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【童話・短歌】作品に「引っ掛かり」はあるか?選考の裏側を聞いてみた!(2015年12月号特集)


※本記事は「公募ガイド2015年12月号」に掲載されたインタビュー記事を再掲載したものです。

公募の審査は、どのように行われているのでしょうか。一般の応募者にはわかりませんね。そこで今回は、数ある公募ジャンルの中から短歌と童話を選び、短歌は東直子先生に、童話は西本鶏介先生に、審査の模様を伺いました。審査がどのように行われているのかを知ることで、これを作品づくりに生かしましょう。

児童文学者西本鶏介さん:童話賞は通常は予選がある。審査員が全部読むのは異例

童話賞の審査はどのように行われますか。

一番多いのは、予選委員に選ばれた人が40編とか50編まで絞り、それを名前が出ている審査員が最終選考で選ぶ方法だよ。

予選はどんな人が?

プロの人もセミプロの人もいる。児童書の編集部が予選に協力している場合もある

予選がないケースもある?

ある賞では、俺ともう一人の審査員が全部読む。最初に半分ずつ読んで、あとで交換する。でも、これは異例なことだよ。ほかにはまずないよ。

最終選考会ではどんなやりとりをしているんですか。

候補作一覧があって、一つの作品の採点として、ある審査員はA、ある審査員はBというふうに記載されている。そうすると、たくさんAがある作品のほうがランクが上というわけだな。それを一応の目安として、予選を通過した作品から10編くらい選ぶ

たくさんAのついた作品が受賞する?

必ずしもそうではないよ。最終候補に残った10編からどれを最優秀賞にしますか、優秀賞にしますかってときに意見を言い合うわけだけど、Aがたくさんついた作品でも、「いや、これは問題あるよ」という意見が出て最優秀賞にならないこともあるよ。

ある審査員はAで、ある審査員がCだったら揉めませんか。

揉めることもあるけど、そこは意見だよ。「これ、すごくいいですよ」と言った審査員の声に説得力があれば、みんな「そうだね」と聞くし、説得力がなければ、「あなたそう言うけど、こんなの面白くないよ」ということを理屈で説明するわけだよ。

最後に受賞する作品の特徴について教えてください。

読んでいて、はっ!と手が止まる作品だな。「なんだ?」と思うわけだよ。大事なのは、独創的な発想を持った作品であること。人と違うこと、個性的であること。「これなんだ?」と人の気持ちを惹くこと。つまり、どう書くかということだな。家族が亡くなって悲しいと書くのではなく、それを人の胸を打つようにどう象徴させて書くか。それがひとつの個性でもあるわけだ。

そして、ストーリーが楽しくて面白ければ、少々文章が粗っぽくても、それはすごく印象的なんだよ。文章もあまりひどいのは困るけど、それよりもお話として面白いことだよ。

歌人東直子さん:誰でも思うようなことがそのまま書いてあるとボツ

どのような過程を経て入賞作品が決まるか教えてください。

NHK全国短歌大会の場合は何万首と来るので予選があり、予選を通った一覧を見て選んでいくというかたちですね。それでも1万首は見ます
河野裕子短歌賞(青春の歌)の場合は予選なしで私が一人で見たんですが、中高生の作品が1万1千首、それも手書きとかもある生の状態で送られてきたので、ダンボールで2箱ドンドンッと!

それをどれくらいの期間でいくつまで絞るのですか。

9月10日ぐらいに作品が来て、それを24日の審査会に間に合わせたので、実質的には数日でやった感じ。本選には中高合わせて100首ぐらい残し、それを一覧表にして、そのあとは永田和宏さん、池田理代子さん、俵万智さんと合議で決めました。

1万首も見るとなると、1首を見る時間はどのくらい?

誰でも思うようなことがそのまま書いてあるとわかると、そういうのは早いですね。引っ掛かりがあるのは、誰も書いてないような内容であったり、不思議な言いまわしをしていたり、一つでも面白い表現があったら残します

一度落選候補となったものは、もう見ませんか。

これは残そう、これはボーダーライン、これは落選のように三種類ぐらいに分けておいて、残そうと思ったもので足りていればそのまま、足りないときは次点の中から選び直します。

落選するものの特徴は?

いろんな人が思いそうなことが書かれている作品ですね。あと、慣用表現を避けるというのも、心に留めておくといいですね。

流派のようなものはある?

正岡子規が作ったアララギ系の作風は実直な写生をよしとしますが、でも今は本当のことしか書いてはいけないという窮屈さはなくて、フィクションをまぜたり、想像を膨らませてファンタジックな世界を詠んでも全然大丈夫

上達するには?

最初の最初は入門書を読みました。佐佐木幸綱さんの短歌入門書を熟読したり。あと、批評しあえる短歌仲間がいればぐっと上達しますが、まずは歌集やアンソロジーをたくさん読むことですね。
インプットが増えれば語彙も自然に増えますし、短歌の独特のリズムを体で覚えられ、自分を出しやすくなる。その辺は音楽やスポーツと同じですね。

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※本記事は「公募ガイド2015年12月号」の記事を再掲載したものです。

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