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条件世界{二章、自然に宿る神々}

「じゃ、学校行ってくるよ。」

「あんまり人が多いところでは力は使うなよ。」

「分かってるよ。」

「それと風太。飛行機や鳥には気を付けろよ。」

「分かってるって笑。じゃ、行ってきます。」

俺の名前は城堂風太。

高校二年生だ。

今の会話からも分かる通り俺は普通の高校生じゃない。

自分で言うのもなんだが特殊な力が使える。

空を飛ぶことが出来る。

だから日本の大抵の場所は30分以内に行くことが出来る。

でも自分が早く行けるからと言って全てが全て便利だとは言い難い。

何故なら自分が早く行けても相手も早く行けるとは限らないからだ。

小学校の頃帰る時は一番で帰るか最後まで理由をつけて残りとにかく人目がつかないように帰っていたしもっと大変なのが家庭訪問だ。

うちは学校から車でも1時間はかかるほど遠くにあり友達などが気軽に遊びに来れるような場所にはない。

なので基本うちは家庭訪問を断っていたのだが4年生の時の担任が厄介だった。

『一度は風太くんの普段の様子を見させてもらいたいです!』

と何度もうちに行かせて欲しいと母に強く迫りめんどくさくなった母は『車でも1時間以上かかりますがそれでも良ければどうぞ。』

と大分投げやりに承諾した。

しかしうちに来るのが大変なのは学校からうちに来るところじゃない。

問題はうちの玄関だ。

玄関に辿り着くまでが大変なのだ。

俺は母さんに『何で家に来るのを許したの?』と聞いたところ『一度来てみれば自分が如何にとんでもないこと言ってるか分かるでしょ。』とのことだった。

うちは標高500~700mくらいの場所に立っていて普通の人ならまず住めない場所にある。

恐らく・・・というか普通に知らないであろう担任は地図を見ながらうちの付近まできて愕然とするに違いない。

『何でうちが高い場所にあるって言わなかったの?』

『えー多分途中まで来て引き返すでしょう。で、後日なんだかんだ理由をつけて行けずに申し訳ありません。って電話でも来るでしょ。』

『それを狙ったのか・・・。』

母さんの言った通り後日と言わずその日の夕方に『どうしても道が分からなくなってしまい行けなかった。』と担任から連絡があった。

きっとなんとか行こうとしたのだろう。

うちの家族は母さんは基本家にいるし父さんは砂に乗って麓まで降りれる。

そして俺は風に乗って降りるから家の麓から家までの道は殆ど使われていない。

なので道無き道しかない。

初めて来た人にその道を見つけるのは困難だろう。

母さんが出かけるにしても父さんに砂に乗せてもらうか電話で須羽さんを呼べば1・2分で麓まで降りれる。

うちの親戚もそれぞれ力を持っているから500~700mの高さなんてちょっと階段が多いのと大差ない。

だから麓から家までの道をわざわざ整備する必要は無いのだ。

翌日学校に行った俺は先生からの謝罪の嵐を止めるのに多大な力を消費した。


~~~~~


俺は基本家の麓まで風で降りて都心部まで風で飛んでいく。

都心部まで着けばあとは歩いて10分程度だから登校時間は15分くらいで済む。

遅刻しそうな時は家から学校まで直接飛んでいく。

その時は人に見えない速さで屋上の上まで飛んで屋上に人がいないのを確認して降りる。

まぁ予鈴が近いとみんな教室にいるから基本いない。

そうして俺は屋上に降り教室に行く。

こんな人を避けている俺でも親友はいる。

親友というより幼馴染だ。

「今日も予鈴ギリギリだったな。」

こいつは檜河無水。

いつも淡々としていて感情の起伏が乏しい奴だ。

「まぁ間に合ったんだからいーじゃん。」

「人には見られなかったんだろうな。」

「見られてたら今頃騒ぎになってるって。」

「まぁそうだが・・・。」

こいつも俺の能力について知っている。

というかこいつも能力を持っている。

こいつは氷を扱う能力者だ。

「それより修行はどーなのよ。上手くいってんの?」

「まぁボチボチだな。」

「そりゃ良かったな笑。で、温暖化は止められそう?」

「一人じゃ無理に決まっているだろう。」

「お前の親父さん無茶言うよな笑。」

無水の家もウチと同じ能力者一家だ。

無水の親父さんは水使いでお母さんが雷使いだ。

うちの母さんと無水の母さんは姉妹関係だ。

無水は氷の使い方を親父さんに教えてもらっている。

氷も元を辿れば水だそうで無水の親戚には蒸気や熱湯を使う水使いもいると無水から聞いたことがある。

無水はいずれ温暖化を止める筆頭になる予定(親父さん曰く)らしく能力を使う時の基本を教えてもらっているらしい。

なので毎日水を氷に変える練習をしているらしい。

「お前の方こそどうなんだよ。風の使い方は少しは上手くなったのか?」

「まぁ家族を運ぶくらいなら何時でも出来るけど流石に雲を流すのはまだ完璧には無理だな。」

「それじゃまだ噴火仕事の方は無理そうだな。」

「まあな。」

実は俺も風の使い方の修行を受けている。

と言っても父さんじゃない。

母さんの知り合いの須羽京一という人からだ。

須羽さんは俺と同じ風使いで巷じゃ風神なんて言われている。

須羽さんは基本母さんの移動手段としてパシられている。

と言っても同じ風の使いの人を派遣してるだけだけど。

風の修行の合間に母さんと須羽さんの話を色々聞くのだがどれも申し訳ないが面白かった。

昔は風の修行だとか言われてよくタクシー代わりに利用されてたことや雷をスレスレで落とすという悪魔の遊びなど同情する話まであった。

けど今は大人になった事もあり幾分か落ち着いたらしい・・・。

そんな須羽さんから風の使い方を教わっているおかげか幼馴染の中では一番能力は伸びている。

こうして話をしている間にホームルームが終わり1限の授業が始まった。


