おおた かつひさ

昭和40年生まれ。 30年以上のビジネス経験。前例の無い仕事経験が多め。でもルーティン…

おおた かつひさ

昭和40年生まれ。 30年以上のビジネス経験。前例の無い仕事経験が多め。でもルーティンワークは苦手。 平時に弱く、有事に強い。 スポーツ観戦好き。特に陸上競技、テニス、カーリング。 noteではあれこれと書きたいことを載せてます。 いつの間にか撮り溜まっていた写真も。

マガジン

  • 400字書評集

    400字以内で書いた書評をまとめています。

  • スポーツに絡んだ書きもの集

    スポーツに因んだ短い文です。観戦記、スポーツの仕事、スポーツメンタルコーチングなど。

  • ショートショート集

    思いつきで書いています。短めの超ショートショートが混じっています。

  • 400字エッセイ集

    400字目安の短いエッセイです。テーマは特にありません。その時々の思いつきを書いています。振り返って読むと自分のその時の心情が少し思い出されます。

最近の記事

書評 225 「検事の矜持」

長年検事を務めた著者が、検事の行動や考え方を語る。実際に自分が携わった事件を中心に実例の中で見せていく。 所謂「犯罪」を法に照らし合わせて、どの様に論理的に立件していくのか。疑わしい事案をどうやって見つけ、証拠をいかに集めていくかの過程。被疑者との取り調べで証言(本心)を聞き出すためにどんな考えを巡らすのか。そんなことが描かれている。 「取調べは単に犯罪の嫌疑を明らかにするためではない。被疑者の立場に立って、その人生を追体験しながら真相を語らせ、反省を求める場である」との

    • 書評 224 「ぼくたちには『体育』がこう見える」

      スポーツは善で体育は悪。その見方に「本当にそうなの」と疑問を出す。 スポーツはトップを目指す選手もいれば、ただ楽しみを求めてやる人々もいる。それは個々人の自由だ。一方、体育は教育である以上、基準や規制がある。その不自由さが個性重視の風潮では悪と見られる。 しかし、体育にはもっと可能性があるのではないか。その題材の下、為末大さんが様々な分野の人たちと行った対談集。出版元が教育関連に強い大修館書店というのも面白い。 体育は定められた技能(例えば逆上がり)をできるようにするこ

      • 書評 223 「恐怖の正体」

        恐怖と聞いて、意味がわからない人はいない。しかし、恐怖を説明しろと問われると単に恐いこと(怖さ)としか言えない。 精神科医の著者が、恐怖とは何かを書き綴る。科学的解説も随所にあるものの、エッセイと呼ぶのが相応しい。つまり、読み易い。 著者なりの定義を序盤で試みる。恐怖があまりに広義であるが故に、共通点は抽象的になるが「危機感」「不条理感」「精神的視野狭窄感」の3つを挙げる。これだけ聞くと分かったようでわからないが、文中で様々な事例を挙げてくれるので、納得できる。 その事

        • 書評222 「脳の意識 機械の意識」

          人の脳を人工知能に置き換える。そうして自身の意識(知性)を永遠に生き永らえさせる。 そんなことは本当にできるのか。 理論的にはできる。と言えるのみならず、実現に近づきつつあるらしい。 脳は視覚や嗅覚、聴覚などから入った信号を自覚する。この刺激を認識することは機械に置き換えていくことは可能。しかし、脳はそこからその知覚を「意識」に振り替える。これを機械に落とすのはまだ難しい。 そもそも意識とは何なのか。様々な定義案があるが、どうも多数の刺激を複合、解釈して、自身の外にあ

        書評 225 「検事の矜持」

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        記事

          書評 221 「伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」

          往年の名翻訳家、伊藤典夫が手がけた短編7編をまとめた文庫。 ラインスターの「最初の接触」読みたさに購入。いわゆるファーストコンタクトものの元祖的作品として余りにも有名で、その筋書きは十分に知っているのだが、未読。知っているのに読んでも面白いのは、やはり名作ということか。 7編はいずれも1960年代以前の作品で、SFの古典と言ってもよい。今から見るとアイデアはどれもSFの王道的なものばかりで驚く様な展開は無いのだけれど、発表された当時は斬新だったのでは無いか。 また、現在

          書評 221 「伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」

          書評 220 「企業不祥事を防ぐ」

          コーポレートガバナンスの権威と評される國廣弁護士の数多い著書の一つ。 コンプライアンス強化として社内規制やチェック強化をしても、形式整備が目的化してしまい本来の目的が見えなくなる、と。 では、どうするか。多くの失敗事例と少しの好例を解説し、読者を導く。会社の価値は社会からの評価で、その評価を落とさない意識が根付くこと。それが著者の結論。コーポレートガバナンスが求める知識は幅広く、過去の経験値が正解とならないこともある故に、結局そこに至ってしまう。 それにしても、著者は多

          書評 220 「企業不祥事を防ぐ」

          書評 219 「洗う文化史」

          歴史民族博物館と花王の共同研究から、一般読者にも読みやすいものをまとめている。 「洗う」という行為の本邦各時代の内容、また多文化との相違などを取り上げているが、「清浄」「清潔」の定義の遷移がたいへん興味深い。そして、科学の発展により洗う方法が変わる。石鹸の発明や大量製造技術で変わっていくものは分かり易い。現代の洗浄技術や知識(例えば細菌の存在認知など)が無かった時代と現代の差異。大きく2つある様だ。 1つは洗う対象は身体や衣類など変わらないけれども、その方法が異なる。もう

