ほどほどとか、言ってる場合じゃない

私のような無名脚本家でも、「脚本を書いた映画が公開されます!」といったお知らせをSNSでしていると、
「調子よく、うまいことやってる」
と人から思われていることがあるんだな、と時々感じます。

ですが実際、調子よく物事が進んでいる時なんて、そうそうありません。
映画やドラマが制作され、上映、放送されるまでの道のりは長く、色んなハードルがあります。
その中で脚本家にできることは、少しでも面白いホンを書こうと、あがいたりもがいたりすることだけ。
自分なりに必死にやっていても、「これだ!」と思った企画が、思わぬ事情で途中で立ち消えに……という時もあります。

資料を読みまくり、できる限りの取材もして、書いては書き直し……を繰り返す。そうやって気合いを入れて取り組んでいればいるほど、立ち消えになった時の虚無感も大きいわけで、そんなガッカリ体験が増えていくと、新しい企画が動き出した時、つい疑心暗鬼になることも……。
「初期段階から全力ツッコんだら、あとで後悔するかも」
「制作の目途がある程度立つまでは、資料集めも調べ物も、ほどほどにしておく方が賢いんじゃない?」
みたいな考えが、頭をよぎったりするわけです。

でも、やっぱりそうは行かない。
私程度のキャリアでも、過去を振り返ると、「あの仕事がターニングポイントだったな」という作品がありますが、それがターニングポイントだと分かるのはいつだって、取り組んでいる最中ではなく、後になってからなのです。

だから毎回、
「この作品がターニングポイントになるのだ」
「ターニングポイントにするのだ」
という気持ちで臨むしかない。

それに、たとえどこかで立ち消えになったとしても、その企画に目いっぱい力を注ぐことで得た知識や技術まで消えるわけじゃない。それは、誰にも奪えない。

……ということで、ただ今、新規案件の参考になりそうな資料をまとめてAmazonにて購入しました。
後々、「ちくしょー! あれもこれも、例のポシャった企画の為に買った資料だぜ!」とギリギリする日が来るのかもしれないけど。
「そんなの知ったことか」と開き直ってツッコんで行くしかないのです。
無名の脚本家は。

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