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なぜ俳優になりたかったのか

なぜおれは俳優になりたかったのか。
その理由を語ろうと思う。

俳優になりたかった理由は3つある。

1.純粋な憧れ

子供の頃から映画が好きだった。自分を違う世界へ何度も連れて行ってもらった。そこに登場する人間たちは本当にかっこよく魅力的で、たくさんの影響を受けた。
ミッションインポッシブルのイーサンハントやパイレーツオブカリビアン、ジャッキーチェン、スパイダーマンなどなど。
例をあげればきりがない。

幼い頃はこれが作り物であることなんて忘れて没頭して
見ていたが、ある程度歳を重ねると、この映画の世界は
作り物であり、俳優たちの演技によって成立しているのだと意識するようになった。

見ている人を作品の中に引きずりこむキャラクターと
その演技は、俳優の技術と生き様によって生み出されていることに気づき、それがまた本当にかっこよく思えて、
ますます魅力を感じた。


また作品を離れた俳優のかっこよさにも憧れた。
作品の中ではとてもシリアスだったのに、実際の俳優は
とても明るく元気いっぱいだったり、ひょうきんで馬鹿な役を演じていた俳優は、ものすごく頭が切れて渋くてかっこ良かったり。作品と実際の俳優のギャップがまたとてもかっこよくて、こんな人間になりたいと心から思った。


2.人に思いを伝えたかった

幼い頃から戦争と平和について興味があったおれは、大学は
国際政治を学べる学科に進んだ。

韓国に行って、従軍慰安婦の方達がいる施設を訪れたり、
沖縄の辺野古移設のデモを見学し、元沖縄県知事と話したり、台湾に行って日本の占領下時代の名残を歩いたりした。

多くの人の痛みや苦しみに向き合って見て思ったことは

「どうやったらこの人々の思いを伝えることができるのだろう」

だった。

マスメディアに就職しようか、ジャーナリストになろうかいろんなことを考えた。(本当は俳優になりたかったが、そんな不安定な夢よりも、ちゃんと就職して家族や友人から批判されない生き方をしないといけないと自分を押さえつけていた)

そんな時に見た2つの映画に心を打たれ、俳優になると決心がついた。

それは「独裁者」と「ブラザーフット」だ。

チャップリンが演じた「独裁者」という映画は当時、ユダヤ人を虐殺し、ドイツを戦争に向かわせたヒトラーを批判した作品だった。

チャップリン演じるヒトラーは、ずっとおちゃらけ、さすが
コメディといった感じでユーモアを持ってヒトラーを馬鹿にし、批判していた。

しかし、最後の演説シーン。
役を離れ、チャップリンとしての魂の演説が始まる。
理由はわからないが涙が出た。
彼のセリフには魂がこもっていた。
チャップリンという偉大な俳優の表現に、
しかもそれは50年以上も昔の作品であるにもかかわらず、
半世紀の時を超えて、彼の思いを込めたセリフと表現が、
21世紀に生きる僕の心が大きく動かした。

「あぁー。こんな表現ができたら。こんな作品が作れたら。50年後に残るものを作りたい。自分の孫の世代の心を動かしたい。」

強く思った瞬間だった。


もう一つ、「ブラザーフット」は韓国の戦争映画だ。
主演はチャンドンゴンと、ウォンビン。

当時大学生だったおれは、韓国が嫌いで嫌いで仕方がなかった。ネトウヨだったのだ。
ただ当時の日本の社会情勢として、嫌韓ブーム真っ只中であり、書店には嫌韓の本がずらりと並んでいた。

ネットや書籍の影響もあってか、恥ずかしながら韓国が大嫌いで仕方がなかった。

そんな中見た「ブラザーフット」という映画。

韓国の悲惨な朝鮮戦争を描いたもので、当時大嫌いだった
韓国には、同じ民族でありながら殺し合うという悲しい過去があることを知った。そして家族を思う気持ちや兄弟への愛は日本だろうが韓国だろうが同じ人間としてみんなあるのだと、当たり前のことを気づかされた。

「朝鮮戦争」といったら敗戦後の日本に特需景気をもたらしたものですー。と社会の授業で習うくらいだ。

学校で学ぶのはせいぜいその程度。
しかしそこにはたくさんの人の痛みや悲しみが詰まっているのだ。

「ブラザーフット」は純粋に素晴らしい映画であるが、
韓国の痛みを知る上でもとても重要な作品であると思う。

当時の僕が頭を打たれるような衝撃をこの作品から受けて、
「人の痛みや苦しみを伝えるのはやっぱり映画しかない!
俳優になろう!」と決めた。

ちなみにこの作品のウォンビンを見てから彼の大ファンである。


3.人間について考えるのが好きだった

昔から「人間とは何か?」と考えることが好きだった。
人間の持つ優しさ、愛、恐怖、恐れなどなど、
人間の行動や人間の持つ力をいつも考えていた。
心理学も好きで多くの本を読んできたし、どう生きるべきか?とか哲学も大好きだった。

戦争の歴史が好きだったのも、実はなぜ人は争うのか?
という人間について考えることが好きだったからであることに後から気づいた。

俳優は、台本からその人間について深く読み取る。
そのキャラクターは何を求め、何を恐れているのか。
どんな生き方をして何が幸せで何をトラウマに思っているか。

人について考えることがとても好きなのである。

一人の人間としてキャラクターに向き合い、
自分の肉体と魂を通して他の誰かを魅力的に表現できたら
とても幸せである。

俳優は心理学者や行動経済学者以上に人間の研究家でなければならないと思う。

俳優の仕事を通して、自分の大好きな人間や哲学について考えることができるのはすごく嬉しいことだなと思った。

書きながら初心を思い出した。
1年も過ぎたあたりから、売れたいとか、あいつは演技が下手だとか余計なことばかり考えるようになった。

なぜ俳優になりたいのか??

毎日意識して生活すればきっと行動も結果も変わってくるだろう。みんな初心を忘れてしまう。


いっちょまえのこと思ってはいたが、実際の現実を見ると
そんなことどうでもよくなるほど打ちのめされることもある。(実際今そんな状況www)

まぁでも、きっと大丈夫だから、自分の初心さえ、大切な
「なぜ?」さえわかっていれば。

皆さんも一度立ち止まって
なぜ自分がその夢や目標に向かっているのか思い出して考えてみる時間を持ってみるといいかもしれない。

今のおれをみると4年前の自分が悲しむなー

いい俳優になります


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