          書評 219 「洗う文化史」

          書評 218 「戦争プロパガンダ 10の法則」

          戦争が起こるとき、当事国の政府や国家元首、メディアの言動にはパターンがある。第一次世界大戦以来、局地的な争いも含めて完全にこのパターンが当てはまる。そして、後日に振り返ると明らかにそのどれもが誤っていたと誰もがわかるのに、新たな事態が起こるとパターンをまた繰り返す。 英国の政治家ポンソンビーが100年前に書いた第一次世界大戦の考察を基に、ベルギーの歴史学者である著者が事例を多々紐解きながら、10のパターンを解説している。 たくさんの戦争を経験して、歴史として知識を持ってい

          書評 218 「戦争プロパガンダ 10の法則」

          書評 217 「波乗り理事長の保育園改革」

          宗教法人と社会福祉法人、具体的には寺と保育園。これが併立している例は全国各地にある。本書はそれを世襲して、自分の代にいろいろとトライ、事業規模の拡大を実行した著者の半生記。 保育業界に続く慣行とその問題点を指摘、それをどの様な着眼点で変えてきたか。旧態を変える時にどんな組織にも生じる反発や批判があったが、それをどう乗り越えてきたか。それが語られている。主張の矛盾も散見されるけれど、大きな方向性をよくよく考えて、勇気を持って実行したことが実を結んでいる事例として、なかなか面白

          書評 217 「波乗り理事長の保育園改革」

          書評 216 「ルールはそもそもなんのためにあるのか」

          法哲学者の著者が、具体的な事象に当てはめて法哲学の視点の持ち方や考え方を示す。同様な狙いの新書(あぶない法哲学)を既に著しているが、今回はコロナ禍に起こった自粛警察などを題材にしている。 国や地域、あるいは学校や会社など、集団の中だけで常識とされているルールがある。法律の手前にあるこういったルールはなぜ生まれるのか。人々はなぜそれを守るのか。外部から見ると守る理由がわからないようなものを。 集団を維持する、ひいては集団の多数が生き残るためにルールはできてくるのだが、公平を

          書評 216 「ルールはそもそもなんのためにあるのか」

          書評 215 「極夜行」

          自ら探検をして、その体験をドキュメンタリーとして書く作家、角幡唯介の代表作。 グリーンランドでももはや人が住まない極北のエリア。しかも、冬季の太陽が全く現れない漆黒の時期(極夜)。そこに単独で橇犬一頭だけをパートナーに入っていく。北極点を目指すといったわかりやすい目標は無く、極夜の厳冬の地を進み、やがて昇る太陽を見ることを目指す。まさに探検のための探検。 4年間もかけて下準備をし、踏破予定地を夏期に下見して、食料や燃料の補給デポを設ける。そこを踏破コースにしっかりと組み入

          書評 215 「極夜行」

          書評 214 「会津藩」

          現代書館のシリーズ藩物語の一冊。「ならぬことはならぬ」や京都守護職として幕末の京都で新撰組を使った藩主松平容保が知られている会津藩の歴史をコンパクトにまとめている。 江戸時代初期から初代藩主の指示を守り、徳川幕府親藩中の親藩たる立場を徹底していたことがわかる。財政的には余裕は無い中で苦しみながらも幕府の要請を受けた歴史。外様大名の力を削ぐためではなく、御三家にも委ねられないことを背負わされてきた親藩。京都守護職がその典型的な役割だったようだ。最後には紀州や尾張までが官軍に加

          書評 214 「会津藩」

          書評 213 「変な家2」

          「変な絵」、「変な家」に続く雨月の3作目。前作同様に家の間取り図を読み解きながら進んでいくのだが、今回はその数が多い。たくさんの間取り図とその家にまつわる家族の逸話。それを繋げていくと一つの悲しい物語になるのが前作との違い。登場人物も多いのだが、そちらにも繋がりが仕込まれている。 ネタバレにならない程度に言うと、間取り図自体の仕掛けに加え、複数の間取り図に共通して埋め込まれた謎探しに途中で気づけるかどうかで後半の謎解きステージの読み方が変わってくるだろう。 ミステリーと言

          書評 213 「変な家2」

          書評 212 「宇宙・肉体・悪魔」

          20世紀の前半、1929年に物理学者が著した未来予測の書。わずか100ページほどと短い。しかし、中身は濃い。 人類はやがて宇宙へ出ていく。 宇宙で生存するために人工の小型天体を作り、その内側で暮らす。 寿命を延ばすために身体の機械化が進む。それは宇宙での生存と繋がることもある。 機械化は脳だけの存在になることも考えられ、その結果集合知の生命体ともなり得る。 子孫を生み出す方法も変わっていくだろう。 しかし、身体と精神が密接に結びついて人類は進化してきたことからして、知力と合

          書評 212 「宇宙・肉体・悪魔」

          書評 211 「箱男」

          昭和の文壇に異色の名を残す作家、安部公房。その代表作の一つ。映画化が決まっていて、既に撮影進行中らしい。 実に違和感あるキャラクター。その姿は詳細に記され、想像できるのが怖い。ただの浮浪者ではないか。そう言ってしまえばそうなのだが、箱が果たす役割は生活の術となり、個人と社会を分ける壁にもなる。それが、どこにでもある大きめの段ボール箱。ここからして、発想が異様。 物語は独白形式で進んでいくのだが、主人公だけでなく周辺に現れる複数の人間たちのそれが入れ替わり表れる。途中で、「

          書評 211 「箱男」