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川底をさらえ

「もっと川底さらえばええのにな~。」

先日の大型台風の被害状況について会話していたときに、仕事で関わりのある人が発した言葉だ。
その人は70歳になる人生の先輩で、ずっと土木関係の仕事をしてきた人である。

「テレビ見てても、堤防をどうすべきかみたいなことばかり言ってるんよ。」

なるほど、俺もそう思う。
河川の浚渫(しゅんせつ : 水底をさらって土砂などを取り除くこと)工事を俺は今までに生きてきて直に見たことがない。
船が出入りするような港湾とかでは浚渫船だのをちょいちょい見るのだが、川については見たことがないのだ。
やってないことはないのだろうけど、ひょっとしたら浚渫の回数とかが少ないんでないの?

俺がどうして浚渫をもっとした方がいいと思うのかを説明したい。

それは、川底は年々高くなるからである。

川は上流から下流に流れる。当たり前だ。
で、流れてくるものは水だけではない。土砂も流れてくる。その土砂が年々堆積していくから川底は高くなるのだ。

天井川って言葉を聞いたことがあると思う。
因みに、天の川でない。キラキラ輝く夜空の星の天の川ではなくて「天井川」だ。
川底が周囲の土地よりも高くなってしまった川のことだ。
天井川が出来るしくみをざっくり簡単に言うと以下の通りだ。
「①土砂が運ばれ川底上がる」→「②川底が上がり過ぎなので堤防高くする」→「①土砂が運ばれ川底上がる」→「②川底が上がり過ぎなので堤防高くする」→「①②のサイクルが繰り返される」→「結果、川の周囲の土地より川底高くなる(天井川)」
つまり、堆積する土砂と堤防の継ぎ足しとの「いたちごっこ」の結果が天井川である。

大丈夫だろうか?
俺は日本のあちこちの川が天井川のようにならないか心配なのだ。それが杞憂だとしてもだ、もっと浚渫しないと川の容積は減る一方じゃね?と思うのだ。
ここ数年、大雨や台風による被害が相次いでいる。
堤防のような河川護岸をより強固にしていくことは勿論大事だ。堰堤を各所へ築くことも勿論大事だ。
でももっと浚渫は?と思ってしまうのだ。
大雨にも耐えられるように川底さらって川の容積を増やそうぜと思うのだが。
見えないところなので仕方ないのだけれど、我々は川底に対する意識が少な過ぎるような気がするのだ。

おそらくは計画的に河川の浚渫工事も実施はされているのだろう。俺の知らんところで。

或いは、河川の浚渫工事が出来ない理由があるのかも知れない。

例えば、浚渫することで河川の容積が増えた分、海水が逆流してきて河川に入り込んでしまい生態系を壊したり、田んぼで使う用水に海水が入ってしまったりするのでマズいとか。
でも上流から常に水が流れてくるわけだから一気に海水が入り込んでくるとかは考え難いのだ。そりゃ河口付近ならばごっちゃ混ぜだろう。海水と淡水の比重は異なるわけだし、海水は満ち引きあるしで。それでも、浚渫工事で河川に海水引っ張り込むとかあるのだろうか。勿論、浚渫工事の規模や川の水量にもよるとは思うけど。

又は、予算がないとか。
でも一級河川の管理者は国だ。流石にどうにかなるだろうと思う。治水は国の大事な仕事のはずである。浚渫する予算くらいあるだろう。
二級河川の管理者は都道府県である。ゼニのない市町村なら予算がないみたいなこともあるかも知れないが、都道府県ならどうにかなりそうな気がする。てか、どうにかするべき。
そう考えると、浚渫しないのは土建業者との利権などが絡んでいるからでないのと疑いたくなってしまう。浚渫より堤防の方が儲かるからみたいな。その辺り実際のところは謎なんだけれども。
でも、浚渫をする業者がない(少ない)という可能性はある。
もし、河川の浚渫という公共事業が少なかった場合、そんなものに設備投資する会社はないわけで。河川の浚渫が、たいして仕事がない儲からないものであったならば、浚渫する設備を持っていても無駄なだけだからだ。

浚渫が出来ない理由があるのかどうかは分からない。
また、俺の知らんところで河川の浚渫工事が実施されているのかも知れない。
そして、それが適切に行われているのならいい。
でも、もし足りてないとかだった場合、もっと議論し早急に対応していくべきだろう。てか、きっと専門家は議論しているのだろうが、なかなか我々一般庶民にまでは落とし込まれてはいない。
なので、行政なんかもその辺りの意識が低い可能性がある。

ここ数年の大雨や台風による水害は色々と想定外なのであろう。ということは、河川の浚渫が足りていない可能性もあるのだ。
堤防のような河川護岸は目に付き易い。でも川底は目に付き難い。浚渫?何それ?みたいな人も多いのではなかろうか。
俺はこの国の防災の為に、堤防のような河川護岸工事と同時に河川の浚渫工事も望む。謝った考えならばご指摘頂きたい。むしろ俺の杞憂である方が良いのだ。
でも、川底をさらうことは、今後の防災を考えるとどうしても必要なのではないかと思うのだ。

被害があった地域の1日でも早い復興を願う。

ええっ! ホント〜ですか。 非常〜に嬉しいです。