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アカデミー賞は 怒濤のタイムラインも興奮に満ちていた

昨日の90回アカデミー賞発表で、ソーシャルメディアに流れるコンテンツがちょっと興味深かったので、書いてみました。

アカデミー賞のWebサイトは、公式サイトと別に、テレビ中継を担当するABC Newsのライブストリーミングがあったんですが、VPNやTor経由でも、当然、日本からは簡単にはアクセスできそうにありませんでした(日本はWOWOWのみの独占中継で、アカウントを持つ契約者のみがオンラインでも同時通訳入りで視聴可能でした)。そこで、主要な関連ソーシャルメディアのうち、TwitterとInstagram、Facebook、YouTubeの各チャンネルをチェックしてみることにしました(もちろん、あくまで仕事の参考としてです)。

https://www.oscars.org/news/tag/2018-oscars
http://oscar.go.com

本家The Academyは、公式サイトとしてのアーカイブの機能を担っているようでした。Twitterでは、静止画のテンプレートに入った各賞の発表の間に、レッドカーペットやバックステージの様子、クイズなどをこまめに挟んでいたのが印象的でした。セレモニー終了後は、オフィシャルなビデオが整然と公開されています。

一方、ABC Newsはまさに怒濤の更新でした。
主演女優賞を獲得した、Frances McDormandの受賞スピーチの例でみてみると、Twitterでは、日本時間で3月5日(月)13:38に、一旦は16:9の横長比率のまま、42秒のスピーチハイライトをツイートしていました。ビデオにテロップは無し。ツイートには、彼女の発言が入っていて、テレビの生中継から遅れることほんのわずかで「撮って出し」だったはずです。いつものように、視聴者は皆さんはライブで見ながら、声援を送ったりツッコミを入れていたわけです。

その10分後の13:48、Instagramでは、尺が少し長い61秒のビデオにテロップとハッシュタグ #Oscars をのせて、スクエアのトリミングでビデオが投稿されました。同じビデオはTwitterとFacebookにも流用されていて、テキストは文字数が280文字に制限されているTwitterのみ若干変わっていましたが、ハッシュタグは共通で #Oscars だけでした。

つまり、一旦、速報としてソースからほぼトリミングしたままの短いビデオをTwitterで流しておいて、その間に、どこを切り出すか改めて判断し、画角調整とテロップ、ロゴを加え、テキストを書き起こし、もちろんエラーチェックも通して、10分後にはTwitterとInstagram/Facebook複数のチャンネルに再放出していたわけです。同じ規模は無理にしても、ライブイベントの中継の時にはこういう流れを意識して、予め仕込めることは仕込んだり、逆算して準備するのが効果的かもしれません。いずれは(またはすでに一部は)AIに置き換わる編集・制作だろうとはいえ、今しばらくは人と機材、システムが欠かせませんが。
とにかく、ライブイベントの緊張感が伝わるリズムには、うっかり涙しそうになるほどでした。各受賞者のそれなりに饒舌なのだろう各スピーチ全体から、視聴者の心を揺さぶるキメの部分が実に鮮やかに短くクリップされ、文字情報としても訴えるテロップが乗り、テンポよく立て続けに流れていました。他にも、写真やGIFアニメ、グラフィックス、などさまざま見せ方が混在していました。


このThe AcademyとABC Newsを起点として、Rolling Stone、The New Yorker、Vanity Fair、Viceなどのメディア、映画データベースのIMDb、Pixarなどの制作や配給会社、各俳優や監督、スタッフの個人チャンネルや所属組織が入り乱れていました。賞が発表された直後は、わずが数秒で1,000単位の[いいね!]やリツイートが増えていくほどでした。
でき上がってしまったパッケージコンテンツとしての映画をテーマにした、何が起こるか分からないリアルタイムのライブならではの、それでいて一定のクオリティーが保たれていた、求心力と熱量、興奮を体験した瞬間でした。

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