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昼間のコンビニ

昼過ぎ、頭がまったく働かなくなって外に出る。
もわもわする空気の刺すような太陽の日差しで夏の世界に戻ったことを実感する。蝉の鳴き声と工事の音と車の走行音が入り混じって、昼間なんだなあと思いながら路地をなんとなく歩く。手には1000円札を1枚入れた小さい財布。

半ズボンのポケットに入れた鍵が足を上げるたびにキーホルダーと擦れてカチカチ音が鳴る。歩いているとカチカチ音が鳴る。
ああ、このカフェ行きたいんだけどな、と思いながらまた今日も前を通り過ぎるだけ。パソコン持ってきてもいいんだけどな、と思いながら、また家に戻ってここまで歩いてくることを想像してしまう。その手間のハードルを今日も越えられず、コンビニに向かって歩いてしまう。

角を曲がったらコンビニがある。コンビニの前でまだ夏休みなのか中学生くらいの女の子が2人、自転車に跨りながらアイスを食べていた。すごく美味しそうで、すごく夏だなと思った。途端にアイスが食べたくなる。

コンビニに入ると、買い物客は数人で、私はアイスのケースをまじまじ眺め、棒アイスを一つ手に取って、一通り棚を見たけれど、けっきょくアイスだけ持って会計に向かう。店員は一人で、お年寄りの女性が会計をしていた。生活用品をここで買う習慣なのか、カゴいっぱいに。私はアイスを一個持ってその後ろに並んでいて、ぼうっと会計の様子を見たり、店内を眺めていた。
女性はしきりに後ろを気にしていて、それはつまり私に対して気を遣っていた。アイス一本持った男が後ろに並んでいたらけっこう気まずいのだろうか、なんて考えたりする。会計がやっと済んで、去り際に女性が、お待たせしました、と一言。とんでもないです、と私が言うと、にっこり笑って去っていった。

ただそれだけ。よくないけれど、一通りの少ない路地に変えて、マスクを外してアイスを食べながら家に帰った。ちょっと外に出てみるといろいろ起きる。

それからまた仕事に戻った。

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