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幸村 柊
2020年2月19日 19:00
中身の入ったビニル袋の潰れる音がした。レースカーテンのあちら側、ベランダの真ん中で風に揺られる白いコンビニ袋。何事かとベッドの上で身を強張らせていると、次は先ほどより鈍い、人間の潰れる音がした。絵の具を溢したような夏空から落ちてきた彼はしばらくして起き上がり、眉間にしわを寄せこちらを見た。身動きできなかった。その人はよく知る人間だった。同じ学科の、唯一といっていいほどに気を許し
2019年12月18日 19:00
良かれと思って声をかけたが、後輩にこっぴどく拒絶されてしまった。ありがた迷惑、検討外れ、自己満足、浅慮、愚か。後悔したところで何にもならない。夜中に大学の研究室を抜けてきて、非常階段下の喫煙スペースで頭を抱えて煙草を灰に変える。「先輩、おれは誰かを愛してやれないのでしょうか」「どうしてそう思うの」壁に背を預けしゃがみこんでいるので頭上から声が降ってくる。事情を知らない先輩の