ブレイズ・ベイリー)、アメリカ勢ではヴァン・ヘイレン(サミー・ヘイガー→ゲイリー・シェローン)・・・。そして御多分に洩れずこのモトリー・クルーもボーカルのヴィンス・ニールが脱退し、ザ・スクリームというグループ出身のジョン・コラビが加入しています。

グループの顔とも言えるボーカルが変わる・・というのはやはり良くも悪くもインパクトが有り、賛否両論を生んでしまいます。上記のグループの新しいボーカルの在籍は結局どれも一時的なものとなり、結局前のボーカルが復帰するという形になりましたが、モトリーもこのアルバムを発表して数年後ジョン・コラビが脱退し、ヴィンス・ニールが復帰しています。

「一時的」「数年在籍して脱退」というキーワードだけ抽出すれば、このアルバムとジョン・コラビに対して否定的なイメージを持つ方も居るかもしれませんが、このアルバムは凄く力作で、ジョン・コラビも十分その質の高さに貢献していると個人的に思います。

1994年という時代は、ダークでヘヴィなサウンドが持ち味のグランジ/モダン・ヘヴィネス系が主流になっており、このアルバムで展開される楽曲もその多くがそれらに影響を受けたものですが、所々覗かせるキャッチーな旋律はモトリーらしさを感じます。

ボーカルに焦点を当てると、前任のヴィンス・ニールの声が甘く、どちらかと言えば高音域だったのに対し、ジョン・コラビは低・中音域を得意とするハスキーな声。その声はこのヘヴィなサウンドに非常にマッチしており、時折発せられるドスの効いたシャウトはヴィンス・ニールには余り見られなかったものです。

曲に関しては、歪んだギター、激しいドラムが鳴り響くイントロからグループの気合が伝わってくる「Power To The Music」、シングルにもなったキャッチーな「Hooligan's Holiday」、従来のモトリーらしさを感じるノリの良い「Poison Apples」、闇に引きずり込まれるような、タイトルからして如何にもな「Till Death Do Us Part」、政府を批判する内容の?激しく疾走する「Smoke The Sky」、やるせない雰囲気漂うバラードの「Driftaway」等が出色の出来でしょうか。

プロデューサーのボブ・ロックの活躍も見逃せません。モトリーの代表作の一つであり、ボブ・ロックの出世作でもある全米1位を獲得した89年の「Dr. Feelgood」は彼の貢献無しは語れないアルバムでしたが、今回のアルバムも一つ一つの楽器の音がはっきり聴こえるクリア且つド迫力のサウンドを実現しており、2020年の今聴いても全く古さを感じさせません。

リアルタイムでグループを追いかけていた方々にとっては、ヴィンスのいないモトリーはモトリーじゃない!と聴かず嫌いの方も居るかもしれませんが、今だからこそ冷静且つ正当な評価が必要なアルバムではないでしょうか。個人的にジョン・コラビは好きなボーカリストの一人なので、少しでも彼にスポットライトが当たれば幸いです。

Smoke The Sky https://www.youtube.com/watch?v=EHwmdAI9Tfg

Driftaway https://www.youtube.com/watch?v=5dD4S_WeD2U

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B00BK2H8S4/ref=ntt_mus_dp_dpp_1









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