【小説】ストローは行方不明です。

ピピッ、ガコンッ

突然の落下する感覚から、着地の衝撃を全身に受けて目覚める。
長い眠りについていたようだ。
僕の身体は冷え切っている。

落下の衝撃で、僕の背中についていた四角い物体が剥がれた。というか、僕がその本体から引き剥がされた。

僕も、本体の箱状の物体も、横たわっている。
薄暗く細長い空間。
斜め上を見上げれば、横長の天窓がある。眩しい。

その透明な大きな窓が開いて、大きな黒い影がぬるりと入り込んできた。
僕の元"背中に付いていた箱状の本体"が黒い影に襲われる。
本体は、声を上げることもなく、連れ攫われた。
なんて恐ろしい光景だ。

眠りから覚めた途端、体への負担と拉致。
何なんだ此処は。
それに、なんだか暑い。
さっきまで僕が眠っていた部屋とは大違いだ。
一体どこに連れてこられたというのか。

周りを見渡す。誰もいない。
暗闇だけど、目を凝らしてみても、誰もいない。
孤独だ。

僕は身動きもできず、そのまま横たわっている。
正直、混乱している。
何か情報を得たくて、視界を動かす。

僕の身体は薄いフィルムで覆われているようだ。
シールドみたいだ。何から守られているんだろう?
分からないけれど、何も無いよりかはマシなのかも知れない。

またあの黒い影が入ってきた。
今度は僕めがけて伸びてくる。
僕は、叫び声を上げる事も出来なくて、目を瞑った。

「あったあった、ストロー!
紙パック買ったのに、ストローが無くて、すぐ飲めなくてテンション下がるわ〜。接着剤弱すぎっ!」

何やら音声情報の激しい生物が僕を連れ去る。
僕の身体を唯一守っていた薄いフィルムシールドも簡単に破られる。

僕の身体が引っ張られる。頭の方と足の方をもたれて…その拍子に、僕の体が細長く伸びてしまった…。

その状態で足を箱状の本体に突き立てられる。
ごめん、本体君、君を傷モノにしてしまった。でも僕は抗えないんだ。

そして、謎の生物に僕の頭は食われた。

僕の身体の中を、冷たい液体が足から頭へと這い上がっていく。
変な感覚だ…ああぁ

ズ、ズズッ……

変な感覚が終わる。

箱状の本体から僕の身体は引き抜かれ、今度は力づくで縮められた。

音声生物は、律儀にも、僕の身体を破れたフィルムシールドに戻す。
一方、箱状の本体の方は、もはや真っ平らに畳まれていた。酷い。

やがて、元箱状の本体と僕は別々の箱に放り投げ込まれた。

いろんな匂いが混ざっていて気持ち悪い場所だ。

僕はこれからどうなるんだろう…?

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