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【知らないうちにやってるかも…】創作脳に良くない習慣(2014年4月号特集)


7つの本能と心

 脳には7つの本能があり、脳神経細胞に由来するのが「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」の3つの本能です。
 ダイナミック・センターコア(A10神経群から海馬回、リンビックまでの神経群)の組織に由来するのが、「自己保存」「自我」「統一・一貫性」「自他共存」の4つの本能です。
 「自己保存」は自分を守ろうとする本能で、「自我」は自分で考えたものを自分で達成したいという本能です。「統一・一貫性」は「そろっている」「一貫性がある」と正しい判断をするための基になる本能。
 「自他共存」は違いを認めて共に生きる本能です。

 心は、この本能から生まれます。たとえば、「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という本能からは、探究心、競争心、友愛の心が生まれます。「自己保存」「自我」の本能からは自尊心や何かを得たいと望む心、向上心が生まれ、「統一・一貫性」の本能からは微妙な差異をよりわけて好悪を感じる心が生まれます。また、「自他共存」の本能からは貢献心や、他者を愛し、他者のためになることをうれしいと感じる心が生まれます。
 これら本能と心は、理解力や思考力を引きだすのに重要な役割を果たします。

脳をうまく使おう

 脳に情報が届くと、その情報に対する感情が生まれ、情報に対してレッテルを貼ります。ここで「おもしろい」と思った情報には脳が働き、理解力もよくなります。しかし、「興味がない」「年だから無理」とレッテルを貼ってしまうのは脳に「働くな」と言うようなもので、そうすると脳は衰えます。ネガティブなことは言わないに限ります。

 また、ものごとを繰り返す習慣を持つと、理解力、判断力が鍛えられます。野球の素振りもたくさんやれば、微妙なフォームの違いが分かるようになります。
 脳は新しく入ってきた情報と、すでにある情報のつき合わせを行いますが、同種の情報が与えられ続けることで、照らし合わせの力が強化されるのです。

 脳にご褒美を与えるのも、脳を進化させるのに重要です。ご褒美とは、自分がやろうとしたことを達成することです。
 公募でも、大きな賞を狙って万年ボツより、小さな賞でもたまに受賞するほうが達成感、充足感があるということです。
 最後に、同期発火というのを紹介します。脳には一つの概念をまとめ上げる力があり、それが同期発火というしくみです。同期発火は考えをまとめるだけでなく、他者と考えを通じ合わせるときにも重要な役割を果たします。つまり、コミュニケーション。仲間や友人と楽しく会話すると脳の疲労が取り除かれ、脳を若々しく保つことができるのです。

脳に悪い6つの習慣

「もう年だよ」が口癖

 「もう年だ」と言ってしまうと、脳の力は衰退します。「年だから」は自己保存の本能が言わせている言いわけです。言いわけすれば脳は力を発揮しなくなります。なんとかしてやろうという気持ちを失わないようにすることが大切です。

人の話を上の空で聞いてしまう

 人生経験を積むほど、「その話は知っている」「その手の話には興味がない」とレッテルを貼り、興味を示さなくなったりします。脳の機能を維持し、発達させていくには、物事への強い興味(好奇心)を持つことが必要です。

「でも、だって」と言いわけする

 「でも」「だって」という否定語をすぐに口にする人は脳が老化しやすいと言えます。もしも、「でも、無理」と思うなら、ハードルを下げて、できること、親しめることから少しずつ始めて、成功体験を積む。達成感は脳にはご褒美です。「できた」「わかった」という達成感を味わうと、脳は力を発揮します。

人付き合いより、一人の時間が好き

 人付き合いを避けると、脳の機能は衰えていきます。知的交流ができる相手がいる、あるいは共通の趣味を持つ仲間との楽しい会話がある生活なら、感情を伝えたり共感したりする機会が増え、理解力や思考力、記憶力も高まります。