~~~~~


1限が終わり俺たちはもう1人の幼馴染に会いに行く事にした。

「あいつ・・・来てるかな?」

「あいつ寝起きちょー機嫌悪いからな。また来てないかもしれないな。」

俺たちがこれから会いにいくもう1人の幼馴染とは毘之漿郗だ。

こいつはマグマを使う。

マグマを使うことが出来るので各地の噴火を抑える為に(本人曰く)毎日修行をしているらしい。

「おーい漿郗!いるかー!」

「いるけど?何?二人して暇でも持て余してんの?」

「お前は相変わらずだな。」

「あんたたちも相変わらずだね。無水。」

「・・・仮にも年上なんだからもう少しは言葉遣いなんとかなんないのかよ笑。」

「うっさいなぁー馴染みなんだからそんなん関係ないでしょー?」

「・・・それより修行の方は上手くいってるのか?」

「じぇんじぇん。」

「だろうな。噴火のニュースが今日も流れてたぞ。桜島。」

「だってしょーがないじゃん!風の人が送るの遅かったんだもん。」

「お前はそうやってすぐ責任転嫁する。」

「じゃあ無水は温暖化ちゃんと止められてるわけ?活動家のガラトさん国際会議出てたじゃん!」

「氷の能力者は希少なんだ。仕方ないだろう。」

「まぁまぁ会って早々喧嘩すんなよ笑。」

「ところで風太はどうなの?修行上手くいってるの?」

「まぁ須羽さんが教えてくれてるからな。1人でやるよりはずっと上手くなってるよ。人も2・3人くらいなら風で運べるようになったし。」

「ふーんじゃあ早速今日の放課後ウチまで送ってよ。」

「え?」

「俺も頼む。」

「は?無水もかよ!ちょっとまっ・・・。」

(キーンコーンカーンコーン)

「「じゃよろしくね!(な。)」」

そんなこんなで、二限目の予鈴がなった。


~~~~~


そして放課後俺は無水と漿郗がくるのを校門で待つことにした。

「風太ー!お待たせー!」

「待たせたな。」

「いやそんなに待ってないし。それにどうせある程度人が帰らないと送れないからな。」

「それは・・・そうだね笑。」

「じゃあとりあえず飛べるところまで移動するぞ。」

「そうだな。」

これから俺の風の力でそれぞれの家に送る。

当然だが人前では送れない。

そこで俺たちは近くの神社に行った。


~~~~~


「よし着いたな。」

「で、あたしたちはどうすればいいの?」

「基本は何もしなくていい。ただこれから飛ぶ流れを説明するからそれを頭に入れておいて欲しい。」

「流れ?」

「うん。どうやって飛ぶかを理解しておいて欲しい。何も分からないまま飛ぶのは不安だろうし。」

「確かに。失敗したら洒落にならないからな。」

「大丈夫だって笑。母さんと須羽さんからお墨付き貰ってるから。」

「で、どう飛ぶの?」

「まずは雲の上まで一気に上がる。そのあと普通に飛行機みたいに飛ぶ感じだ。大雑把だが飛ぶ流れはこんな感じだな。」

「なんで雲の上まであがんなきゃいけないの?」

「それは・・・一般人に見られたら騒ぎになるだろう。」

「そ、無水の言う通り。地上から目視出来ない高さまで上がらないと落ち着いて飛べないからな。そのあと二人の家に順番に送るよ。」

「「りょーかい。」」

「じゃ、いくぞ。」

「まて高山病にはならないんだろうな?」

「そこは大丈夫だ。酸素もある程度風に含ませて飛ぶから。あと向かい風も気にしなくていい。俺の風で前に膜を張るから。」

「まぁ風太が言うんだから大丈夫でしょ。じゃ、ちゃっちゃとお願い。」

「・・・頼む。」

「分かった。じゃ、いくぞ。」

そう言うと俺たちは標高200m前後まで一気に上昇し近い方の家から飛んで向かった。


~~~~~


「わー!飛んでる!!風太、無水!飛んでるよこれ!!」

 俺は漿郗と無水を風の力で覆いながら、某気功波漫画の戦士たちみたいに空を飛んでいた。

「思っていたより風の抵抗は無いな。」

「だろ?だから大丈夫だって言ったんだ。それよりまずは漿郗の家に向かうぞ!漿郗の家の方が近いからな!!」

「何分くらいで着くの?」

「5〜6分あれば着く!」

「え!?5〜6分?速くない?私電車で来て30分くらいかかるんだけど?」

「風の力使ってんだ!当たり前だろ!!もうそろそろ着くぞ!!」

そうこうしているうちに俺たちは漿郗の実家である、毘之家に着いた。


