地元化する東京

観光地。人がいっぱいいる。出かける場所。
そんな印象だった東京。住みはじめてもどこかいつも気負ってしまうような、いつまでもあのときの東京の印象は私の中にしっかりと根付いていて、住んでいる街もしばし腰掛けているような心持ちだった。

そんなしっかりと根付いていた東京の印象がいつしか溶けていった。
何回か引っ越して落ち着いた街で、ここもやはり人は多くて観光地は近くにあって。でもどこか落ち着くのはどうしてだろう。

休日の朝、窓を開けて掃除をして、鍵と財布をポケットに入れて、本を一冊持って近所の喫茶店に行く。髪はぼっさりしているし部屋着にカーディガンを羽織っただけのそのまんま起き抜けの格好。それでも気にならない。地元の人しか来ない喫茶店、駅前のカフェみたいな喧騒はなく、それぞれの人がゆっくりしている空間が落ち着く。有線のクラシック音楽が流れながらテレビもついていて情報番組の音が混じる。今日は11月なのに夏日だと、話し声が聞こえる。食器を洗う音、コーヒーを入れる音、そのいろいろな音がとても心地が良くてたまらない。

きりがいいところまで本を読んで、お会計をしてお店を出る。
1時間ちょっとそこにいるだけで気分が変わる。
今日を始めようか、という気持ちになる。
もう随分大人だけど、私は東京で大人やってるんだなと思う瞬間。

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