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2022年1月28日

今日は自分にとってとても大切な日だ。
理由は誰にも言わない。
理由を知っていた人も、もう忘れているかもしれないけれど。

ただこの日は、3年前にバーボンを飲む日と決まった。
本当はワイルドターキーのマスターズキープが良かったのだけれど、行きつけのbarには置いていなかったので8年。
少し焦げたキャラメルのような、濃厚な甘い香り。
それでいて、どっしりとして荒々しい。
美味しい。
小さなグラスの黄金色こがねいろが減っていく。
喜びと悲しみが共存する。
「どうして形あるものは無くなってしまうんでしょうね」
普段なら絶対に言わない、ポエムみたいな言葉が呼吸と共に吐き出された。

ああ、最後の一滴が。

「マスター、この世で1番の幸福をお願いします」

シェイカーがリズミカルな音を奏でると、乳白色のとろりとした液体がカクテルグラスに注がれた。
口を付けると、林檎の甘酸っぱい味。
そして、薬草のような、香辛料のような、不思議な風味が鼻を抜ける。
(甘いも苦いも共に幸福ってこと?)

「マスター、このカクテルの名前は?」
「ハネムーンてございます」

記憶が頭の中を駆け巡り、胸がぎゅっと締め付けられる。

年に1度ずつしか会っていないなんて、まるで織姫と彦星みたいだなんて、ちょっと笑う。
でも、何だかんだそんな状況を楽しんでいる。
顔が火照ったのは、お酒のせいだけではない。
また、いつか、一緒に。

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