~~~~~


「あ、久しぶり〜!!お父さんとお母さんは元気?」

「はい笑、二人とも相変わらずです汗。」

この人は毘之家の主の華季おばさんだ。

ここで少し俺たち3人と家族の関係性について説明すると俺の父さんと華季おばさんと無水の親父さんは幼馴染みだ。

なんでも3人とも由緒正しい一族の当主同士で関係があるらしい。

また母と須羽さんも格式高い一族の当主同士で姉弟も同然で関係があるらしい。

華季おばさんの旦那さんが俺の父さんの弟で母さんの妹が無水のお母さんで・・・ともう皆が皆身内みたいなものだ。

そしてこの華季おばさんも勿論能力を使える。

「仕事の方はどうですか?」

「仕事?私は基本指示するだけよ。当主だしね。まぁでも火力発電の方も上乗だし火山活動の方も比較的今は落ち着いてるわ。」

「そうなんですねー。」

「それよりウチの漿郗を送ってくれてありがとね〜。お母さんから聞いてるわよ♪風の修行上手くいってるんだってね!」

「はい2・3人を運んで飛べるくらいには安定してきました。」

「須羽っちもセンスがいいって言ってたわよー。」

「え?そうなんですか!なんか嬉しいです!」

「良かったね!無水君は修行上手くいってる?」

「・・・ちょっと自分ではよく分からないですね。水を凍らせることは出来るようになりましたが規模がまだ・・・学校の校庭くらいしか出来ないので。」

「あ!でも前よりは出来てるみたいね。雪正から聞いた時は一軒家三軒分って聞いてたけど・・・うんうん!順調そうね!」

「でも親父は沖の広さの水を一度に操るので・・・。」

「まぁそう急ぎ過ぎないでも次第に出来る様になるわよー。雪正も最初は漁船くらいの範囲しか操れなかったし。」

「そういうものですかね・・・。」

「そうそう‼それより・・・漿郗はどれくらい出来るようになった?」

「え?あー、う、うん、まぁー、それなりには・・・ね・・・。」

「うちの火の者から聞いてるけど抑えるところまでは出来たけどその後の火山灰の逃し方が少し甘いんだってね?」

「うん・・・。」

「じゃ、要練習ね。」

「はい・・・。」

「じゃ、無水ちゃん、風太くんそういう事だから送ってくれてありがとね。」

「は、はい!」

「じゃ、俺たち帰りますんで失礼します。」

「はーい、じゃあねー。」

そうして俺と無水は帰路に戻った。


~~~~~


「漿郗これからたっぷりおばさんと修行するんだろうなぁ。」

「まぁうちのところも似たようなものだがな。」

「・・・親父さんか笑。」

「ああ笑。おまえはいいよな。須羽さんだから優しくて。」

「まぁ・・・母さんとか父さんよりは優しいな。」

「親に教えてもらうのって・・・色々複雑だぞ?」

「やっぱりそうなのか・・・俺ももし母さんとかに教わったらって想像したけどなんかモヤモヤするよな。」

「だろ?」

そうこう話をしているうちに俺たちは無水の家に着いた。

「着いたぞ無水。」

「おう。親父ー、帰ったー。」

「おう帰ったか。早いな・・・ん?風太くんじゃないか!そうか風太くんが送ってくれたのか‼」

「はい。実際に使った方が上達が早くなると須羽さんにも言われてるので。」

「須羽君か。修行、順調そうだね。良かった。」

「ご心配ありがとうございます。じゃ、俺帰るんで、これで失礼します。」

「ああ、気をつけて帰るといいよ。」

「はい。じゃあな無水。」

「おう。じゃあな。」

無水を送った後俺はそのまま飛んで家まで帰宅した。


~~~~~


「ただいまー。」

「あれ?あんた京一のところに行くんじゃなかったの?」

「えーっと・・・少し休んでから行くよ。今日は漿郗と無水送ったし。」

「ふーん・・・じゃあ休んだらすぐ行きなよ。向こうは時間つくってくれてるんだから。」

「分かってる。それより父さんは?」

「あー仕事よ。夕方には終わるらしいから夕食までには帰ってくるわよ。」

「そっか。また地震?」

「の事後処理。地慣らしをしないと。また地震起きちゃうから。」

「そっか。じゃあ寝るわ。」

「はいはい。」

俺は少し寝た後須羽さんのうちに向かった。


~~~~~


「お、来たな風太。待ってたぞー。」

「お待たせ須羽さん。今日は漿郗と無水送って疲れちゃってすこし寝てからきたよ。」

「そうか!で、どうだった?ちゃんと送れたか?」

「はい。もう風送りは完璧です。」

「なら次はそろそろ風流しをやってみるか。」

「風流し?何ですか?それは?」

「風で空にある雲を流すことだ。これは火山灰とか噴火した時の岩石を街中に落とさないようにする時に使う。」

「出来ますかね?俺。」

「ちゃんと練習すればな。風流しが出来るようになったら風壁も出来るようになる。」

「風壁?」

「風壁はまだ考えなくていい。まずは風流しだな。」

「りょーかいっす。」

俺は風の修行を開始した。


