W杯アジア最終予選オマーン戦の選手、監督インタビューから見えるもの
先日サッカー日本代表のW杯アジア最終予選が行われました
地上波での放送だけではなくJリーグ公式映像を中継しているDAZNでの配信も行われるなど関心度が高まる中、オマーンとホームで対戦した日本代表は終盤に先制点を許し0-1の敗戦
アジア最終予選はもちろん簡単ではない中ですが、ホームで厳しい敗戦という結果になりました
今回は試合内容のレビューではなく、一部話題にも挙ったインタビューについてお伝えしたいと思います
元日本代表の内田篤人氏、戸田和幸氏のインタビュー
地上波の中継には内田篤人さん。そしてDAZNの中継には戸田和幸さんが解説を担当されました(ちなみにDAZNでは岩政大樹氏と中村憲剛氏による裏解説も非常に面白かったです)
敗戦後のインタビューは非常に難しい。過去Jリーグでもインタビューの経験はありますが、勝利チームよりも圧倒的に負けたチームへのインタビューが難しいと実感しています。それはインタビューをする側だけではなく、受ける側も言葉を選ぶ必要性があるからです
そうした中で、選手としの経験も長い内田氏と戸田氏両名のインタビューは普段のインタビューとは異なる視点が多くありました
実際にメディアの記事やSNSでも話題になる内容でした
個人的にここでお伝えしたいのは、内田氏・戸田氏共にそれぞれのキャリア(背景)だからこその質問であり、あくまでのこうしたインタビューの形もあるという事を印象付けたように思います
私は普段中継でご一緒するリポーターの皆さんはプロフェッショナルです。たくさんの準備をされ、試合を見て、いくつかある質問の中から最終的に絞りに絞ってその質問をぶつけます。その言葉選びや、表現は本当にプロフェッショナルだと思います
私も一人の視聴者として、内田氏と戸田氏の質問はこの2人だからできる質問であり、それ自体は非常に大きな価値であり差別化できるポイントです
ただ、だからといってすべてのインタビューをする人はそこに倣う必要はなく、むしろ倣うと全くもって伝わる印象が変わります
実際に文字お越しをしてみた文章を見てみましょう
インタビュー:内田篤人氏 対象:吉田麻也選手(59秒)約330文字
※本来削除する不要な文字もあえて今回は挿入しています
吉田:(深呼吸)
内田:えー吉田選手。お疲れ様です。 えー0-1という結果ですけど。どう感じてますか?
吉田:(1秒間沈黙。少し俯きながら)いや、もう負ける。負けるべくして負けたなと思います。
※内田さんが少しコメント挟もうとするもそのまま吉田選手はコメント
まぁテンポも良くなかったですし、あのーコンビネーションも良くなかったですし、まぁ全然良くなかったなと思います(目は右上の方向、髪の毛を触る場面も)
内田:えーまぁ結果としてはこうなりましたけども、次の戦いに向けてどういうところを変えていきたいですか?
吉田:いやまずはもっともっとインテンシティを上げなきゃいけないですし、まぁ思い切ってプレーしなきゃいけないですし、えー、まぁ次必ず勝ち点3取らなければいけない状況になったので、あのまずは、いいリカバリーをして、まぁ移動もあるので、いいリカバリーをして、あの、次に備えなければいけないなと思います(鼻を触る仕草、目線は色んな方向を見るも少しづつ定まる)
内田:えー、まぁ本来なら、あー結果がついてきてインタビューしたいんで次は是非、勝ってください。以上です
吉田:まぁあのー・・(内田氏の「以上です」と少しかぶったタイミングで。鼻を触る仕草も)はい。頑張ります。
内田:はい。以上です。ありがとうございます。
いかがでしょうか?こうして文章で見ると、内田氏の質問のトーンの印象が変わるかもしれませんが、これはある意味二人の間柄だからこその内容なのかもしれません。これ自体は大きな武器であり、その点を大いに生かしつつ自然体でのインタビューだったようにも思います
続いて、長友選手へのインタビューも見ていきましょう
インタビュー:内田篤人氏 対象:長友佑都選手(インタビュー時間57秒)約350文字
※本来削除する不要な文字もあえて今回は挿入しています
内田:お疲れ様です。
長友:お疲れっす。(目を合わせる。髪の毛を触る)
内田:えーなかなかうまくいかない時間帯、まぁ結果もそうなんですけど、多かったと思います。えーゲームしている選手たち、中ではどのように考えてたんでしょうか?
長友:まぁ相手があのー、引いて守ってきてたんで、なかなか前半から相手のブロックを崩すことができなかったんで、まぁそれをなかなか後半も修正しきれずに、まぁ1失点。あのやられて負けてしまったんで、まぁ有り得ない敗戦かなと思います。(目線上下、左下を少し見る傾向)
内田:えー、まぁこういうね。結果、いままであったと思います。えー次どのように切り替えて、えー次の試合に向かいますか?(長友選手うなずく)
長友:(2秒沈黙)まぁメンタル的にもしっかり切り替えて、んで今日また(2秒沈黙)まぁ課題も見えたと思うんで、しっかり修正して次は絶対、勝ち点3を取りに行きます(体の動く癖あり。目線は上下傾向)
内田:ありがとうございます。
長友:ありがとうございます。
内田:もう一度W杯で。
長友:うす。
内田:頑張ってください。
いかがでしたでしょうか?敗戦後ということもあり、吉田選手も、長友選手も非常に言葉を慎重に選んでいる印象ではありました。その中で、声のトーンやスピードを聴くと、その選手がどのような心理状況で話をしているのかも推察できます
また、1文の長さなども文字にするといつもはもっとシンプルに話せている内容も長くなってしまう傾向にあるかもしれません
では内田氏の最後のインタビューになる柴崎選手への内容も見ていきます
インタビュー:内田篤人氏 対象:柴崎岳選手(62秒 450文字程度)
内田:えー相手がね。引いてくるのが予想された中で日本のチームとしてはどのような準備をしてきましたか?
