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泣かない子供

どうしていいかわからないとき、なにがしたいかわからないとき、人に会いたくなる。知っている人に会って、話してみる。お互いの最近会ったことを話しながら、自分の思っていることを話してみたりして、話しているうちに思いも寄らないことを自分が話していることに気づいて、考えているだけでは知ることができなかった自分の無意識に気づいてみたり、友人の発した何気ない一言が心の中の何かを掴まえることもあったり、とても楽しい。

それもいいけれど、本を読むのも良い。
そんなときに、私にとって一番安心する人が江國香織さんだった。

眠り
「あらゆる動詞の中で、いちばんうっとりする動詞。言葉のひびきも佇まいも、溶けそうでしずかで、まるでゆめのよう。まるくて地味な飴玉に似ている。私はいくらでも眠れるし、眠っている人をじっと見ているのも好きだ。」

この文庫本の1ページに書かれているこの文章に全部入っていると思った。
これはすごく人に伝えることが難しいけれど、この文章のバランス。眠りに対する正確さと、そのひとつひとつの言葉の組み合わせ。ぜったいにこの組み合わせでなければいけない、と思ってしまう不思議な、恍惚感のようなものが心の中に残る。

人と会うのもいいけれど、電話をするのもいいけれど、メールやLINEで連絡を取り合うのもいいけれど、本を読んでその人と話しているような、聞いているような、そんな過ごし方がいちばん好きだと感じる日。

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