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「格助詞止め」を制する者はコピーライティングを制す

先日、会社の新人コピーライターから「広告コピーってどう書くんですか?」と執拗に質問された際に私がしたアドバイスがこれでした。

「格助詞で文末を締めなさい。さすれば広告コピーっぽくなるのです」

分かりやすく解説すると、日本語には「〜を」「〜に」「〜へ」といった格助詞で文を終える表現があり、これを知っておくと広告コピーをつくる上で非常に有用ですよ、というアドバイスでした。文を「格助詞止め」で締め、続く言葉を意図的に「削る」ことで、広告コピーは短さを確保しながら強さを増すことができるのです。


例をいくつかあげてみましょう。


子どもたちに誇れるしごとを。 (清水建設)

「を」の続きに本来「しよう」という言葉が入るところを、あえて「格助詞止め」とすることでコトバの強さを増しています。さらに「しごと」を平仮名表記とし、社会的に責任のある「親目線」に立ったメッセージであることを強調しています。


うねりを、チャンスに。 (商船三井)

格助詞「に」は着点を表すと言われており、格助詞止めで逆境をチャンスに変えていくという意思をより強めています。ちなみにこちらは修辞技法(レトリック)のひとつである「対義結合」も活用しており、「うねり」と「チャンス」という2つの矛盾する言葉をかけ合わせることで、より興味をひく表現となっています。


おいしい、の その先へ。 (日清食品)

格助詞「へ」は方向を表すと言われており、日清食品が企業をあげてこちらの方向に向かっているというメッセージを強めています。ちなみに格助詞「に」と「へ」は言語学の研究でも置き換えが可能とされているのですが、コピーライターは伝えたいニュアンスをより正確に表現するために格助詞止めの「に」と「へ」を意図的に使い分けています。


私も含めコピーライターたちは古くからこの「格助詞止め」を効果的に活用して、強く短い広告コピーを生み出しています。広告に限らず新聞や雑誌の見出しなど、スペースが限られたところで大活躍してきた格助詞止め。世の中にたくさんあふれていますので、意識的に見てみると面白いですよ。

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