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都会の隙間

東京に住みはじめて4年目ほどになった。最初はどこがどこやらわからない。六本木と麻布十番までの距離がどれくらいか検討もつかないけれどどちらの街もなんとなくとんでもない危険かつ派手な街なのだろうとそれまでに得た東京の情報からイメージしていた。

東京は誤解にまみれている。と思った。
六本木も麻布十番も渋谷も新宿も、原宿だって言われているような遊びの街で若者がひしめいているだけの街では決してなくて、確かにその部分はあるのだけれど、でもそこには住み慣れた地元の景色に通じるようなありふれた近所の人と同じ生活の景色があって、思わず現れるその路地に出会うとき私の心はときめいた。

そのときめきというのは、あらんかぎりに高められた東京というハードルの何段も下を通過しようとする当たり前の日常の東京を目にするからだった。たとえ地価が坪何千万だろうと何十年も前からそこにあり続ける景色。やっぱりこういう景色は時が過ぎるにつれ失われていくものでもあり、だからこそ思わず接したときに初めて接したにもかかわらず感傷的な気分に浸ってしまうのだろう。

住んでみないとわからない東京。
会社と自宅しか移動しない東京。
名所やイベント会場にしか行かない東京。

何も無くなった日常の中で、何の目的もなくただただ行き当たりばったりに歩いていく中で初めて見つけられた東京が今年はいっぱいにあった。

やっと、東京と知り合えたような気がしている。

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