~~~~~


翌日学校に行く支度をしている時電話が鳴った。

「(風太ー?もう起きてる?)」

「(起きてるよー。何だよ朝から。)」

「(・・・うちまで来てくれない?)」

「(うちまでって・・・お前まだ家なのか⁉)」

「(そうよ‼だから迎えに来てくれない?もう電車に乗ってたら間に合わないからさ。)」

「(・・・嫌だ。)」

「(お願い!なんか奢るから‼)」

「(・・・じゃあ昼飯奢れよ。)」

「(ありがたや〜。じゃ、お願いねー。)」

「(はいはい。)ったく・・・めんどくせーな・・・。」

俺は漿郗の家へと飛ぶ方向を変えた。


~~~~~


「いや〜本当、メンゴメンゴ〜♪助かるわー‼」

「全く、相変わらず朝弱いなお前。」

「いや、今日寝ちゃってね・・・。」

「YouTubeでも見てたんだろ?」

「まぁそんなとこ。」

「とりあえずもう行くぞ。」

「はーい。」

俺と漿郗は学校へと向かった。


~~~~~


「ねぇー‼無水は今何処にいるかなー?」

「電車に乗ってるだろー!」

「ちょっと電話してみないー?」

「しても出ないだろー。あいつ多分マナーモードにしてるぞー。」

「そういうとこあるよねー‼あいつー!」

「なんか律儀だよなー‼ってか着いたぞー。」

 俺と漿郗は学校の真上まで風の力で着いた。

「やっぱ風は早いね!じゃあ降りようよ。」

「いやちょっとまて。屋上に誰かいる!」

「は?マジめんどくさいんだけど。どうする?風太。」

「しゃーないけど昨日の神社に移動だな・・・。」

「はぁ・・・結局、歩かなきゃいけないのか・・・。」

俺たちは昨日飛び立った神社に降りることにした。


~~~~~


そして俺たちは結局歩いて学校に行くことになった。

「ふぅ・・・やっと着いた・・・。」

「本当。ちょー疲れた・・・。」

「お前は別に疲れないだろ笑。俺は朝から人を運んだからあれだけど。」

「いや空飛ぶってなんかどっと疲れるよ?あんたは毎日飛んでるから分からないだろうけど。」

「そ、そうなのか。」

「お前ら珍しいな。一緒にいるなんて。」

「無水。おはよ・・・。」

「・・・何でお前らそんなに疲れてるんだ?」

「「空飛んだから。」」

「そうか。って漿郗も?何でだ?」

「こいつ寝坊したんだ。それで昼飯を奢るってことで送ってやったんだ。」

「げ、覚えてたの⁉」

「当たり前だろ?今日は午前授業だから天丼でも奢ってもらおうかな?」

「は?いくらすんのよ?」

「大丈夫だ。760円の野菜天丼にするから笑」

「それでも高いわよ‼」

「まぁガソリン代だと思えばいいだろ。」

「俺は車かよ‼」

「あーあ。燃費の悪い車だこと。」

「・・・セットにするぞ?」

「わ、分かったわよ!奢るからセットだけは勘弁して‼」

「笑。」

そうして会話しながら俺たちはそれぞれの教室へと向かった。


