おおた かつひさ

昭和40年生まれ。 30年以上のビジネス経験。前例の無い仕事経験が多め。でもルーティン…

おおた かつひさ

昭和40年生まれ。 30年以上のビジネス経験。前例の無い仕事経験が多め。でもルーティンワークは苦手。 平時に弱く、有事に強い。 スポーツ観戦好き。特に陸上競技、テニス、カーリング。 noteではあれこれと書きたいことを載せてます。 いつの間にか撮り溜まっていた写真も。

マガジン

  • 400字書評集

    400字以内で書いた書評をまとめています。

  • スポーツに絡んだ書きもの集

    スポーツに因んだ短い文です。観戦記、スポーツの仕事、スポーツメンタルコーチングなど。

  • ショートショート集

    思いつきで書いています。短めの超ショートショートが混じっています。

  • 400字エッセイ集

    400字目安の短いエッセイです。テーマは特にありません。その時々の思いつきを書いています。振り返って読むと自分のその時の心情が少し思い出されます。

最近の記事

書評 232 「教科書名短編 科学随筆集」

教科書に掲載された短編を集めたシリーズ中、近現代の日本を代表する科学者7人の随筆集として刊行された。 寺田寅彦、中谷宇吉郎、湯川秀樹、岡潔、矢野健太郎、福井謙一、日高敏隆の7人。 明治から昭和、いずれも科学史に名を残すと共に著作も多い学者。物理学、数学、化学、生物学とジャンルは異なるが、本書掲載の文章には共通点がある。それは科学の基礎になる人間の姿勢。 身の周りにあるもの、起こること。当たり前のことで、一見小さなこと。特別なことも無い。そのことに「なぜだろう」と疑問を感じ

    • 書評 231 「ざっくり分かるファイナンス」

      書名通りの内容。会計(アカウンティング)ではなく、財務(ファイナンス)の解説書。企業がどうやって資金を集めて、どう使うか。これが財務の基本。企業の成長には当たり前だが「資金のやりくり」が必須。そして、そのやりくりをこなすファイナンスのプロたちの判断のベースにはセオリーがある。そんなことが分かる。 ただ、全くの素人には難しいだろう。できるだけ平易な例を挙げての説明に努めているのだけれど、用語や実際の場面への知見が皆無だと、それでも難解。少しだけでも企業の経理や財務に携わったけ

      • 書評 230 「ヒトの言葉 機械の言葉」

        言語学に関わる楽しい著作が多い川添愛さんによる、AIの「言葉」の解説。2020年の刊行である点は頭に入れて読む事になる。 人間が言葉を習得していく過程には、過去の経験値から生まれる類推や想定がある。しかし、AIには無い。膨大なデータを読み込む中から、単語の繋がりから次にあるべき確率が高い単語を選別するのがAI。AIはSF小説や漫画で描かれた様な、自立して「考え」を「生み出す」ことはできない。これが一貫して主張されている。 その過程で、言語の本質とは何なのかといったことも書

        • 書評 229 「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」

          ジョジョの作者としてあまりにも有名な荒木飛呂彦さん。いかにもホラー映画を見ていそうな感じがあるが、その想像を遥かに超え、マニア的にホラーものを観ている。 本書では、その遍歴に基づいて独自のホラー映画論を展開する。人はなぜ怖いものを観てしまうのか。そこから始まり、一般的なホラーのジャンルには入らない映画でも、人が恐怖を感じるものはホラー映画だというのが新しい観点で面白い。 「ゾンビ」「田舎に行ったら襲われた」「ビザール(殺人鬼)」「スティーブン・キング」「SF」「アニマル」

        書評 232 「教科書名短編 科学随筆集」

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          97本
        • 400字エッセイ集
          88本

        記事

          書評 228 「海舟語録」

          勝海舟の談話を口述筆記。同様の書籍に氷川清話があるが、こちらは海舟の最晩年。また、聞き手は明治の教育者でありジャーナリストである巌本善治。 当時の明治日本の政治や教育のトピックに対し、海舟の率直かつ遠慮の無い評論がべらんめえ口調で展開される。明治の元勲と呼ばれる人たちも海舟にとっては小物のごとく評される。また、かつての主君である徳川慶喜にも容赦がない。 しかし、それだけに西郷は別格であり、ずば抜けた人物と認めていることがよくわかる。 また、聞き手が教育者だからか、明治の教

          書評 228 「海舟語録」

          書評 227 「銀の匙」

          明治から昭和に生きた文筆家、中勘助の最初の作品。新聞連載の後に刊行。著者が学生時代に授業を受けた漱石に評価、指導を受けたとのこと。 明治の東京で旧士族の家に生まれた著者の少年期を綴った私小説的な物語。日記の様に日々の暮らしの中で起こる出来事、周りの人々との対話、そして主人公がそれらをどう受け止めて、感じていたのかがつらつらと書かれていく。 起承転結の様な物語は無い。非日常的な特殊な背景なども無い。しかし、ページを捲る手が止まらずに読み進めてしまう。それは、本書がきれいな日

