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【0026】えむしたのこと「どこまでも一緒に行ける」

 浅い眠りはいくつもの過去をないまぜにして、まるで新しい記憶を植えつけるみたいに、わたしの夢を支配した。ああ、これは夢だ、と気づいているのに、わたしはその先の展開を期待して身をゆだねる。
 あなた、それ常盤色化よね。
 炎天下にも関わらず、わたしはオフショルダーのトップスにロングスカート、いまはもう履かなくなった厚底のサンダルで歩いていた。露わになった肩には、確かに常盤色化の模様が蔦を伸ばしていた。

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ルームシェアをしながら、歌い手活動をしている「明日」と「えむち」。明日の部屋の一輪挿しが枯れ、花瓶の水が澱みはじめた頃、えむちはようやく今回の失踪が普段の気まぐれとはどこか違うのではないかと察する。不安は的中しており、明日の体には常盤色化と呼ばれる異変が生じはじめていた。植物の蔦を模したようなしみが皮膚に広がり、やがて全身を覆ってしまう奇病。一方、えむちはある事件をきっかけに人前で歌うことができなくなっていた。移り変わってゆく、彼女たちの季節を追う物語。

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