柴崎:まぁ中央を固めてくるのは、あのー事前の情報でもあったのでまぁサイドからしっかり崩しにいけるようにで、まぁクロスの質のところがね、あんまり上がらず、んー中で準備している選手に合わなかったりとか、えーまぁコンビネーションで崩しに行くところで簡単なミスがあってカウンターをくらったりとか。そういのがあったのでまぁ非常の難しいゲームになったなと、特に後半は思います。(目線はほぼ一定。少し体動くくらい)
内田:えーまぁ攻撃の幅だったり、強弱っていうのを付けれる選手だと思ってるんで、えー次はどのようなポイントを生かして、えー次の試合に進みたいですか?
柴崎:そうですね。あの今日は、まぁ特に後半はそこまでボールタッチ数が、あのー自分自身多くなく、まぁチームにこう、まぁ特に攻撃面で、あのー方向性を示せなかったのかなという風に思いますんで。まぁしっかりと自分が舵をとって、あのーチームの方向性を、もうちょっとこうメリハリをつけていけるようにしたいなと思います。
内田:以上です。ありがとうございます。
個人的には非常にクレバーで落ち着いた状況で柴崎選手が受け答えしていたいように感じました。一文はやや長くはなっているものの、はっきりと目線や体を多く動かす事なく話をされていました
では、最後に戸田氏の森保監督に向けてのインタビューも見ていきましょう
インタビュー:戸田和幸氏 対象:森保一監督(1分47秒 750文字程度)
戸田:あ、日本代表の森保監督にインタビューします。お疲れ様でした
森保:お疲れ様でした(マスクでやや小声?)
戸田:えーまぁホームでの最初の試合。まぁ難しい試合になる。どんな時もそういう意味ではW杯の最初の、最初への試合は難しい試合になると思うんですけども。まぁ結果のみならずそのパフォーマンスの内容のところでまぁ想定外もしくはうまくいかなかった部分どんなところ、感じられてますか?
森保:そうですね。あのー想定外というよりかは・・(マイクと音声の関係で正確に聞き取れず。主導権についての話に言及)でー彼らがしっかり準備してきている中で、そう簡単な試合にはならないだろうなっていうところで、えー非常に難しい試合で結果にもつながってしまった
戸田:あのボールを持つ時間はたくさんあったと思うんですけども、まぁ相手がうまく中央を中心にスペースを消した時に、うまくこう入り込めない時間が、後半の半ばくらいまで続いたと思うんですけども、ハーフタイムの中でどういった攻撃の修正の指示を出されましたか?
森保:おっしゃるとおりですね。あのー中央をしっかり相手が固めてきて、えーカウンターとういう形で。えー前半からサイドに起点はできてましたが、その後あのーフィニッシュまで繋げるという攻撃ができなかったので、サイドハー、えーサイドバックとかサイドの起点と、えっと中央の選手たちの、えー距離感を良くするということは、あのーベンチで話しました、あのーベンチでというか、あのロッカーで話しました
戸田:次の試合は、あの勝ち点3が必要になると思いますけども、次に向けてのコメントを最後にお願いします
森保:おっしゃる通りです。あのーまぁ本当に悔しい敗戦になってしまいましたが、えーワールドカップに向けてえー次の試合、勝ち点3がとれるように、えー最善の準備をしていきたいと思います。
戸田:ありがとうございました
森保:ありがとうございました
という内容でした。個人的な印象としてですが、話す姿勢という点(内容面ではなく)では森保監督は非常にインタビュー慣れをしており落ち着いている印象でした。視線はインタビューの方に向けて、そして不要な動きもほとんどない。考える時の目線は変化するも違和感を感じるレベルではない。そうした点でみると敗戦後のインタビューの中でも冷静かつ紳士的な対応のように感じました
インタビューをする側、受ける側について
今回のインタビューを聴いていて大きく特徴的に感じたのは、「何のプロフェッショナルか?」という点でした
話した言葉を詳細に文字に起こすと、インタビューをする側も、される側も「話す」という点では課題も見えてきます
もちろん、内田氏や戸田氏ならでも切り口の質問は本当に価値だと思いますし、これは2人だからできる質問なのでその点に対する評価は変わりません
一方で、普段中継でご一緒するインタビューに関わる皆さんはシンプルな質問をして、相手の話を引き出すことを意識されているように思います
不要な言葉も、説明も多くない。上手いリポーターの方ほどその点が徹底されているように感じます
どちらが正しいというものではなく、役割が違うという部分が個人的に感じる部分です
同時に、受け答えが上手いスポーツ選手は非常に目立ちます。言葉には力があるように、その人の言葉の振る舞いで印象が変わるくらい大きな力を備えています
だからこそ、個人的にはどのカテゴリーの選手でも言葉の立ち振る舞いについて自身で研究し、いざその状況が来た際に高いパフォーマンスを発揮できるように準備しておく必要があると思います
スポーツ選手がその自身の役割で最大のパフォーマンスを発揮する事に心血を注ぐことは当然だと思います。一方で、違う視点にも目を向けて、自身の発する言葉に影響力が高い事を理解し、その言葉に対してもトレーニングを積むことは、人生において大きな意味を持つと私自身は思います
次は9月7日の中国戦。タフな日程が続きますが、次は勝ち点3を得てくれることを期待して楽しみにしたいと思います
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