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映画『レオン』

■はじめに

麻薬取締局に家族を殺された12歳の少女が、NY随一の腕を持つイタリア系中年男性の殺し屋とともに繰り広げる復讐劇。

*製作などの補足情報(個人調べ)
・1994年、フランス・アメリカ製作
・リュック・ベッソン監督のハリウッドデビュー作。

■感想

①映画史に残る伝説の少女「マチルダ」

正直、ナタリー・ポートマンさん目当てで見ました。
結果、「12歳、鮮烈なデビュー」と言われる所以は
これでもかってほど沁みました。。

あの堂々とした演技力、放たれる存在感は逸材すぎる。
それでいて役どころも、大人よりも覚悟があり成熟した考えを持つ、自立しすぎた一匹狼のような少女。
普通の12歳の役者では、役についていくことだけで精一杯になるだろう。

マチルダ
(ナタリー・ポートマン)
名言は「もう大人よ。あとは年を取るだけ」

(変な誤解のないように言いたいのだが)
こんな子に誘惑されたらおじさんだろうが誰でも好きになってまうって…
これが感想より何よりまず言いたかったこと。笑

(そして今の自分の髪型はマチルダボブを意識していたりする…)

②表現の自由と倫理観

本作は、物語としては言うまでもなく高い完成度で
見る者を飽きさせないストーリー展開と
スリリングなサスペンス要素で満ちている。

「面白いよ」と言って誰にでも進めたいところだが、
以下ポイントにより倫理観における物議を醸しているそう。

12歳の少女の
 ・飲酒、喫煙(ここでまず映倫PG12指定)
 ・彼女に殺しを教える
 ・さらに中年のおじさんに恋をして、初体験を迫る
などなど…教育観点では完全にアウトな描写ばかり。

ナタリーも昨年受けたインタビューで、
「アカデミー賞を受賞した『ブラックスワン』や『スター・ウォーズ』よりも皆『レオン』の感想を話すわ。(中略)
みんな今でもあの作品に感動しているし、作品を大切にしている。だから個人的にはポジティブな気持ちしか持っていないし、誇りに思っている。それはわかっているのだけれど、自分の子どもにはどう見せたらいいのかわからない」
と語っている。
※引用:ELLEgirl掲載記事「「今見ると不適切」ナタリー・ポートマン、代表作の映画『レオン』について語る」

こういったシーンのいくつかが映画公開当時はカットされており、
のちにパッケージ発売の際に、文字通り「完全版」として復活する。
ベッソン監督にとっては、これが表現したかった内容の全てだった。
(※一点だけ、幼い弟の射殺シーンだけはカットされた)

この倫理観に関する個人的な見解は控えるのだが
気になったことは、1994年の公開当時と比較して
現代はモラルへの意識が一般レベルで向上し、
それ故に表現の自由があった時代で
「これくらいなら」と黙認されていたラインに対して、
今では冷やっとしてしまい、それが批判に転じてしまうことだ。
(最近でいう志村けんさんのバカ殿様はセクハラだったのでは問題に通ずる)

もちろんモラルの低い人間や表現自体を許容する意図ではない。
ただ、当時の人間が「ああ、これは素晴らしい芸術だ」
「これが愛情というものか」と感じられた感性が
同じ人間の中でも忘れ去られ、
この先共有されなくなってしまうのか?
と思うと、少し寂しくなった。

本作も「(ベッソン監督が)個人的なロリコン感情をぶつけただけの映画で不快だ」
といった評価があるようで、
たとえそうだとしても、そう思った時点で思考は止まるし、
このように受け手側が一線を引いた瞬間に彼の全てのメッセージの発信が遮断されることは非常に残念だ。
(本ケースでいうと、レオンとマチルダにおける年齢差を越えた愛情など)
こうならないように、なるべくマスに受ける形で表現することが
ハリウッドでも正とされるのだとも思うが、
大衆の受け手を意識して表現した完成品なんて、きっと似たり寄ったりだ。
面白いものが現れる気がしない。
映画は個性やエキセントリックさが受理される、
自由とイマジネーションの世界だと思っているので
どうかその世界だけは守られたらなと思った。

もちろん限度もあるし、不快に思う人がいることも事実で
それならば、どの程度の規模でどういった人に見てもらうか
という制限の仕方もあるかもしれない
(映倫の年齢制限なんかはまさかにそのための規制かと)
(個人的にはこの作品は完全に限度の範囲内)

当時の人が「いいね」と思ったものを
なるべく同じ気持ちで「いいね」と思えたら。声を大にして。
本当に良質な作品は、時代を越えても錆びれないことを前提にして。
(「レオン」も、ちゃんと「不朽の名作」と表現する人たちが現代にもまだいる)
極度にモラルに対して敏感になりすぎて、
自分の心も捉われないことを願う。

===
■最後の独り言
ゲイリー・オールドマンさんが好きです。
(きっかけは『バットマン・ビギンズ』)
カメレオン俳優、と評される通り
演技の幅が広い上に、徹底して役に染まっているからです。

本作では約25年前の若きイケメン・ゲイリーさんを拝むことができます。
麻薬取締局に務めながら完全にヤクに頭を支配された
ぶっ飛んだ怪演にぜひご注目くださいませ。

ノーマン・スタンスフィールド刑事
(ゲイリー・オールドマン)

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