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HOW ARE YOU?が魅せた海外移住。

僕はオーストラリアに住んでいる。
ワーキングホリデーを使って移住をした。
いわゆる、『ワーホリ』ってやつだ。

オーストラリア2年目の僕は
数年前までは、海外にまるで興味がなかった。
兄貴はアメリカに6年。妹はフランスに。
いとこはハワイで語学留学。
高校時代、俺の家に入り浸っていた親友は、
俺の兄貴の影響でアメリカに4年。
そんな環境にいたら、普通の人だったら海外に興味を持つと思う。だけど、僕にとって海外なんてどこ吹く風。僕の世界の全ては、日本だった。

そんな僕が海外に住もうと思ったのは
日本を旅している時に、金沢のゲストハウスで
出会った1人の外国人の『How are you?』だった。

✱✱✱

あれは北陸東北一周のひとり旅の途中。
たしか、4日目か5日目だったと思う。
車中泊に少し疲れていたのでその日は宿を取る事に。
いつも通り、Booking.comで宿を探す。

気になるゲストハウスかあったので、電話で予約。
当日予約ということもあり、ネットで予約ができてるかいささか不安があったのだ。
そんな不安をよそに、あっさり8人部屋ドミトリーのベッドを確保。兼六園と21世紀美術館に後ろ髪を引かれながら、ゲストハウスへむかった。

慣れた手つきでチェックインの手続きをしてくれるバイトの兄ちゃん。
簡単にゲストハウスの説明を受けて、ベッドへ。
携帯を充電したかったので、コンセントにさして
カメラや財布といった貴重品は枕元に設置されていた貴重ボックスの中に閉まった。
鍵を掛けて安心したのか、そのまま寝てしまったようだった。

時計を見たら、夜7時。
宿にチェックインをしたのが夕方の4時頃だったので
3時間も寝てしまったことになる。

そして気がつくと、部屋にはもう1人。
外国人のゲストが来ていた。
この当時英語を話せなかった僕は、
彼と会話をすることも無く、金沢の夜の街へでかけた。

宿で自転車を借りていたので、夜の金沢を徘徊。
金沢駅の『鼓門』の写真を撮りたかったので
三脚とカメラだけ肩から下げていた。

仕事帰りのサラリーマン
待ち合わせのカップル
隣に立つカメラマン
この誰とも交わること無く、
夢中でシャッターを切った。
撮り続けた。
忘れたい何かがあったかのように。

ひとしきり撮り終えた頃、雨が降ってきた。
カメラが濡れないようにカバンにしまい込み、
急いでペダルを漕ぐ。
幸い、自転車だと5分もしない距離だったので
少し濡れただけで、宿へ帰って来れた。

濡れたTシャツを着替えて宿のリビングに向かう。
次の日の予定を決めようと思ったのだ。

そこへ宿のオーナーがやってきた。
電話越しに聞いた声はこの人なんだ。と思った。
物腰柔らかく、落ち着いた人だった。

話を聞くと、彼は能登の出身らしかった。
彼が作った手作りの能登半島の写真には、
・おすすめスポット
・写真スポット
・美味しいカフェ
いろいろな情報が手描きの絵と共に書かれていた。

今回の旅で、能登半島を一周しようと思っていた僕は、次の日に能登へ行こうと決めた。

✱✱✱

そんな話をしていると
寝起きに部屋で会った外国人が、降りてきた。
宿主は海外経験もあるらしく、英語が堪能だった。
ひとしきり話が終わると、
宿主に誘われて、僕の隣に座る外国人。

『How are you?』
突然の質問と握手に、どぎまぎする。
思い返せば、人生で初めて英語ネイティブの人と話したのはこの時だったのかもしれない。
ぎこちなく、I'm good.と返す。

これだけの会話に、ものすごく感動した。
生まれて初めての日本語ではない会話に感動した。
そのあと、宿主が通訳をしてくれて色々話したのだが、内容は全く覚えていない。

覚えているのは、
『海外に行こう』という強い想い。

英語を話せたら、
こんなに嬉しい気持ちになるのか。
こんなに素晴らしい出会いがあるのか。
こんなにも面白い世界があるのか。

もっと彼を知りたいと思った。
彼と分かり合いたいと思った。

それから1週間。
東北各地を旅をしていたが、心は日本に無かった。
遠いどこか海の向こうの国を見てた。

旅を切りあげ、1度地元に帰って東京へ。
旅の最中に、ワーホリの説明会を予約した。

誰にも言わずに、海外行きを決めていたこの時の僕はひとりで異国の地へ行く事に、どこか勝ち誇ったような気分だった。

新しい世界を見た。
英語で会話をするというコミュニケーションをとおして、ひたすらにワクワクしていた。

僕のオーストラリアは、
この金沢の夜の『How are you?』から始まった。
僕はこの『How are you?』に魅せられた。

この旅に出るつい4、5日前まで
僕の世界に、日本以外は存在していなかった。
ひとりの外国人との出会いで、
たった一言の『How are you?』で、
僕はオーストラリアまで来てしまった。

なんでワーホリでオーストラリアに住んでいるんだろう?と思うことがある。
そんな時は、この金沢の夜に戻る。
僕のオーストラリアの原点は金沢にある。

この夜がなければ
今の僕はオーストラリアにはいないだろう。

それまで通り、
僕の中には、日本という異国から隔離された狭い世界でしか存在してなかったと思う。

僕の世界を広げてくれた
彼の『How are you?』に
今はたくさんの意味を込めて
『I'm good.Thank you.』と返したい。

こーた

✱✱✱

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