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雨の季節にじっくり読みたい、おすすめの3冊。

5月も今日で終わり。6月に入ると梅雨入りはすぐそこです。

しとしと雨の降る日はできることが限られるから、いつもより読書に集中できるのはうれしいところ。

そんな雨の季節に、じっくり味わいながら読みたい3冊をシェアさせてください。

対岸の家事|朱野 帰子

家族のために「家事をすること」を仕事に選んだ、専業主婦の詩穂。娘とたった二人だけの、途方もなく繰り返される毎日。

幸せなはずなのに、自分の選択が正しかったのか迷う彼女のまわりには、性別や立場が違っても、同じく現実に苦しむ人たちがいた。

二児を抱え、自分に熱があっても休めない多忙なワーキングマザー。医者の夫との間に子どもができず、姑や患者にプレッシャーをかけられる主婦。外資系企業で働く妻の代わりに、二年間の育休をとり、1歳の娘を育てるエリート公務員。

誰にも頼れず、いつしか限界を迎える彼らに、詩穂は優しく寄り添い、自分にできることを考え始める。

出典: Amazon

わたしは、妊娠したら働けない船員という職業だったため、結婚を機に専業主婦に。家事だって生きる基盤を整える大事な仕事だと思いたいけれど、働く母がマジョリティになり、専業主婦の社会的評価が下がっている上に、家族からの感謝もめったにないと、自己肯定感は下がる一方。

永遠と繰り返される子どもとの毎日に途方に暮れる、主人公・試穂の思いには共感しかありませんでした。特にここなんて、わかりみのかたまり。

仕事の帰りにちょっとお酒を飲みに寄る。定食屋で晩ご飯を食べる。自分へのご褒美に流行のアクセサリーを買う。疲れたらマッサージに行く。休みの日は寝坊する。  

そんなこともできずに、毎日誰よりも早く起きてご飯をつくる。スーパーに向かう道で花を見て、ゴミを出しに行った束の間の時間で星を見て、力を奮い立たせる。

いつか、一日でいいから、お休みをもらえたら家出がしたい。
-中略-
飛行機雲が詩穂の目にどんなに美しく見えるかなんて、思い立った時に飛行機に乗れる人にはわからない。

出典:  p.207

専業でなくても、家事を担っている方には心に響く場面がきっとあるはず。登場人物たちが現実との折り合いをつけながら進んでいく姿は、暮らしをつむいでいく勇気をくれます。

わたしは、詩穂が主婦力(よその家の子どもを預かる、料理のおすそ分けをするetc…)で周りの人を助ける中で、自身の生きる指針を見つけていく様子に励まされました。

生きるベースを整えること(つまり家事)で人は強くなれるし、一見地味で変わり映えしない主婦業も、そこで新たな挑戦を続ければ、より大きな変化に対応できるスキルと自信が育つはず。そんな気持ちに。

さらに、自分とは違う立場の人のことを想像するヒントをくれるのも、本作の魅力のひとつ。

専業主婦、パート、フルタイム会社員、フリーランス…。様々な働き方がある現代はグルーピングが明確で、違うグループに属する人への視線には、どこか冷たさが漂っています。

相手が置かれている状況や気持ちを知らずに、自分に見える部分だけでジャッジして、より断絶を深めているような…。誰もが自分の現実に悩みを抱えている一方で、自分の選択は正しかったと思いたいもの。

『対岸の家事』だとスルーせず、同じ家事をするもの同士、立場は違っても、想像力を働かせ思いやりを持って接したい。きれいごとかもしれないけれど、そうできたら、もう少し優しくて生きやすい社会になるのにと思わずにいられません。

