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94 「トップガン・マーベリック」に見る究極の状況判断プロセス

本noteは連載形式です。全部で約100回の予定となります。過去の記事をご覧になるには、想定外を克服する『究極の状況判断力』の以下のマガジンをご参照下さい。

想定外を克服する「究極の状況判断力」(導入編) 1~25
想定外を克服する「究極の状況判断力」(基礎編)26~40
想定外を克服する「究極の状況判断力」(実践編)41~81(有料)
想定外を克服する「究極の状況判断力」(行動編)82~(有料)

想定外を克服する「究極の状況判断」も、いよいよ最終章となります。行動編では、実践編で説明した詳細なロジックをいかに活用していくかについてお伝えします。行動に移すためにカギとなるポイント、実際の使い方をご案内しつつ、あなたが抱える課題を解決するためのメッセージをお送り致します。

【 実際にどう使うのか 】

94 「トップガン・マーベリック」に見る究極の状況判断プロセス

映画「トップガン・マーベリック」は、非常にテンポの良いストーリー展開で私たちを楽しませてくれる。実は、そのストーリー全体を通じて「究極の状況判断プロセス」を見て取ることができる。組織又はチームレベルでの究極の状況判断プロセス活用術として参考になるので、以下に解説する。

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サイクロンことシンプソン司令官とマーベリックが最初に作戦計画を練る場面では、最初に司令官とマーベリックの間で①ミッションの確認が行われた。ミッションは「ウラン濃縮プラントの破壊」であり、続いて、敵は強力な防空網を敷いている状況が説明された(②状況の分析・提示)ともに、司令官はプラントを稼働前に破壊することを明示した(③インテンションの確立)。

その後、マーベリックは敵の地対空ミサイル、GPS妨害や第5世代戦闘機の状況を踏まえた敵の可能行動を分析(④情報見積りの提示)するとともに、鋭い情報処理能力と総合判断力を発揮し、FAー18×4機でのレーザー精密誘導兵器による攻撃が最適な行動方針あると司令官に提示した(⑤行動方針の列挙と整理⑥ロジスティクス見積りの提示⑦行動方針の分析・検討)。

ところが、敵はウラン濃縮プラントの稼働時期を早め、我が方の準備期間が短縮されてしまった。この敵情の変化を踏まえ、シンプソン司令官は目標到達までの時間的制約や攻撃着手の速度・高度が緩和された実行可能性の高い行動方針を採用することとした(④情報見積りの提示の更新→⑧行動方針の判決)。

アイスマンの死去も相まって、全員を帰還させる事を重要な評価基準とするマーベリックはチームから外されたが、マーベリックが型破りに凄腕を発揮してミッションは可能だと証明した。その為、シンプソン司令官は再び元の行動方針を採用するとともに、マーベリックをフライトリーダーに選定した(⑦行動方針の分析・検討を更新→⑧行動方針の判決と補備的検討)。

いざ戦闘を開始する場面では、採用された行動方針に従い全員が準備を整え、司令官の発艦命令を待つ。空母指揮所のスタッフが最後に「Standing by the launching Decision(発艦決心まで待機)」と司令官に伝えると、彼は直ちに「Send」とリーダーの決心を伝え、4機のFAー18が発艦して行った。

マーベリックが搭乗するFAー18が地対空ミサイルによって撃墜された際、その後の戦闘拡大に伴う人員の更なる損耗を防ぐ為、司令官は全員に空母への帰投を命じた。これは、ミッションを基礎とした判断であり、戦闘拡大リスク(人員損耗を含む)よりもミッション達成が重要であるという認識に基づくものであった。

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映画のストーリーはエンターテイメント性を膨らませるように作られているものの、基本的には軍隊が行う行動方針(COA:Course Of Action)の決定から実行に至る流れがプロフェッショナルに描かれている。そのリアリティは聴衆に強く響いたい違いなく、「究極の状況判断プロセス」を理解する方々は「トップガン・マーベリック」をより深く楽しむことができると確信している。

>次回:個人としての使い方(その1)
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マガジン:
想定外を克服する「究極の状況判断力」(導入編) 1~25
想定外を克服する「究極の状況判断力」(基礎編)26~40
想定外を克服する「究極の状況判断力」(実践編)41~81(有料)
想定外を克服する「究極の状況判断力」(行動編)82~(有料)

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