~~~~~


午前の授業も終わり俺たちは昼の天丼を漿郗に奢ってもらう為定食屋に向かおうとしていた時携帯が鳴った。

「(風太?あんた今どこにいる?)」

「(え?今?まだ学校だけど?)」

「?、風太誰から電話だ?」

「母ちゃんだよ。」

「(近くに漿郗ちゃんいる?)」

「(いるよ。なんかあったの?)」

「(今、御嶽山が噴火したのよ。だからアンタ漿郗ちゃん連れて華季ちゃんのところまで今から飛んできなさい。)」

「(わ、分かった。でも無水も一緒なんだけど?)」

「(無水くんもいるの?)」

「(ああ。だから流石に置いてくのは気が引けるんだけど・・・。)」

「(じゃあ・・・無水くんには学校の門の前で待っておくように言っといてくれる?あとで京一に風使いを送らせるから。)」

「(了解。)」

「(じゃ、毘之家集合ね。)」

「(はいよー。)」

「どうだったの?風太?」

「漿郗。仕事だってよ。御嶽山が噴火したから今からお前のうちに飛んで行かなきゃいけない。」

「そっか〜ガンバ笑。」

「・・・お前も一緒なんだぞ?」

「は?マジで⁉」

「マジで。だから悪いけど無水学校のほうに戻ってくれないか?うちの母さんが風使いの人を学校に向かわせてくれるらしいから校門の前で待ってろってさ。」

「・・・まぁ早く帰れるからそっちのほうがいいか。」

「悪いな。」

「いや別に・・・仕事頑張れよ。」

「おう。」

「じゃ、漿郗行くぞ‼」

「はいはい!」

俺と漿郗は風の力で毘之家へと向かった。


~~~~~


「よし!着いたな。」

「空飛ぶのマジ疲れんだけど・・・。」

「まぁ回数重ねれば慣れるわよ笑。」

「母さんも来てたの⁉」

「京一に送ってもらったのよ。」

「須羽さんに?」

「そうよ?そこにいるでしょ?」

「ハァハァ・・・風太と・・・漿郗か・・・。」

「(母さん、また無茶させたな・・・)大丈夫?須羽さん。」

「まぁ少し休めばな・・・無水を速攻で送った後だったから、ちょっと疲れただけだ。」

「雷姫さん、京一さんに無茶させ過ぎじゃないですか?」

「さっき華季ちゃんにも言われたのよね〜もうちょっと労ってあげたら?って。」

「本当だよ、姉さん汗。俺43だぜ?もう少し労ってもバチは当たらないだろ・・・?」

「まぁ・・・そこまで言うならそうするわ。」

「そうそうそれがいいって。それに雷姫ちゃんも少し落ち着いたほうが良いわよ〜♪お互いいい歳なんだし〜。」

「出来たらね〜じゃあ京一が落ち着くまで御嶽山の噴火の対処を考えましょうか。」

「そうね。まぁ今回はなるべく漿郗に止めてもらうわ。漿郗が止めてる間は京一と風太くんが風で火山灰が街に落ちないように防護壁をつくってもらえる?」

「了解です。」

「今は大丈夫なんですか?華季さん。」

「今は京一が前もって派遣した風使いが火山灰を噴火口に押し戻して応急処置してるから実質的に被害は出てないけど・・・なるべく早く行ってあげたいわね。」

「でも、私が止めきれなかったら?」

「その時は私の出番だわ。私が雲を呼んで大雨を降らせるから。」

「そう。それで雷姫ちゃんが雨を特に炎が強い場所に集中して降らせるから。」

「それで鎮火完了よ。漿郗ちゃんは失敗を気にせずに練習してね♪」

「ありがとう!雷姫さん‼私頑張る‼」

「じゃ、そろそろ行きましょうか。京一もう行ける?」

「もう大丈夫だ華季姉さん。確認してくれて助かるよ笑。」

「ん?何で?」

「姉さんは〝行くわよー!〟だからね笑。」

「きょ、京一‼余計なこと言うんじゃないよ汗。」

「・・・化けの皮が剥がれたね。母さん。」

「笑。じゃ、行きましょうか!漿郗は風太くんが運んでくれる?これも練習だから。」

「分かりました。」

こうして俺たちは御嶽山へと向かった。


~~~~~


「ここから暑くなってくるよなー。」

「え?何がですかー?」

「空気だよー。風太ー、風の防壁厚くしとけよー。」

「分かりましたー!」

「笑、なーんか意外としっかりしてんのねー。」

「汗。あ、当たり前だろー‼仕事なんだからー。」

「無駄話はそれくらいにしてそろそろ準備しなさーい!風太くーん!漿郗を噴火口まで送ってくれるー?その後は京一の指示に従ってくれたらいいからー!」

「了解でーす!」

「漿郗は噴火口着いたら私が教えるからー。」

「分かったー。」

「京一は言わなくても分かるわねー?」

「ああー‼姉さんを噴火口から少し離れたところで下ろせば良いんだろー?いつもやってることだろー?」

「そうそう!よろしくねー‼」

そうこう話をしているうちに御嶽山に着いた。

「京一さん!来ましたか‼」

「おう!悪いがお前たちもう少しだけ我慢してくれ‼」

「「「了解っす!」」」

「じゃ、各自作戦通りに‼」

「「「「了解‼」」」」

俺と須羽さんは華季さんと漿郗を噴火口に送った後母さんを少し離れたところに着地させ風で防護壁を作った。

「今、風はどの方角から吹いてる?」

「北東です!」

「なら南西に火山灰が行かないようにすれば良いんだな?」

「はい!」

「分かった‼お前たち!もう戻って良いぞ‼あとは俺と風太が代わりを受け持つ‼」

「了解です!」

「で、俺はどうすればいいですか?」

「風太は風壁をそんなに精密じゃなくて良いから大きく張ってくれ。風壁の精度より大きさを優先するんだ!俺は細かい取りこぼしを捌きながら、後ろで指示を出す‼いいな?」

「了解っす!」

俺は須羽さんの言われた通り風壁を張った。


~~~~~


「じゃあ漿郗。まず最初は噴火口の奥にあるマグマをなるべく鮮明に感知して。」

「・・・感知した。」

「そしたら、なるべく気持ちを静かに保ち続けて。マグマの熱さに引っ張られないように気をつけてね。」

「うん。(あれ?なんだろう・・・この下にあるでかい塊。)」

「(ん?何か火の密度が異常に高いわね・・・これは噴火の兆候だわ!まずい‼)雷姫ちゃん‼また噴火するわ!京一を呼んで‼」


~~~~~


「(ん?母さんが手を振ってる・・・)須羽さん!母さんが・・・。」

俺がそう言いかけた時空から雷が落ちてきた。

ピカッ!ドン‼

「(これは・・・姉さんの緊急事態の合図!)風太‼一旦ここを外していいから姉さんのところに行ってこい‼」

「分かりました!」

俺は急いで母さんの居る方向へ飛んで行った。


~~~~~


「母さん‼何があったの?」

「華季ちゃんが噴火を感知したの‼だからそれを京一に伝えて‼」

「分かった‼」

俺はすぐさま須羽さんのところに戻って状況を伝えた。


~~~~~


「姉さんなんだって?」

「噴火だそうです‼」

「・・・‼分かった‼風太は漿郗と華季姉さんを連れてなるべく離れてろ‼噴火は俺と姉さんで止める‼」

「分かりました!」

そう言われ俺は急いで華季さんと漿郗のいる火口付近に飛んで行った。


~~~~~


「母さん。噴火するってどういうこと?」

「あんたも感じたでしょ?下のでかい熱の塊を。それは噴火の兆候だから一旦離れるのよ。」

「離れるって・・・今からだと間に合わないじゃん!どうすんの⁉」

「大丈夫。そのために雷姫ちゃんに噴火を伝えたんだから。そろそろ京一か風太くんが迎えにきてくれるわよ。」

「何で分かるの?そんなこと。」

「さっき雷落ちたでしょ?あれは雷姫ちゃんと決めた緊急事態を表す合図なの。多分今京一が全力で動いてるから心配しなくて大丈夫よ。」

「華季さん!漿郗!迎えにきました!今から離れましょう‼」

俺は華季さんと漿郗を連れて噴火の影響が受けないであろうところまで離れて上空で待機した。

「母さんと須羽さんが噴火を止めるって言ってたけど・・・大丈夫かな・・・。」

「大丈夫よ。あの二人なら。」

「でも、たった二人だよ?」

「風神雷神に任せておきなさい。ほら・・・きたわよ・・・。」

華季さんが空を指差すと後ろから山をすっぽりと覆うほどの積乱雲が俺たちの方へと近づいてきた・・・。