小さい部屋で心地よく|建築家二人暮らし

CHAPTER1 小さい部屋を心地よく
・"どう過ごしたいか"からはじまるインテリア
・シーンから考える部屋づくり…etc

CHAPTER2 部屋が心地よくなる、インテリアのあれこれ
・背伸びしない、ゆるインテリア
・色柄より「質感と肌触り」で選ぶ…etc

CHAPTER3 おいしい生活
・なんでも絵になる平たいお皿
・そのまま食卓に出せる、フライパン…etc

CHAPTER4 居心地よく暮らすために
・自分の心地よさを掃除で知る
・インテリアとしての音楽…etc

出典: Amazon

最初にお2人を知ったのは、Youtubeでした。建築家ご夫妻の「どう過ごしたいか」が具現化された、居心地のよさそうなお部屋に惚れ惚れ。

作業がサクサク進みそうなワークコーナー。出典: p.15-16
機能的で美しいキッチン。出典: p.22-23

本の方には、プロならではの理論に基づいた空間づくりのアドバイスがたくさん。現実は、家族が散らかしたものを元に戻すので精一杯な日が多いけれど、本を眺めているだけでワクワクする気持ちに。片づけのちょっと先=インテリアまで意識したいというモチベーションをくれます。

また、「家づくりの専門家が自分の家に何を選ぶのか」は気になるところ。大型家具から珈琲道具まで、お2人のモノ選びについても惜しみなく公開されていてとっても実用的。

なかでも「インテリアとしての音楽」という章に気づきをもらい、わたしも意識的にシーンに合ったBGMを選ぶようになりました。手軽なのに居心地のよさが瞬時にアップする、音楽の効果を実感中です。

わたしのお気に入りBGMは、お2人のチャンネルの『30分の心地よい時間』シリーズ👇。愛猫Booちゃんの姿も癒し…。

この本を教科書代わりにお部屋のレイアウトを変えたり、収納をアップデートしたりするのも楽しそう。雨の日のお家時間を充実させるヒントをもらえる一冊です。

しあわせのつくり方 │ 引田かおり・引田ターセン

「しあわせでない二人」が「しあわせな二人」になった軌跡。

『しあわせな二人』『二人のおうち』(KADOKAWA)の著者夫妻が、本書では、しあわせでない時を乗り越えたエピソードを紐解きながら、しあわせになるためにするべきことをつまびらかにしていく。

夫婦、家族、仲間、仕事、健康というキーワードの章立てで、内容に合わせた写真でより具体的に伝え、約40年の夫婦の歩み寄り、努力をはじめて明かす。

今はそうでなくても、しあわせになれる本。

出典: Amazon

吉祥寺でパン屋さん・ダンディゾンとギャラリーフェブを運営されている引田ご夫妻。数年前、知人にダンディゾンのパンをいただいて、そのおいしさに驚いたのがお2人を知るきっかけでした(わたしはBE20が好きです)。

この本には、夫婦から仕事、暮らしのことまで、お2人の体験談とアドバイスが詰まっています。渦中にいる時は余裕がなくて気づけないことを、人生の先輩がそっと伝えてくれる感じ。

「こうすべき!」ではなく、「こういう視点もあるよ」と寄り添ってくれる姿勢が好きで、自分ひとりで考え込んで心がいっぱいいっぱいになった時に、ページをめくりたくなります。特に心に残っているのがこの一文👇。

「未来は過去を変えられる」という言葉が示すように、辛くても悲しくても絶望しても、いつか振り返ったときに笑って話せる自分になっていれば、それは大切なかけがえのない時間だったことになるんです。

出典: p.13

年上男性の家族についての思いを知るツールとしてもおもしろい。家族を大切に思う気持ちは夫婦共通だけれど、それを叶えるための方法が真逆だったり、相手も同じ思いに違いない!と突っ走ってしまったり。

男性の頭の中をのぞいてみると、日々の暮らしで感じる夫へのモヤッを分解するのにも役立つかも…(笑)。

各章終わりの「二人の10か条」は格言ばかり。こちらは「夫婦・家族編」。出典: p.56

・読書に関する過去記事はこちら👇。合わせてお読みいただけるとうれしいです。


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