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また会えるということ

今年は、思いがけずたくさんの別れを経験した。突然のステイホームがはじまり、容易に人とは会えなくなってしまったことの影響を、今になって噛み締めている。

別れは急にやってきて

突然誰かがいなくなるのはショックなことだ。身近な人は当然のこと、知人の場合はあとになって聞かされることも多い。どちらにしたって、別れはいつでも突然やってきて、その一瞬から、心が動かなくなってしまう。

健康だとばかり思っていた。仕事熱心で、人望や環境にも恵まれていて、はたから見ても充実した人生。あるいは一緒にプロジェクトをした人もいた。熱く夢を語り、まわりのために身を粉にして動いていた様を思い出す。

その人らしさの輪郭は、濃淡はあっても、ずっと消えてなくならないものだ。目の前で、同じ空間で過ごしたときの印象が特に想起される。情報量が違うんだろう。

そんなはずじゃなかったというのは、結果論でしかない。「なぜ」と口にしたくはなるけれど、あまり意味はない。行き場のない声が漏れるだけ。不安や悲しみが募ってどうしようもないから、これを書いている。

僕らは縁を更新している

喪失に対する耐性がまったくない。恥ずかしながら、自分が衝撃を受けるような、取り返しのつかない経験って今までほとんどなかったんじゃないか。どこからか、磁場が狂ったとしか言いようのない変化が身のまわりで起こりつつある。後悔先に立たず、を身に沁みて実感するようになるのが、年齢を重ねるということなのか。

この非常事態が日常になって久しい。「控える」ことが前提となった暮らし。カジュアルに顔を合わせる、ある場所に足を運んでみる。僕らはそうやって、ちょっとずつ見えない縁を紡ぎ、更新してきたのかもしれない。それが当たり前にできた日々の尊さに思いを馳せる。

便りがないことに「安住しない」

いつしか、人は変化を重ねていく。ともすれば自分自身でも気づかぬうちに。だけど新しい生活様式はまだ、僕らがいろんな情報を掴み取るようにはできていない。こぼれ落ちていくものがほとんどだ。

オンラインは、どちらかというとワンイシュー向き。ひとつのテーマを力強く推進してくれる。だから、どうしても進行中のプロジェクトがメインとなり、関係性も偏りがちになる。

パンデミック以前はもっと偶発的な機会に満ちていたと思う。親しさや目的の有無に関係なく、偶然お見かけするとか、軽い近況の交換をするとか、そこから時計が動き出す、あの感じ。会話だけでなく表情や仕草など非言語的な要素からもいろんな情報を「察して」、世界や未来を広げていたはずだ。

そう、「察する」機会や体験の乏しさこそが、このパンデミックにおいて感じるもっとも大きな変化の1つであり、心細さの遠因なのかもしれない。

便りがないのはよい便り、と思っていた。どこかで元気で、幸せでやっていたらいいなと。ありがたいことに熱中できるプロジェクトが目の前にたくさんあって、つい身をやつしてしまう。でもそれだけでは、いろんな不義理を働いて、いつかまた後悔を募らせてしまいそうだ。

ともすれば、さよならさえも言えないままに。

経験をもたらしてくれたのは誰?

僕の仕事はいろんな人たちと出会うことからはじまる。

企業にせよ地域活性にせよ、メインとなるのは新規事業の開発支援だ。でも特定の顧客ばかりと向き合うのではない。詳しくは別の機会に書くけれど、事業の持続可能性や社会的インパクトを高めるためにも、その周囲に存在するさまざまなステークホルダーの視点を重視している。生活者やさまざまな事業者が主体者となって活躍するプロジェクトへと発展する場合も多い。

いろんな人との縁に恵まれ、関係性を築くことができた。周囲がもたらしてくれた経験の延長線上に、今の自分は生かされている。そのことに、もっと自覚的であらねばと思う。

だから、今できることは、自分から便りを綴っていくことだ。ふだんの仕事や近況を綴り、そこから見える景色や考えを綴り、僕自身が元気でやっていることを、折につけ伝えていけたらと思う。

「あなたはどうしてる?」

──そこからまた邂逅を得て、一回性ではない縁を磨いていきたい。

先行してこの春からは、僕が愛してやまないチームの"トラブルメイカー"たちとともに、IDLマガジン『IDx』も立ち上げた。編集長を仰せつかっているけれど、ここでみんなのことを知れるのは刺激や支えになっているし、実は僕自身がいちばん楽しんでいる。個性豊かなメンバーのユニークネスを、どうぞこれからも温かい目で「察して」いただけるとうれしいです。

おもしろがっていただけたなら、ぜひ一度、直接お話しでもしましょう。

夜が明けたら

今年、次第に脳裏をよぎるようになったのは、ある種の諦観だった。

永遠なんてないのを知りながら、僕らは日々老いていく。時の流れを知りながら、その実、昨日の延長線上にある毎日を繰り返してしまう。

だからこそ。

こんなに先の見通しづらい毎日でも、また会えるなら、それだけでいくらかの希望が湧いてくる。またいつかお互いにとっての豊かな時間を手繰り寄せられるように、2021年はみなさんにお便りをしたためていきたい。

そして、なんの気なしに、また元気な顔を合わせられますように。

そんな年がやってくるといいな。

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