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中川多理展「白堊――廃廟苑於」①(はいびょうえんにおいて)
中川多理展「白堊――廃廟苑於」
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白堊たちの再生譚
廃嫡者たちがたどり着く廃苑
DNAを採取され 創作者の手によって
再創生の過程を辿る 新たなる世紀 これからはじまる
個展「白堊――廃廟苑於(はいびょうえんにおいて)」が5月10日よりオープンいたしました!会場は東日暮里の【元映画館】。名前の通り元映画館を改装したスペースでの展示です。
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二階席からの眺望も面白く、スクリーンには2018年に京都・春秋山荘で撮影した『癩王のテラス』の観月台ステージでの様子を上映しています。
特別展示「癩王のテラス」
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特別展示
「癩王のテラス」
三島由紀夫の『癩王のテラス』から生まれた三人のジャヤヴァルマン七世。
三人、精神と肉体と…。
山科・春秋山荘・癩王のテラスで展示されたジャヤヴァルマン七世は、奇異な運命を辿り、三島由紀夫の奏する聖セヴァスチャンのように多々傷を受け彷徨った。聖ならともかくも俗なる傷を刻まれて。
肉体の傷と精神の傷を修復(レスタウロ)中のところ…を展示します。
それこそ、まさに中川多理のもう一つのテーマである[再生]が見てとれます。
今展示では、2018年に制作し、その後悪質転売者により破壊行為を受けた3人の王を修復して特別展示しています。その経緯についてはこちらの記事をご覧ください。
三島由紀夫の『癩王のテラス』より制作した「ジャヤ・ヴァルマン七世」と「王の肉体」、アントナン・アルトー『ヘリオガバルス:あるいは戴冠せるアナーキスト』より制作した「ヘリオガバルス」の3人の王の修復を行いました。
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紅い支那薔薇のような癩の兆候と、月の光に照らし出された肌を表現しました。
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精神と対話し肉体の至高を語る、若く美しい褐色肌の王の姿を表しました。
瑞々しい躍動感を出したかったので、ボディも分割しています。
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狂乱と異常、過激な逸話に塗れた実在の少年王。
その美貌と、虚で心が通い合わなそうな表情を出すべく彫眼(インタリオアイ)を用いました。
3体の中でも「ジャヤ・ヴァルマン七世」は性器をもぎ取り、肛門を中心に滅多刺し、睫毛をむしられ、眼球部分や頬にも針状のもので何度も突いた後がありました。他の王も扱いが荒く破損が何箇所もある状態でした。
2年前に裁判で取り戻してから、「修復してあげたい」と思うものの、どうせなら新作を手掛けたいし、破壊行為の後を見ると気が滅入るので、函に入れて布をかけて仕舞い込んでいました。
でも「王のためにステージを用意したよ」と今回展示の機会を設けてもらい、必然的に締切ができてしまったので、ようやく重い腰を上げて修復作業に取り掛かりました。
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「ジャヤ・ヴァルマン七世」は全身の塗装を剥がし、胡粉でコーティングし強度を高め、全身の彩色をやり直しました。人形作家は皆そうだと思いますが、全身一分の隙も無いように磨き上げ、美しい状態で提示できる様に腐心します。それは気の遠くなる様な作業です。一度最高に美しく仕上げたものを、もう一度やり直さなければいけない。また、以前と同じ様に仕上がるかわからない、良い表情にできないかもしれない、という恐れと闘いながらの作業です。
「王の肉体」と「ヘリオガバルス」はそこまでの破壊行為は受けていなかったので、破損箇所を元通りに修復し、全身の彩色を整えました。3体とも髪の毛を貼り替え、衣装も新調しました(同じ生地を使いましたが、新しく染め直しています)。
結果、ほぼ元の姿と遜色の無い姿に生まれ変わらせてあげられたと思います。(ちょっと肌艶が良くなって、若干若返った感じはあります。そのうち落ち着くでしょう(笑))
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三島由紀夫の『癩王のテラス』は栄華を極めたカンボジアの王「ジャヤ・ヴァルマン七世」が、癩病に侵され肉体が崩れ去り、月の王朝も衰亡していくのと対比する様に荘厳なバイヨン寺院が建立してく様が描かれています。死にゆく王と、肉体の至高を語る「王の肉体」、問答をする「王の精神」、三位一体の姿で展示したかったので、個人蔵の「王の精神」はオーナー様に許可を頂いて今展示のためにお借りしてきました(ありがとうございます!)
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ステージに並んだ姿を見て「ああ、本当に治してあげられて良かった」と感慨深い気持ちになりました。京都・春秋山荘での展示は限られた人数の方にしかお披露目できていないので、今回改めてお披露目の機会を設けられて嬉しいです。
ぜひ、非業の王達の数奇な運命に想いを馳せながら、再生し甦った彼らの姿をご覧ください。
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【御予約はこちら】中川多理展「白堊――廃廟苑於」
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