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甘酒のこと

実家の母は寒くなるとお鍋いっぱいに甘酒を作る人だった。
冬のいつもの台所の風景。

私は特別好きでも嫌いでもなく、あるから飲もうかなぁとか、最近飲みすぎてるから飽きたなぁとか思う程度。

実家を出て暮らすようになって、当たり前に甘酒が台所にあるわけでもなく、家で飲むならコーヒーか紅茶。

ある冬の寒い日。ほろ酔いの帰り道、温かいものを買おうと思って寄ったコンビニで甘酒が目に留まった。
わざわざ買うものでもないんだけどね、なんて思いながら、でもなんだかとても飲みたい気もして初めてお金を払って甘酒を手にした。

お酒を飲んで徒歩の帰り道、東北の冬。風が強いとさらに体が冷える。
かじかんだ手を甘酒で温めつつすすったら母が鍋に沢山の甘酒を仕込む姿を思い出して懐かしくなった。

私はわがままだなぁ。
母が用意してくれてた時には
『そんなに要らないよ』と冷たくした時もあった気がする。
30歳手前にして甘酒がとても美味しいと思えた。

コーヒーやミルクティーより甘酒を選ぶ。
毎度ではないけど体が求めている時がある。

10年働いた販売の仕事の休憩に甘酒を飲んでいたら他のスタッフが
『え!?甘酒???
わざわざ買ったんすか?!?!』
なんて声をかけてくることもあった。

そう、わざわざ買ったの。
飲みたくなるんだもん。
いや、わかるよ〜
少し前は私だって缶のおしるこや甘酒なんて誰の為に売ってるんだろ〜と思っていたもん。
コーヒーかミルクティーかコンポタしか買わなかったのにさ。

他のスタッフから
甘酒!渋いっすね!なかなか休憩で飲んでる人見たことないっす!!
なんて言われて笑いながら甘酒。

先日初めて粉末のお湯に溶かす甘酒を選んでみたらめちゃくちゃ便利だった。
濃さも調整が楽で感動した。
粉末なのでお菓子やお料理に使ったりしやすい。

家でひとりで仕事してると食事の量が減る。
おやつがわりに甘酒。
ホッと一息ついて、実家の記憶と味わう優しい時間。

おしまい

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