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働き方改革は上下関係の民主化から始まろう

                                                                 黄 文葦

 日本の中古車販売会社BIGMOTORの自動車保険料不正請求疑惑が発覚した際、社長は1年分の報酬を返上し、副社長以下役職者の報酬を削減すると発表した。この会社の株式は社長父子だけのものであり、役員報酬の減額は社長の収入増にならないのか。減俸されて社長が辞任したとしても、親子の収入に大きな影響はない。保険金を得るために顧客の車を破壊するような行為は法律で罰せられるべきだ。保険金を得るために顧客の車を破壊するような行為は法律で罰せられるべきだ。それは企業の成長ではなく、投機や不誠実な行為であり、単に儲け主義である。
 
 筆者が注目したのは、社長の息子である副社長がLINEのグループで「教育」の連発、「死刑」の連発、そして「教育」の連発をぶちまけたことだ。社員は恐れおののきながら謝罪した。単に経営者と従業員の関係から、前者はスタッフの悪口や侮辱を好き勝手に言うことができ、後者はそれにひれ伏し服従することしか抵抗することはできない。
 
 BIGMOTORの従業員の平均年収は1000万円を超え、高収入である。おそらくお金のためであり、まともな生活を送るために、人間の尊厳をポケットに詰め込まなければならないのだろうか。お金も尊厳も大切だが、少なくとも悪意を容認する最低ラインはある。そして、経営者はその立場を利用し、やりたい放題で、客観性や合理性を失い、好きなだけ富を集め、やりたい放題で、言いたい放題で、従業員に対する敬意や理解のかけらもない。そのような会社が生き残ることは難しく、日本社会から見放されているだろう。
 
 上司の暴言を前にして、なぜBIGMOTORの社員であるあなたはあえて抵抗しなかったのか。なぜLINEの企業グループ内で、副社長の暴言が無礼で理性に欠けていることを指摘する人が立ち上がらなかったのか。おそらく内輪では、副社長の性格が悪すぎるという意見が出るだろうし、心の底からこのような経営者を軽蔑しているのかもしれない。ただし、部下が上司に従順であることを踏まえ、誰も何も言わず、低姿勢で謝罪した。
 
 日本のテレビドラマでは、部下がひざまずいて上司に謝罪する姿は日本的光景である。日本では特に上司と部下、先輩と後輩の関係が明確で、部下は日常的に上司に報告、連絡、相談する必要がある。上司は話し、部下はノートを取り、敬意をもって記録する。日本人の育ちや礼儀作法は立派だが、礼儀作法は相互対等の産物であり、たとえ上司と部下という関係であっても、お互いを尊重することが最低限のモラルである。
 
 近年、日本では働き方改革が提唱されているが、まずは上司と部下の付き合い方を変え、人間関係や仕事の進め方をよりシンプルで効率的なものにする必要がある。上司が部下の話を聞くときも、メモを取る必要があるのではないか。上司が絶対的な権限を持ち、部下が自分の意見を言わずに聞くだけであれば、それは企業における民主化の欠如に等しい。働き方改革はまず上下関係の民主化から始まろう。
 
 欧米諸国、中国であれば、状況はまったく同じではないだろう。欧米の上司はユーモアで部下を批判するかもしれない。もし社内でBIGMOTORの副社長のような暴挙があれば、問題は人権侵害のレベルにまで発展するのではないか。もし、中国企業のSNSグループで上司が汚い言葉を口にしたらどうなるだろうか。多分、抵抗する人、騒ぐ人、ごまをする人…さまざまな現象が起こるかもしれない。これは大体文化の違いの結果である。日本人のマナーや従順さは、悪意の前では情けなく見える。
 
 「正社員」という身分を世界で最も重要視しているのは、おそらく日本人だけだろう。テレビ広告の主人公が、正社員としての雇用を通告されて大喜びしているのは、ちょっと不思議な感じがする。それが最も一般的で普通の仕事のカタチではないだろうか?今の時代、日本ではまだまだ伝統的な働き方が主流のようだ。「正社員」というステータスは、相対的に安定を意味する。
 
 しかし、BIGMOTORのように、安定の代償としてノールマに苦しみ、嫌なパワハラを我慢するのだとしたら、人生はなんと辛く退屈なものだろう。「正社員」はもう少し正義と尊厳であってもいいのではないだろうか? もちろん、ひとつ注意しなければならないのは、対抗は正当化されるべきであり、自分自身を傷つけないことである。
 
 BIGMOTORの経営者の極端な言動は、日本全体では間違いなく極めて例外である。多くの日本企業は、理念とセンスがあり、従業員を大切にし、社会貢献に熱心で、その結果、長寿企業が多い。ただし、BIGMOTORの件が孤立したケースだとしても、日本の企業文化が経済不況下で後退しているのではないかと思わざるを得ない。
 
 上司が部下の仕事に改善点を思い、善意で批判するのは当たり前のことである。しかし、暴言を吐いたり、人間以下の扱いをすることはあってはならない。企業によっては、パワハラやいじめが現在でも起きていると否めない。経営者にも個性はさまざまだが、社会貢献、客観性、合理性、人材重視、社員の幸福への配慮は経営者の基本的資質ではないだろうか。
 
 コロナの後、人々の働き方は世界的に変化しており、必ずしも誰かの下で働いて生計を立てることを選ばない人々が増えている。実際、近年では多くの日本企業が従業員の副業を認めており、時代の一歩を踏み出している。転職ビジネスを展開する企業はますます業績を伸ばしており、若者はより自分に合ったポジションを見つけ、生涯一つの企業に勤めることはあり得ないと考えられる。日本では、会社を興すのはとても簡単で、個人事業主になって自分で仕事をするのが楽かもしれない。今後は、雇用関係ではなく、技術を身につけ、社会の特定の組織や企業と協力関係を築くことでやりがいと収入を得られるフリーランスが増えていくだろう。もちろん、継続的な学習と自己研鑽は必須条件である。(2023年8月)

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