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【翻訳ウラ話vol.1】秋というのは、冬にとっての春である

2021年9月に出版された本『feel FRANCE 100〜言葉と写真で感じるフランスの暮らしとスタイル〜』で100の言葉の翻訳を担当させていただいた。

フランスの偉人の名言やことわざをよりわかりやすく訳すのが私の仕事。

無事に本が出版されたので、本の中に登場する言葉について訳しながら感じたことやちょっとしたウラ話をシリーズで書いていこうと思う。

第1回目は「秋というのは、冬にとっての春である」という名言について。


ロートレックの名言の意味

L'automne est le printemps de l'hiver.
秋というのは、冬にとっての春である。

読んだ瞬間、なんとなく素敵な言葉だなと感じた。

これは19世紀末のフランスの画家トゥールーズ・ロートレックの名言である。ロートレックはムーランルージュの踊り子たちを描いた作品が有名だ。

私は、この原文に忠実に、ほぼ直訳に近い訳をつけた。意訳してしまうと、フランス語がわからない人にとっては面白味がないと思ったからだ。
この言葉の深さを知るには直訳のほうが伝わりやすい。

なぜ春ではなく秋なのだろう?

どうして「春というのは、夏にとっての秋である」ではなく、秋を主題にしたのか。
私なりに考えてみると・・・

夏の暑さは厳しい。でも夏はバカンスの季節ということもあり、開放的な気分になれる。だから春の終わりが近づいても、心と体は温かいまま。
その一方で、厳しい冬の寒さは体も心も冷えていくような気分になる。けれども、これから厳しい季節を迎える前の秋が「冬にとっての春」だと思えば、体も心も暖まるような気持ちになってくるのではないだろうか。

言葉は人によって捉え方が違う。なので、これはあくまでも私の解釈。ぜひ言葉の意味を自分なりに想像してみてほしい。

厳しい季節の前にあるもの

『feel FRANCE 100』の中では、カッコでこのような注釈を入れている。

秋というのは、冬にとっての春である
(厳しい季節の前には穏やかな季節がある)

訳を読んでも、ピンとこなかった人へのヒントになればという私のお節介だ。

寒さの厳しい冬を迎える前に、ロートレックの言葉を思い出しながら穏やかな秋を感じてみては?

名言やことわざには抽象的な表現が多い。そこを読み解いていくのがこの本の楽しさでもある。

写真提供:天馬さん


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