「撮りたい人がいればいつでもカメラマンになれますよ」
「絶対」なんてないのかもしれない、と改めて思う。
言葉の仕事をしているのもあって、写真と距離をとっていた。縁のない世界というか、畏怖に近いかもしれない。敬意を払うがゆえに、近寄れない感じ。自分には撮れない世界がある。今思うと、勝手にそう思い込んでいた。
変わるきっかけをくれたのは…
映像作家のエリザベス宮地さんだった。
宮地さんとは同い年なこともあって、仕事の近況報告をしたり、たわいもない雑談をしたり、まだ悩みにもならない相談をしたり、ぽっかり時間が空いた時にふらっと会っている。
その日も、さあ、ご飯を食べに出かけようという時。宮地さんは、フィルムカメラを手に持った。作家という人は、作るためのスイッチが常に入っているのかもしれない。
「阿部さん、撮りますよ」
え、いいんですか、なんて言いながら、外苑前の道をふたりで歩く。ちょっとそこ、いいですね、あそこで、振り向いて、お、いいですねー。ふたりで笑いながら歩く。そんなやりとりが楽しい。でも、心がさらに動いたのは、写真の現像を送ってくれてからだった。
自分がこんな表情で笑えていることを知らなかった。
自分では、自分のことが見えないから。
そんな自分に気づけて嬉しくなる写真がたくさんだった。
レンガブロックの様なゴツゴツした、長年築き上げてきた固定概念がぶっ壊れていくのは、たったひと言だったりする。
宮地さんに、思わず訊ねた。「どうしたら写真を撮れるんですか?」
「撮りたい人がいればいつでもカメラマンになれますよ」
うわあ…そうなんだ。やられてしまった、このひと言に。
俺は何に遠慮をしているんだろうなと思った。写真に対して、撮ってもいないのに距離をおいていた。写真に対して、近づいてもいないのに無理だと言っていた。撮りたい人がいたら、撮ればいいんだよ。
それから宮地さんと写真の話をたくさんした。
自分も撮りたくて仕方がなくなって、手にしたのが「写ルンです」。
それから、写ルンですで撮りはじめた。
エリザベス宮地さんとの話が盛り上がり、宮地さんが監督するドラマ「東京ヴァージン」でも、撮影をさせてもらった。
僕が、ドラマ「東京ヴァージン」の公式サイトに、写真家の川島小鳥さん、エリザベス宮地さんとともにクレジットされているのは大袈裟ではなく奇跡だと思う。
そして今も撮り続けている。この先に何があるのかわからないけど、好きに導かれるようにのめりこんでいる。
★2018年3月2日(金)追記★
撮り続けていたら実現しました。
また会えたら写真を撮ろう。
「アイスと雨音と写ルンです」
2018年3月2日(金)~3月14日(水)(11:00~19:00)
会場:原宿 WONDER PHOTO SHOP 2F
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-29-4
映画「アイスと雨音」の74枚の思い出です。
「この先に何があるのかわからないけど、好きに導かれるようにのめりこんでいる」
この先があったよ、とあの時の自分に言いたいです。
★2019年2月7日(木)追記★
写真に残しておきたい日が、2/12火にやってきます。
もしよろしければこちらのnoteもお読みいただけますとうれしいです。
★2019年3月16日(土)追記★
僕が作詞を担当させてもらったフォークデュオさくらしめじの新曲「お返しの約束」。エリザベス宮地さんにMVを監督いただき完成しました。ベースとなっているのは、マネージャーさんがさくらしめじを撮りつづけた150枚以上の写真。これはもう愛でしかない。撮りたい人がいたから撮っている。関わらせてもらって、とても思い入れのある時間でした。ぜひご覧ください。
ありがとうございます◎ 新刊『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)手にとってもらえたら嬉しいです🙏🏻 https://www.amazon.co.jp/dp/4478117683/