~~~~~


「姉さん!待たせたな‼」

「も〜おっそいわよ〜京一!遅いからもう雲運び始めてんだけど?」

「悪い悪い汗。じゃ、始めますか‼」

「はいよ‼京一、噴火口真上まで上げてくれる?」

「了解‼」


~~~~~


「あぁここらへんでいいわ。じゃ、始めるからあんまり動かないでね♪」

「はいはい。」


~~~~~


「京一さんと雷姫さんが一気に空まで上がったね。」

「これから雷姫ちゃんが雷を落として火口の淵の岩を崩して落としつつ豪雨で噴火を抑えるのよ。」

「豪雨って・・・どれくらい降るんですか?」

「・・・ダム一杯分かな?」

「もう規模がデカ過ぎて想像がつかないんだけど・・・。」

遠目から見てもゲリラ豪雨とは比較にならない程の量の水と雷が御嶽山に注がれそして次第に噴火が始まったが豪雨の圧力で被害を出さずに収まった。


~~~~~


「お疲れ〜。」

「相変わらず凄いな。姉さん。」

「お疲れ〜二人とも。」

「それにしても練習初回に噴火とは災難だったな。漿郗。」

「本当ですよ〜そのせいで全然練習にならないし。」

「最初はそんなものよ。まぁ街に被害がいかなかっただけでも上々よ。ひどい時は避難が必要だから。」

「そうなんですか?」

「そうよ。その時はみんな総出で時間稼ぎだけどねー。」

「あと被害を最小限に抑えることね。」

「にしても雷姫さんの力凄いですね‼」

「本当だよ母さん。あの積乱雲を見た時はゾッとしたよ。」

「雷神の名は伊達じゃないのよ!」

「じゃ、仕事はこれで終わりだからみんな帰りましょうか。・・・京一少し休む?」

「俺は大丈夫だ。それより風太は疲れたろ?大丈夫か?」

「確かに疲れましたが家に帰るくらいなら平気です。」

「なら行きましょうか。帰りは京一が私と漿郗を送ってくれる?」

「了解だ。華季姉さん。」

俺たちはそうしてそれぞれの家へと帰宅した。


~~~~~


俺と母さんは30分くらいで家に着いた。

「お帰り風太。今日は母さんと一緒か。」

「ただいまー。まあね。授業終わりに急に仕事が入ってね。」

「そうか。」

「ただいま砂一郎。今日は御嶽山噴火の仕事でねー。風太の他に京一と華季ちゃん、漿郗ちゃんも一緒にね。風太と漿郗ちゃんの練習も兼ねて行ったのよ。」

「で、どうだったんだ?」

「んーあんまり練習にはならなかったかな。すぐに噴火しちゃったし笑。」

「そうか。漿郗ちゃんも残念がってただろう。」

「まあねん。それより今から夕飯作るから少し待っててくれる?」

「いや、その必要はない。今日は早めに帰ってこれたからな。肉じゃがと味噌汁。それにサンマを焼いてある。風太。母さんの代わりに並べるの手伝ってくれるか?」

「分かったー。」

「悪いわねー。作ってもらって♪」

「いつも作ってもらっているからたまには・・・な。」

こうして俺たちは夕飯を食べて適当に過ごした。


~~~~~


「風太。明日午前時間あるか?」

「・・・あるけど、何で?」

「父さん明日仕事なんだが手伝ってみないか?」

「・・・仕事内容は?」

「ダムの決壊の修復だ。今日雪正が連絡を受けたんだが夕食を作った後だったんで本格的な修復は明日に回したんだ。」

「そうなんだ。手伝うよ。」

「そうか助かる。まぁといっても今回は基本送り迎えだけだからそんなに疲れることはない。」

「そうなのか・・・。」

「・・・実はな、明日無水くんも来るぞ?」

「そうなのか!」

「明日9時に檜河家に集合だそうだ。」

「了解!」

そんなこんなで俺は翌日ダムの決壊修復に行くことが決定した。


