見出し画像

「プラットフォーム」について、腰据えて考えてみた #1

今回は、お気に入りのカフェからお届けします。Wi-Fiと電源が使える上に、休日でも人が少なくて最高なのです。おしゃれだし。あとお姉さんが可愛い。

さて、今回はプラットフォーム本を読んでみたので、ご紹介。弊社でプラットフォームを運営していて、しかもその改善グロースを担当していることもあって、プラットフォーム系の本には「一度は触れておかなくては」と思っていました。

なんかプラットフォームやってる会社ってうまくいっているようなイメージが先行している(AirbnbとかAmazonとか諸々)し、「とりあえずプラットフォームっしょ!」と言って何でもプラットフォーム化したくなる気持ちは僕自身も思ったことがある。

だけど一歩引いてみれば「プラットフォームって実際のところ何なの?」「どうすればプラットフォームを成り立たせることができるの?」といったことについて、オーナーシップ持って実際にプラットフォームサービス開発している人以外、あまり考えることがないのではと。

そこで読んで記事を書いてみることにしました。僕と同じような人に、何か感じとっていただけたら幸いです。

これまでのビジネスモデルと何が違うのか

何かを理解するには比較して考えるとわかりやすい!ということで、伝統的企業のビジネスモデルについて整理します。「伝統的な」とは、一言で書くと、マイケル・ポーターが「バリューチェーン」と呼んだものです。図にするとこんな感じでしょうか。

経済成長を推し進めてきたモデルだし、もちろん今でも存在しているし、材料から生産する活動は、そう簡単にはなくなりはしないと強調はしておきます。

ただ、このモデルにおいて、主要なプレイヤーは企業だし、ここに「消費者」が参入する余地などなかったように思います。降りてきたものを買うだけ。「消費者から見ると」あくまでプッシュ型。

これに対し、プラットフォームは、本から言葉を借りるなら「2つ以上の顧客グループを誘致し・仲介し、相互作用・交渉させて取引できるようにすることで大きな価値を生み出す企業」のこと。図にするとこんな感じかな...。

プラットフォームの性質として、本来的にシェアリングエコノミーであり、書籍から引用するなら「余剰能力の再分配や共有、再利用」を可能にしている点があります。特に「余剰」という点が面白いなと個人的には思います。

ちなみに、プラットフォームビジネスを先導したのがイーベイだと言われています。個人間の売買を促進するプラットフォームを構築したという意味では、いま飛ぶ鳥を落とす勢いのメルカリさんよりずっと先にやっていました(メルカリは純粋なC to Cの経済を生み出したと言う点で異なる?と思うし、デザイン面も素晴らしいと思うけど)。

ちなみに最近急激にプラットフォームが注目されてはいるけど、2014年にノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロール氏の論文『Platform Competition in Two-Sided Markets』(読みたい......!!)はなんと2000年には既に出回っていた模様。20年ほども前からある考え方なのです。

↑こちらの記事も面白いから読んでみてください。

プラットフォームビジネスを支える経済原理

もし、プラットフォームビジネスをしようと思っているのなら、成立 / 拡大させるためにも、必要な経済原理については最低限理解しておく必要があります。ぜひ書籍を手にとってほしいこともあるので、ここでは原理だけ紹介します。

> 外部性
> 需要サイドと供給サイドの規模の経済
> ネットワーク効果
> クリティカルマス
> ティッピングポイント
> シングルホーミングとマルチホーミング
> 価格弾力性
> 代替財と補完財

この中で最も目を引くのが「ネットワーク効果」かなと。なんなら、「ネットワーク効果をいかに増大させるか」、そのために、上に挙げたような考え方が必要だとも思います。

その理由は、プラットフォームをつくる以上、ネットワークが生み出す価値と、得られる価値を増大させないことには大きな成長を望めないからです(駆け出しの収益面の点でも)。ネットワークの力は強大でうまくまわり出せば指数関数的に価値が増大します。だからユーザーの誘致をみんなあの手この手でがんばっているのですね。

基本的な経済原理について、気になる人は本を読んだり、言葉を調べたりしてみてください。こうしてみると、経済というとマクロなものをつい意識するけど、プラットフォームって「小さいけど、しっかり経済なんだな」と実感しますね。

プラットフォームをいかに設計するか

ここまで読んできた人はもう感じていると思いますが、「とりあえずステークホルダー2者がやりとりできるサービス作ればいいっしょ!」ではうまくいきませんね。それではどちらかというと「リニアなビジネスモデル」の発想から抜け出せていない。「システム思考」のアプローチが、より必要とされると思います。

この図を作ってみて、考えなきゃいけないことが本当に多いというのが最初の感想です。特にまず考える必要があるなと思ったのは、プラットフォームから得られる価値とユーザーが与える価値の部分。プラットフォームに価値提供してもらえるような仕組みを作る必要がありますね。ユーザーを集めるまでは、そこに注力しなくても良いかもしれないけど、設計段階でしっかり考えておかなくてはならないと思いました。

ただ恩恵を受けるだけでなく、貢献できる、したくなる、そうするほうが自分にとっても有益だと思えるような仕組み。たとえばこんなところでしょうか。

> プラットフォームの参加者からのインプットが、プラットフォームと参加者の価値を高める仕組み
> 本来手間暇かけて探す、「他者が発信する有益な情報」を、プラットフォームの参加者が効率的に得られるようにする
> 固有のユーザーに最適化された仲介機能
> 従来の方法や、他の方法では得られない、「安心して、参加できる価値」を提供する

ここまでくると、なんとなくプラットフォームの正体がわかってきた気がしますね。そうなるとアイデアも湧いてきます。完全に余談ですが、プラットフォームの事業設計ワークショップしたいなー。すごく盛り上がる気がする。

埋もれていた価値を掘り起こす、という大きな価値

昨今、プラットフォーム系のサービスが流行りで、実際に目立っているけど、社会の流れとして、個人の存在感が増しているし、シェアリングエコノミーが発展していることからも必然的なのかなと思います。

プラットフォームしか見えていないのはどうかと思うけど、いろいろ考えても、僕はプラットフォームサービスがけっこうすきです。理由はシンプル。

> 挑戦できる機会と人が増えるから
> 価値を生み出せる機会と人が増えるから

昔は、いわゆる「消費者」が自主性を持ってプロダクトを作ったり評価することは、それほどできなかったと思う。井戸端会議とか、身内内の口コミとか、そんな感じ。

それに、一部の人が「才能」を認められ、発揮していた世界だった。その他大勢の人は、「すごいな〜」と言っているだけだった。実際にそこに飛び込もうとすれば、相当のリスクもあったろうし、強力な「縦の競争原理」が働いていた。選ばれるのは一握りだけで、あとの人は、ひどい時には失敗者かのように言われることもあっただろうと思います。

その点、プラットフォームは、既存の価値観や権力構造を破壊し、再構築する。もはや個人はただお金を払って価値を交換するだけではない。中央集権的ではないし、みんなが価値の生産者だ。

ちょっと一冊から得られるものがだいぶ多いので、今回は事業設計の部分についてサクっと触れる形にはなってしまいました。フェーズごとの内容にしたり、いろんな会社のプラットフォーム(ハイブリッドも含めて)ビジネスのモデル図解にもチャレンジしたら面白そう。

おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?