仕事以外の目標がない

 脳は、何をすればいいのかが具体的にならないと力を発揮しません。「1日に1 時間本を読む」でもかまいませんので、達成しやすい目標を持ちましょう。できるだけ達成しやすく、自信をつけられる目標がいいでしょう。

すぐに「損得」を考えてしまう

 人生経験のある人ほど、「これは無駄な作業」と賢い判断をしますが、損得を考えると、「これは無駄だから頑張らなくていい」と力を調節することになり、脳は高いパフォーマンスを発揮しません。無駄と思えることでも損得を考えず、手を抜かず、全力投球をする。脳が力を発揮するためには、この姿勢が大切です。

脳は何歳でも進化する(林成之先生インタビュー)

脳を知れば勝てる

――年齢に関係なく脳は進化する?

 気持ちは年をとらないと言いますよね。気持ちや心は脳が作りだしているんです。だから、脳も年をとらない。

――脳が衰える人と衰えない人がいる?

 なぜ脳が衰えるかというと、答えは簡単。「年だから」と考えるからです。「年だから」と言った瞬間、人間の脳は「統一・一貫性」の本能に従って、それに全部合わせるように動き出す。そうすると知らず知らずのうちに本当に年をとってしまうんです。

――年のせいにしないほうがいい?

 「年だから」「できない」「無理」と否定を言わないことが大切。人間っていうのは嫌いだと思ったものは受けつけない。
 しかし、「おもしろい」「好き」と思うことには頭が働く。好きな先生の授業だとよく理解できるのはそのせいです。

――同じことを繰り返す習慣があると脳が鍛えられるというのは本当ですか。

 同じことを飽きもせず繰り返しやることで「統一・一貫性」の本能が鍛えられて、微妙な差異が分かるようになる。学校でも優等生になる子は、飽きもせず同じ遊びをしていますよ。

――同じ本を何度も読むのは?

有効です。多くの本を読んだほうが知識も増えて効率的ですが、一つの本を繰り返し読むほうが、脳のためにはいいんです。これぞと思う本に出会ったらそうしてみてください。

――他人と違う文章を書くには?

 繰り返し考えること。独創的な発想を生み出すには、「これでいいよね」と思っても繰り返し考える。それが最善の方法です。

――アイデアを磨くコツは?

 脳には「統一・一貫性」の本能がありますから、新しいアイデアを生むことを邪魔します。そこで「統一・一貫性」の本能をはずす。「常識を疑う」というのもその工夫の一つです。

――ほかにもありますか。

 「三日あけて考える」というのもあります。脳は、重要でないことは三日で忘れるようにできています。だから、考えに行き詰まったらわざと三日あける。すると、余計な情報を脳から追い払うことができます。

――長編は書けないという人が書けるようになる方法はありますか。

 スポーツでも「過去に一回も勝ったことがない相手だから勝てない」と思ったら勝てない。過去の実績は関係なく、勝つんだ、勝てるはずだと思わないと勝てないんです。同じように、長編は書けないと思っているうちは書けません。

――書けると思えるようになるには?

 大事なのは成功体験です。無理せず、「これなら成功するだろう」というレベルまで引き下げ、成功体験を重ねる。そうすると達成感があって、やがてちゃんとやれるようになります。

――最後に公募にチャレンジしている方にアドバイスをお願いします。

 損得を考えずに全力投球し、応募して落選した場合は反省しないこと。それよりなぜ落ちたかを考える。受賞した人はなぜ受かることができたのか理由を考える。「なぜ」を解決していくこと。そうしたら次につながります。

林成之(はやし・なりゆき) 
日本大学大学院総合科学研究科教授。
北島康介選手、内村航平選手など金メダリストを指導し、結果に貢献。また、今春行われた高校サッカーの決勝のカード、富山第一高校と星稜高校の両校も指導。『何歳になっても脳は進化する!』『望みをかなえる脳』『〈勝負脳〉の鍛え方』など著書多数。
参考文献 林成之著『何歳になっても脳は進化する!』(三笠書房)

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※本記事は「公募ガイド2014年4月号」の記事を再掲載したものです。

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