~~~~~


「あれ?父さんは砂でいくの?」

「ああ。これから雪正のところに行くわけだが無水くんは風太が送ることになるだろう。」

「・・・雪正さんは誰が送るの?」

「父さんだ。なに心配するな。風太の風送りを信頼してないわけじゃない。雪正は・・・風送りが苦手なんだ。」

「そうなの⁉」

「今の風太たちより少し大人の頃に京一くんの風送りを体験してな。その時に浮いてる感覚が気持ち悪いといって以来、運び役は俺のような砂使いになったんだ。」

「成程・・・。」

「・・・雪正には言うなよ?」

「う、うん・・・。」

そんな話をしながら俺と父さんは無水の家に向かった。


~~~~~


「雪正。着いたぞ。」

「ああ砂一郎。相変わらず時間ぴったりだな。風太くん。今日は無水共々よろしくな。」

「は、はい!こちらこそよろしくお願いします。」

「無水ー‼準備出来たかー?」

「出来てるー‼今行くー‼」

「悪いな。今無水が来るから少し待っててもらえるかな?」

「心配ない。急ぐほどの案件でもないしな。」

「それもそうだな。」

「悪い親父。待たせた。」

「気にするな。別に急かしたわけじゃない。」

「無水くん。今日はよろしくな。」

「砂一郎さん。よろしくお願いします。」

「じゃ、作戦会議を始めますか!」

「とりあえずダムまでは雪正は俺が送る。無水くんは風太に送ってもらう。」

「はい。」

「で、ダムってどこのダムなの?」

「黒部ダムだ。」

「黒部ダム⁉富山じゃん‼」

「何か問題でもあるか?」

「いや、修学旅行で行ったことがあるから少しビックリしただけ汗。」

「成程な笑。じゃ、話を続けるぞ?ダムに着いたら雪正に水の流れを止めてもらう。その後無水くんに決壊付近の水を凍らせてもらう。その辺はもう聞いてるかな?」

「はい、父から今の流れは聞いています。」

「助かるよ。それで風太はその時もしもの場合の連絡役を頼む。」

「・・・もしもの場合って?」

「更にダムの決壊が広がった場合とか水が流れ込む場合だな。その時は応援を呼ばなきゃいけないから移動スピードが一番早い風太が応援を呼びに行くことになる。覚悟しておけ?」

「お、おう・・・。」

「まぁ殆どないけどな。それでダムの水の流れを止めている間に職員に決壊部分を直してもらう・・・こんな流れだな。」

「何か質問はあるかい?2人とも。」

「・・・もしもの場合の応援って何処に呼びにいけば良いんですか?」

「その場合はうちにいる天雨に言ってくれれば応援を派遣してくれる。」

「よろしくね。風太くん?」

「よろしくお願いします!」

「姉さんは元気?」

「はい、元気ですね・・・汗。」

「笑。良かった。」

「他に質問はあるかな?」

「自分は大丈夫です。」

「俺はちょっと心配なことがあるんだけど・・・。」

「なんだ?無水。」

「ちゃんと凍らせられるかな?」

「大丈夫だ。全部の水を凍らせるわけじゃないんだ。出来るよ。心配するな。」

「・・・分かった。」

「それじゃそろそろ行こうか。黒部ダムの人を待たせてしまう。」

「そうだな。風太くん無水を頼むよ。」

「分かりました。」

こうして俺たちは黒部ダムへと向かった。


~~~~~


「お待たせしましたせきさん。決壊を止めに来ました。」

「おお!お待ちしておりました‼砂一郎さん、雪正さん!」

「本日は見習いの2人がおりますが仕事に支障はありませんのでよろしくお願いします。」

「城堂風太です。よろしくお願いします。」

「檜河無水です。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。話は聞いていますよ。お二人のご子息だとか。」

「ええそうなんですよ。これから来ることもあるかと思うのでその時はよろしくお願いします。」

「こちらこそ!」

「では早速作業に入らせてもらいます。」

「お願いします!」

俺たちはダムの決壊を止める作業に入った。


~~~~~


「風太!お前はダムの真上で対空しててくれるか?」

「分かった!」

俺は雪正さんをダムの水が見渡せる場所に降ろし同じくダムの見渡せる位置でホバリングした。

「雪正はまず水を止めてくれ。」

「了解だー‼全部止めたら風太くんを通して伝える。」

「分かった。無水くんは決壊付近で俺と砂で雪正が水を止めるまで待機だね。」

「了解です。」

父さんは無水と砂に乗りダムの決壊付近で待機していた。

「よし!水の流れは止まった!風太くん!砂一郎に伝えてくれ‼」

「了解です!」

俺は雪正さんの言ったことを父さんに伝える為ダムの決壊付近まで風の力を使い降りた。

「父さん‼止まったよー‼」

「分かった‼じゃあ無水くん。始めてくれ‼」

「分かりました。」

父さんがそう言うとダムの水が凍っていくのが分かった。

「風太くーん‼」

「雪正が呼んでる。風太。聞いてきてくれ!」

「了解!」

俺は再び風の力を使い雪正さんの居る場所まで飛び上がった。

「風太くん!無水に広範囲に凍らせ過ぎだから狭域に密に凍らせろと伝えてくれるかな?」

「分かりました!」

俺は風の力を使い父さんの居る場所まで降りた。

「雪正なんだって?」

「無水に〝広範囲に凍らせ過ぎだから狭域に密に凍らせろ〟だって。」

「分かった。」

「とりあえず雪正のところについててくれるか?」

「分かった。」 

俺はこうして何度も往復して意外と疲れることに気づいたが、しょうがないか。と思った。

「雪正さん。伝えてきました!」

「ありがとう風太くん。下の氷をよく見てごらん?段々水に戻ってるのが分かるかい?」

雪正さんの言った通り段々と氷の範囲が減っていくのが分かった。

「あまり広範囲に凍らせるとダムの生態系に影響を与えてしまうからね。出来るだけ影響は少ない方がいいんだ。」

「成程・・・だから狭域で密なんですね。」

「そう言うことだ。」


