報道の委縮とフェイクニュース(5)

※この記事は、広島大学の講義レポートとして作成したものを、一部を加筆・修正して載せております。講義の担当教員には許可をいただいております。

〇課題点

 現在の日本国憲法や放送法では、政治家や政治報道に関しては、偏向報道を認めない放送法の規定やプライバシー権と衝突しない限りは、自由な報道が保障されている。しかし、娯楽中心だったテレビがジャーナルとしての担い手を持ったのが、メディアとしては40年前ほどで、放送法の政治報道に関する基準がまだ明確でなく、そうした報道を作る過程や細かい役割が確定しきれていないと考えられる。娯楽がメインで、またせわしなく日々のニュースをリアルタイムで放送するTV局にとって、きっちりとした報道番組を制作することは環境的にも構築されていない。

 また、ネットの出現などで経営が悪化する中で、放送の免許が省庁にあることや近年の政府・自民党のメディア戦略、加えて有権者のクレームが会社に直接行くようになったことで、政権やその支持者の視聴者との距離を適度におけず、当たり障りのないような報道を心掛け、政治報道に対し制作陣が自由に作れない空気が漂っている。その結果、日々のニュースに関してはその日に取材して原稿や映像を編集し放送する余裕のない中で、メディアの特徴を熟知した政治権力に、よく知らないまま政権に好都合な一方的な情報を流すことや十分な精査のないまま権力に不利な情報を流し、それらがフェイクニュースとなりうる。週の報道番組など比較的制作期間が十分ある番組では、検証を重ねても、不本意にも特定の政党の人物が好印象を残す結果となる。特別番組などでも、放送法の不偏不党規定以上に、経営を揺るがしかねない支持者や政権への批判を恐れて、委縮してしまう。

〇解決策

  解決策としては、まず、制作期間が短い毎日のニュース番組は除いて、週番組や特別番組などで、新聞メディアのような報道に関わる役割分担や情報源の種類と正当性の確認を、政治的に中立なPBOやテレビ局、新聞メディア関係者、弁護士などでガイドラインを作り、それを放送法で規定する必要がある。また、記者やTV局による自由な報道や運営ができるように、放送法を改正して、免許を非政府・非官僚系の、TV局関係者で作る、政権との第3者組織を作るべきである。

 また、テレビ局は、自分たちの報道が有権者の視覚情報を与え、選挙の動向を未だに握ることに留意し、政治家の利用というものを常に疑ってかかる緊張状態や意識を、社員教育でスタッフ全員に共有する必要がある。
また、安倍政権時のメディアへの電話や呼び出しなど、政府による干渉が疑われる場合や、公益性がないクレームに対しては司法に頼り、自らの報道や存続を守るために、判例により、政治報道で可能な報道事例を獲得することが、フェイクニュースを作らない環境づくりになると考えられる。

〇前回; 報道の委縮とフェイクニュース(4)
https://note.com/kosmo_note/n/na71fe57630da

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