          書評 227 「銀の匙」

          書評 226 「奇跡の論文図鑑」

          まともな科学的テーマとは思えない研究を取り上げたNHKの番組を基に、書籍に仕立てた。学術に関わる人以外はなかなか読まない「論文」。その中に多くの人が興味を惹かれる面白さがある、との視点から始まったそうだ。実際、本書に収められている研究はどれもユニークに見える。 しかし、副題の「ありえないネタをクリエイティブに」はズレている。どの研究も、なにも注目を得たくて、一風変わったテーマに取り組んだ訳ではない。研究者自身の専門、もしくはそこから派生する極めて学問的な仮説や疑問を検証。そ

          書評 226 「奇跡の論文図鑑」

          書評 225 「検事の矜持」

          長年検事を務めた著者が、検事の行動や考え方を語る。実際に自分が携わった事件を中心に実例の中で見せていく。 所謂「犯罪」を法に照らし合わせて、どの様に論理的に立件していくのか。疑わしい事案をどうやって見つけ、証拠をいかに集めていくかの過程。被疑者との取り調べで証言(本心)を聞き出すためにどんな考えを巡らすのか。そんなことが描かれている。 「取調べは単に犯罪の嫌疑を明らかにするためではない。被疑者の立場に立って、その人生を追体験しながら真相を語らせ、反省を求める場である」との

          書評 225 「検事の矜持」

          書評 224 「ぼくたちには『体育』がこう見える」

          スポーツは善で体育は悪。その見方に「本当にそうなの」と疑問を出す。 スポーツはトップを目指す選手もいれば、ただ楽しみを求めてやる人々もいる。それは個々人の自由だ。一方、体育は教育である以上、基準や規制がある。その不自由さが個性重視の風潮では悪と見られる。 しかし、体育にはもっと可能性があるのではないか。その題材の下、為末大さんが様々な分野の人たちと行った対談集。出版元が教育関連に強い大修館書店というのも面白い。 体育は定められた技能(例えば逆上がり)をできるようにするこ

          書評 224 「ぼくたちには『体育』がこう見える」

          書評 223 「恐怖の正体」

          恐怖と聞いて、意味がわからない人はいない。しかし、恐怖を説明しろと問われると単に恐いこと(怖さ)としか言えない。 精神科医の著者が、恐怖とは何かを書き綴る。科学的解説も随所にあるものの、エッセイと呼ぶのが相応しい。つまり、読み易い。 著者なりの定義を序盤で試みる。恐怖があまりに広義であるが故に、共通点は抽象的になるが「危機感」「不条理感」「精神的視野狭窄感」の3つを挙げる。これだけ聞くと分かったようでわからないが、文中で様々な事例を挙げてくれるので、納得できる。 その事

          書評 223 「恐怖の正体」

          書評222 「脳の意識 機械の意識」

          人の脳を人工知能に置き換える。そうして自身の意識(知性)を永遠に生き永らえさせる。 そんなことは本当にできるのか。 理論的にはできる。と言えるのみならず、実現に近づきつつあるらしい。 脳は視覚や嗅覚、聴覚などから入った信号を自覚する。この刺激を認識することは機械に置き換えていくことは可能。しかし、脳はそこからその知覚を「意識」に振り替える。これを機械に落とすのはまだ難しい。 そもそも意識とは何なのか。様々な定義案があるが、どうも多数の刺激を複合、解釈して、自身の外にあ

          書評222 「脳の意識 機械の意識」

          書評 221 「伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」

          往年の名翻訳家、伊藤典夫が手がけた短編7編をまとめた文庫。 ラインスターの「最初の接触」読みたさに購入。いわゆるファーストコンタクトものの元祖的作品として余りにも有名で、その筋書きは十分に知っているのだが、未読。知っているのに読んでも面白いのは、やはり名作ということか。 7編はいずれも1960年代以前の作品で、SFの古典と言ってもよい。今から見るとアイデアはどれもSFの王道的なものばかりで驚く様な展開は無いのだけれど、発表された当時は斬新だったのでは無いか。 また、現在

          書評 221 「伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」

          書評 220 「企業不祥事を防ぐ」

          コーポレートガバナンスの権威と評される國廣弁護士の数多い著書の一つ。 コンプライアンス強化として社内規制やチェック強化をしても、形式整備が目的化してしまい本来の目的が見えなくなる、と。 では、どうするか。多くの失敗事例と少しの好例を解説し、読者を導く。会社の価値は社会からの評価で、その評価を落とさない意識が根付くこと。それが著者の結論。コーポレートガバナンスが求める知識は幅広く、過去の経験値が正解とならないこともある故に、結局そこに至ってしまう。 それにしても、著者は多

          書評 220 「企業不祥事を防ぐ」

          書評 219 「洗う文化史」

          歴史民族博物館と花王の共同研究から、一般読者にも読みやすいものをまとめている。 「洗う」という行為の本邦各時代の内容、また多文化との相違などを取り上げているが、「清浄」「清潔」の定義の遷移がたいへん興味深い。そして、科学の発展により洗う方法が変わる。石鹸の発明や大量製造技術で変わっていくものは分かり易い。現代の洗浄技術や知識(例えば細菌の存在認知など)が無かった時代と現代の差異。大きく2つある様だ。 1つは洗う対象は身体や衣類など変わらないけれども、その方法が異なる。もう

          書評 219 「洗う文化史」