と、大きく出てみたが、風雲急を告げるウクライナ情勢の話ではない。 それは、娘の一言から始まった。 「ね、ママ。プーチンさんって幾つなの?」 私は、テレビ画面の池上彰の顔を眺めた。久しぶりに見た彼は、一生懸命世界情勢の話をしていた。そう言えば、知らない。 「幾つなんだろうね」 私は、娘にそう答えた。 「調べてみるよ」 私は、ダイニングテーブルの向かいに座った娘にそう言うと、手元のスマホに『プーチン』と入力した。 検索候補に、私は目を疑った。 『プーチンカレンダー』『
女は恐ろしい。 ご存知だろうか、人気漫画、ゴールデンカムイに出てくる、二瓶鉄造の台詞である。このゴールデンカムイがめっちゃ面白いんですよ!魅力は……と、言うのは話の本題から逸れるので割愛する。 で、女は恐ろしいという話である。 土曜日の夕方、家人と詰まらない事で口喧嘩をした。原因は、本当に詰まらない事なので伏せておく。 結果、家人は自分の部屋に引きこもり、出で来やしないので、私は娘と軽く夕飯を食べ、(昼を食べ過ぎたので、夜はそんなに要らなかった)たわいもない話をして
生きているのが嫌になった。 と、大上段に構えてみたが、何の事は無い、Twitterでフォロワー様からブロックされたのだ。 な~んだ、と言わないように。これが結構ショックなのだ。まるで、二十代前半、結婚も考えていた年上彼氏に振られた時のようなショックなのだ。 私には、Twitterで、友人だと思っていた人物が居た。知的で、小説に対する真摯な姿勢や、何気ない生活の一コマの文章が卓越した人であった。『そう言えば、最近あの人のツイート見ないな、忙しいのかな』などと呑気に
老人は、そのそば畑を愛していた。 若い頃苦労して開いた畑であった。花の頃は山の畑が一面、雪のように白くなる。その光景は、何度見ても美しい。 秋、仲買人がやって来る。 「今年の出来も格別だな爺さん。江戸ではあんたのそばが評判だぜ」 老人は土に汚れた指を弄って呟く。「江戸の奴らが何知って」 仲の良さそうな母子とすれ違う。「それでね、ママ」繋いだ手。おしゃまな口調。女の子のポニーテールが揺れる。私は思い出す。育てられず養子に出した私の娘もあの位の年だ。元気だろうか。 あたしは振り
【序文】 生きているのが嫌になった。 私には、Twitterで、友人だと思っていた人物が居た。知的で、小説に対する真摯な姿勢や、何気ない生活の一コマの文章が卓越した人であった。『そう言えば、最近あの人のツイート見ないな、忙しいのかな』などと呑気に考えていたら、ふとした拍子に自分が彼女にブロックされているのに気付いてしまった。 SNSの辛いところは、理由が分からない所である。彼女の地雷を踏んだのか、私が掛けてしまった言葉が彼女の何かを刺激したのか、謝る術も確認する術も、
桜の花が散っている。 前を歩く、ランドセルの背中に。 お父さんと、お母さんと、間に挟まれた男の子。大きすぎるランドセルを、誇らしげに背負っている。 ちら、とこちらを振り向いた母親は、私と同じくらいの年だった。 あの時、彼の裏切りを許していたら。 私は、古傷を思い出す。 結婚が決まっていた。休日の度に、式場を巡りをしていた。私は、幸せの絶頂だった。でも、彼は私を裏切っていた。 「彼女とは別れる!遊びだったんだ!」 彼はそう言って土下座した。そんな彼を、私は、冷め
【まずは表面をカリっと】 ハンニバル=レクターが好きだ。 彼を知ったのは、羊たちの沈黙を家族で観た時だった。私は13歳だった。彼の圧倒的な知性と教養、貴族的な立ち居振る舞い、それでいて相反する残虐さは、私の心をがっちり掴んで離さなかった。それ以来、彼は輝けるダークヒーローとして、私の中に存在している。……とは言え、もし彼が現実に存在していたとして、彼がどんなに魅力的で、彼の作る料理がどんなに美味であっても、決してお近づきになりたくないし、一緒にディナーを囲もうとは思わな
唇に色を載せなくなって、一年が経った。 マスクに隠れるし、マスクに色がついてしまうので、口紅どころか、チークも塗らない生活である。と言うか、冬の間は、マスクに隠れるからと、顔の下半分にファンデーションすら塗っていなかった。 と、ヘアカットの際、美容師さんに話したところ、 「マスクでは紫外線を通すから、ちゃんと日焼け止め塗らないとダメですよ~」 と言われ、慌てて塗り始めたのが結構最近である。 当方、アラフォーである。それなりの年齢を重ねた顔には、人生の勲章たるしわやシミ
2021年3月21日。東京は春の嵐が吹き荒れる中、映画AGANAIを見に行ってきました。非常に衝撃を受けたので、感想などを書いてみたいと思います。 本作は、地下鉄サリン事件の被害者である監督・さかはらと、アレフ(オウム真理教)の広報である荒木氏が、荒木氏の生い立ちから入信までの地を辿り、入信に至る経緯や現在の心境へと切り込んでいく、ロードムービースタイルのドキュメンタリー映画である。 これは、覚悟の物語であると感じた。 さかはら監督は、作中で、一瞬であるがハッキリと
オリジナル小説になります。ホラーというか、ファンタジーと言うか、どちらともとれる小説だと思います。簡単なあらすじは、下記の通りです。あらすじを読んで興味を持たれましたら、是非一読してください。 少しでも楽しんで頂ければこれ以上の喜びはありません! 【あらすじ】 羽田蜜は、脚本担当として演劇部に在籍する高校生。文化祭の今年のお題は「怪」。全くオカルトに興味がない蜜は、脚本が書けない。ネタを求め、神社で怪異が起きるというまじないをする。出てきたのは猫又・寝古子。猫又に連れて