~~~~~


「どうだ?無水くん。うまく出来そうか?」

「狭域には出来ましたが密にするのはもう少しです。」

「そうか分かった。今のうちに風太にせきさんを呼んできてもらうか。」

雪正さんとダムの様子を見ていると後ろから何かが飛んできた。

「(⁉なんか当たった・・・砂?)」

「風太くん。砂一郎が呼んでるみたいだね。今は大丈夫だから行ってきていいよ。」

「分かりました。」

俺は風の力を使い父さんの居る場所まで降りた。

「どうしたの?父さん。」

「無水くんがそろそろ出来そうだからせきさんを呼んできてくれるか?」

「分かった。」

俺は雪正さんに下の状況を伝えた後ダムの職員であるせきさんを呼びに行った。

「呼んできたよ!父さん!」

「助かる。じゃ、せきさんを砂に。」

「・・・大丈夫ですか?」

「大丈夫です。砂に乗りましたよ!」

「よし、無水くん。そろそろ出来たか?」

「丁度出来ました。」

「そしたら風太は無水くんを連れて上に行ってくれ。無水くんはもう意識を外してもいい。」

「分かりました。」


~~~~~


「雪正さん。今、せきさんが決壊部分を直してます。」

「そうか。さっき砂が飛んできて少し前から意識を外してるんだが・・・問題なさそうだな。」

「・・・ふぅ疲れた。」

「お疲れさん。良かったな無水。」

「とりあえず成功はしたかな。」

「ああ。氷の部分もしっかり出来てるから今回はイレギュラーもなく成功かな。」

「じゃ俺、父さんを見てきます。」

「頼むよ。」

俺は風の力を使い父さんの所へと向かった。

「父さん。今どんな感じ?」

「それは・・・せきさんに聞いてくれ。」

「順調ですよ。あと5分もすればコンクリートもある程度固まります。」

「そしたら風太も少し休んでいいぞ?終わったら上に行くよ。」

「分かった。」

俺は無水の所へと向かった。

「砂一郎はどうだった?」

「せきさんによるとあと5分くらいで終わるそうです。」

「そうか。問題なく終わりそうだな。」

「問題が起きると・・・どうなるの?父さん。」

「・・・そうだな。一例を挙げると決壊を直してる間に更にダムが決壊する。そうすると下の町に水が流れ込むから水の流れを出来るだけ抑えながら流れた水をまた上に戻さなきゃいけない。応援が来るまでな。こうなったら無水の場合はもう一気に凍らせてもいい。非常事態だからな。」

「そうか・・・。」

「良かったな。無事に終わって。」

「雪正。終わったぞ。」

「砂一郎。首尾はどうだ?」

「問題ないな。初めてにしては上出来だってせきさんも行ってたよ。」

「そうか・・・流石我が息子‼」

「・・・恥ずかしいよ。父さん。」

「笑。じゃあ仕事も無事に終わったしもう少し休んだら各々の家に帰ろうか。」

「そうだな。」

俺たちはせきさんに挨拶をしたあと檜河家へと向かった。


~~~~~


「おーい、帰ったぞー。天雨。」

「あら、おかえりなさい。仕事は無事に終わったの?」

「無事に終わったし褒められたよ。」

「それなら良かったわ。今、京一も来てるから砂一郎さんと風太くんもどう?」

「・・・どうする?父さん。」

「雪正。いいか?」

「今日は遅くなっても平気だ。明日は非番だしな。どうせなら雷姫さんも呼んでそのまま夕飯も一緒にどうだ?」

「・・・なら、お言葉に甘えさせてもらおう。」

「姉さんは今日非番だって聞いてるからきっとすぐ来るわよ?笑」

「迎えに行くのはどうせ俺だろ?」

「それはそうでしょ。風太くんは仕事終わりなんだから。」

「へいへい。」

「じゃ、俺は風呂入っていい?」

「ああ。今日はもう外出ることもないし疲れただろう。入ってきなさい。」

「じゃ、私は姉さんに電話するわね♪」

「助かるよ天雨。じゃ、砂一郎と風太くんも無水が上がったら風呂に入っていいからそれまで居間でゆっくりしててくれ。」

「済まんな。」

「ありがとうございます。」

「いえいえ、こうして集まるのは久しぶりですからね。ゆっくりしてくださいね。」

天雨さんは母さんに電話をかけた。

「(もしもし?姉さん?天雨です。今時間ある?)」

「(天雨?どうしたの?)」

「(今、砂一郎さんと風太くんがウチにいるんだけど夜ご飯一緒にどうか誘ったの。)」

「(あー成程ね。京一に迎えにきてもらえるなら私はOKよ。)」

「(分かったわ。)京一!姉さんの家にお願いね♪」

「了解・・・。」

「(あと毘之家も行く予定になるからよろしくー。)」

「(・・・華季さんと約束したの?姉さん。)」

「(そうそう。今から電話するけど夕飯くらいに来る予定らしいからよろしくねー。)」

「(・・・分かりました。)雪正さんどうしましょう。華季さんのところも来るみたい・・・。」

「‼、雷姫さんか・・・まぁ大丈夫だろう笑。」

「まぁ夜ご飯辺りから来るらしいからお風呂は大丈夫だけど。」

「なら大丈夫だろう。無水と風太くん、漿郗ちゃんの初仕事祝いということで雷姫さんにも頑張ってもらおうか。」

「そうね。」

こうして俺たちは檜河家で初仕事のお祝いの準備を進めた。

この後新たな異能者と出会うことも知らずに・・・。

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