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読書感想文【運命を拓く】中村天風著

こんにちはコウカワシンです。

先日、中村天風(なかむら・てんぷう)さんの書かれた【運命を拓く】を読みました。

本書は、大谷翔平選手の愛読書の一つ。

大谷選手の活躍の鍵は本書にあるといっても過言ではないでしょうね。

それから、本書の内容をマンガにしてわかりやすく解説した本がこの【まんがでわかる 中村天風の教え】です。

この本もおすすめです。

中村天風(なかむら・てんぷう)という人

中村天風さんは、明治9年に東京で生まれました。父親の頑固で不屈、母親の気丈が融合して、激しい負けず嫌いという性格だったそうです。

中学は福岡の修猷館(現・福岡県立修猷館(しゅうゆうかん)高等学校)に進学しましたが、わけあって人を殺めてしまいました。

取り調べの結果、正当防衛で釈放されましたが、修猷館は退学となり、1892年(明治25年)政治結社玄洋社(げんようしゃ)預けとなります。

玄洋社では、生涯の師と仰ぐ頭山満(とうやま・みつる)氏に出会います。16歳のとき頭山氏の推薦により、帝国陸軍に身を置き、諜報員として満州に渡り日清・日露戦争に関わっていきました。

満州での過酷な生活から悪性の肺結核(はいけっかく)にかかり、どのような名医、キリスト教の牧師、禅の指導者、著名人などにすがるも効果はなく、アメリカに渡りますがそこでも症状は改善しませんでした。

ロンドン、パリに渡るも得るものはなく、日本へ帰るために乗り込んだ船で、インドのヨガの聖人カリアッパ師に出会い、カリアッパ師に導かれるがままヒマラヤ第三の高峰カンチェンジュンガのふもとの村でヨガ修業を行います。

二年半ものヨガ修業から、結核は治癒し、さらに悟りを得るに至りました。

1913年(大正2年)にインドを立ち日本に帰る途中、上海にて旧知の友人孫文(そんぶん)の起こした第二革命に「中華民国最高顧問」として協力しました。

帰国後は実業界に転身し、東京実業貯蔵銀行の頭取を務めるも、師である頭山氏と相談した上で、「統一哲医学会」を創設し、街頭で心身統一法を説き始めます。

統一哲医学会はその後、「天風会」に改称し、そのときにはすでに政財界の実力者も数多く入会されていたそうです。

1968年(昭和43年)12月1日に死去。

ということです。


何事も「積極的」に

本書で中村天風さんが伝えたいのは、何事も「積極的に」という「積極的精神」です。

これには大きく以下の理由があります。

  • 常に最高の運命を招くには積極的な態度がいかなる痛みや苦しみも元気に変えることができる

  • 心を積極的に保つ暗示が潜在意識に影響し、実在意識をも同化させる

  • 心が消極的だと人生の光明をどんどん闇にし哀れな気分が人生を支配してしまう

中村天風さんは、カリアッパ師に出会う前に、アメリカでは医学、ロンドンでは心理学を学んでいました。その間にも結核の症状に悩まされ、そういった経験がこのような思想を生んだのです。

生理学や心理学の学びからヨガの行の持つ意味や効果を納得できたから、このような修業にも専念できたのでしょう。

生命は、生きて、生きて、ひたむきに生きぬくものである。

生きぬくために生命は、強い力とすばらしい知恵を保有している。

「天風小伝」より

この思想を持つにいたっては、「運命」というものを見つめ直す必要があったことでしょう。

どうしようもない運命は「天命」ですが、人間の力で打ち開くことができるものは「宿命」です。しかも、その大半は自分で突破可能な宿命であるとするなら心を積極的にすることで乗り切れるでしょう。

逆に、心が消極的であるならば、乗り切れるものも乗り切れないのではないでしょうか。その結果が人生の光明を闇にし哀れな気分が人生を支配していくのです。

そうならないためには、「心を積極的にする」ことが大事なのです。

「積極的」になるために大事なこと

積極的な心を持つために大事なことを本書から抜き出してみると次の通りです。

  • 積極的な「言葉」を使う

  • 自分の「理想」を持つ

  • 何ごとも悲観したり心配したりしない

まだまだあるのですが、この記事ではこの3つに絞らせていただきました。

まず日常的に使う言葉は、積極的なものにしなければいけません。

言葉が積極的に表現されたときと消極的に表現されたときとでは、直接的に実在意識が受ける影響はとても大きな相違があります。

つまり、いつも積極的な言葉を使うことで潜在意識に影響を与え、潜在意識の状態が実在意識の状態に同化していくのが人間であり、常に積極的な言葉を使う習慣をつくればたいした努力をせずとも心が積極的になっていきます。

そのためにも自分の理想は常に現実と同じように自分の心にはっきり明確に描くことが重要です。

それに合わせて、何ごとに対しても心配したり悲観しないことも大事なことです。

人間はこの世に悩んだり心配したり悲観するために生まれてきたのではありません。実際に天風さんは不治の病ともいえる結核に思い悩むことをやめ、一心不乱にヨガに取り組み悟りをひらいたときには治癒しました。

ですので、生きがいのある人生を活きようと欲するならば、一番に戒めなければならないことは、心配や悲観といったことは禁物だと思うべきです。

どうすれば「積極的」になれるのか

心を積極的に保つことが、よりよい人生を歩むのにとても有益なことはよくわかりました。

では、どのようにすれば心を積極的になれるのかを本書から読み取ってみました。

  • 心を常に「清く」「尊く」「強く」「正しく」もつ

  • この世の中や人生には恐ろしいことはありはしないと思う

  • 勇気の煥発(かんぱつ)

勇気の煥発(かんぱつ)とは、勇気がいかなる時も火の燃え出るように、美しく輝き現れ出ることを指すのでしょう。

たしかに世界情勢も良いとは言えない昨今ですが、そのような世界レベルの出来事を個人が憂いてもしかたありませんし、天命ともいえるどうしようもないこと以外は、何とか対処できることばかりです。

つまり、この世の中や人生に恐ろしいことなどないと思うことが肝心でしょう。

それには自分自身に課すこととして、心を常に「清く」「尊く」「強く」「正しく」もつことですね。

「恐れるものなど何もない」と、自分に暗示をかけ、いかなる時でも勇気をもち続けることが何よりも大切だということです。

中村天風の「誦句」(しょうく)

本書では、天風哲学をわかりやすく理解するために「誦句」(しょうく)という、短くも内容を伴った言葉を各章に設けています。

たとえば第一章「生命の力」の終わりには『力の誦句』というものがあります。

『力の誦句』

私は、力だ。
力の結晶だ。
何ものにも打ち克(か)つ力の結晶だ。
だから何ものにも負けないのだ。
病にも、運命にも、
否、あらゆるすべてのものに打ち克つ力だ。
そうだ!
強い、強い、力の結晶だ。

第一章「生命の力」『力の誦句』

本書を長々と読むのもいいですが、この「誦句」だけを拾い読みするだけでも天風哲学を身近に触れることができるでしょう。

ですので、社会人はもちろん、学校教育にも取り入れていただきたい一冊です。ぜひご一読してみてください。


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